広場で1対1のけんかをしたとして、埼玉県警少年課と、大宮署の合同捜査班が、5月26日までに10代の少女2人を逮捕、送検したと埼玉新聞(5月27日)が報じました。
SNSを通じて呼び出して“タイマン”を行ったことが問題となった今回の事件。警察は、背景に非行グループ同士のトラブルがあったとみて調べを進めています。
人を殴れば暴行罪、怪我をさせれば傷害罪に問われる可能性がありますが、今回は「決闘罪」という耳慣れない条文が問題となります。簡単に解説します。
「決闘罪」とは、「決闘罪ニ関スル件(けっとうざいにかんするけん)」という法律に規定された犯罪です。ずいぶん古めかしい法律名ですが、1889年(明治22年)からある法律です。全部で6条しかありません。
1条は決闘を挑んだ場合で、「6カ月以上2年以下の重禁錮(※「重禁錮」は、現在は有期懲役とされています。以下同じ)」「10円以上100円以下の罰金を附加す」と定められています。
2条は決闘を行った場合で、「2年以上5年以下の重禁錮」「20円以上200円以下の罰金を附加す」と定められています。
「10円以上100円以下」「20円以上200円以下」という罰金の額が古さを感じさせます。なお、これらの罰金規定は条文上は一応残っていますが、現在は廃止されています(明治41年制定の刑法施行法により廃止)。
なお、令和7年6月17日施行の新法では、拘禁刑の導入に伴い、「重禁錮」は拘禁刑となり、罰金の部分は条文上も削除されることになっています。
決闘の結果、人が死傷した場合には、刑法によって処断されることになります(同法3条)。両条文の関係には議論がありますが、処断刑としては傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役または50万円以下の罰金)や殺人罪(刑法199条、死刑または無期もしくは5年以上の懲役)となります。
「決闘」と、普通の「けんか」との違いは微妙ですが、判例は「当事者間の合意により相互に身体又は生命を害すべき暴行をもって争闘する行為」としています。
この定義からすると、お互いに殺傷を伴う暴行を行うことを合意したうえで、闘う場合が「決闘」となり、そうでない場合、たとえば一方はイヤイヤけんかに巻き込まれたが、応戦している場合が「けんか」といえます。
事前に日時・場所・条件などの形式面を取り決めたり、「果たし状」や「立会人」などがいなくても決闘と評価されうるのですが、典型的には日時や場所などを事前に約束した上で闘う場合が決闘、と考えて良いでしょう。
本件では、2人の当事者のうち、一方の少女がSNSを通じて他方の少女を呼び出し、そこで「タイマン」をしたと報道されています。
この事情だけでは、必ずしも当事者間に上のような合意があったのかはハッキリしませんが、そういった合意があって「決闘」を行ったと判断された場合、相手を怪我させなくても法2条により2年以上5年以下の懲役(※少年事件なので家裁に送致されますが)となります。これは暴行罪(2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金など)よりもかなり重いです。