コメ農家を営む『侍タイムスリッパー』監督が涙の訴え「使命感が強い人の犠牲的な行為で日本の主食が成り立っている」

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大ヒット映画『侍タイムスリッパ―』の安田淳一監督が、兼業するコメ農家としての苦悩と日本の農業の問題点を語った。
【映像】涙ながらに語る安田監督(実際の映像)
『侍タイムスリッパ―』は、安田監督が2600万円自費を投じて制作。わずか一館の上映から始まったこの映画は興行収入10億円超えと異例の大ヒットとなった。そして日本アカデミー賞では最優秀作品賞を受賞した。
安田監督は実家のコメ農家を継ぎながら、映画製作も続けている。そんな安田監督にコメ問題のリアルを聞いた。
「今のこの局面で大事なことは、組織・団体に忖度をしない判断をすることだと思う」(小泉進次郎農水大臣)
この小泉大臣のコメントについて安田監督は「付け焼き刃じゃないけども、瞬間的にコメを強引なやり方で下げて、国民の支持が集まって、根本的な問題をずっと置き去りにされることが、すごく逆に心配な感じ」と心境を語った。
「お米の買い上げ価格が低すぎて、30キロ作るたびに数100円から1000円近い赤字が出る。僕がいろいろな仕事をやってきたなかで、一番黒字化が難しいのは米作。自分たちがお米を作らなければ誰かが困る。使命感と責任感。異常に使命感が強い人の、犠牲的な行為によって、日本の主食が成り立っていることをまずは知ってほしい。自助努力ではもうどうしようもないのが実感」(安田監督)
安田監督は2年前、コメ農家だった父親が亡くなったことで、京都の実家で農家を継ぐことになった。監督業を続けながら初めて行うコメ作りに悪戦苦闘し、コメ作りのリアルを知った。
「父について稲刈りなど手伝った気にはなっていた。冬の田起こしとか、田んぼの横に生えた草を地道にクワで取るとか、ジャンボタニシと戦ったりとか、草刈りしても、もう無数にやることがある。一見のどかな感じに見える。田植えの農家って季節の風物詩みたいな感じだけど、孤独感というか、一生懸命やるけども、生産的なのに非生産的なことをやっているような気持ちになってしまう。心が折れそうにはなる。
穂が生えた時の喜びとか、サラサラって稲が鳴っている音とか、トラクターで耕うんしている時に水と土が混ざってぐしゃぐしゃしている音、そういう小さな喜びが、新米を食べた時の喜びと同等に救いにはなっている」(安田監督)
実は安田監督が『侍タイムスリッパー』よりも以前に制作した映画『ごはん』(2017年)が脚光を浴び始めている。
米農家の父が突然亡くなったことで、膨大な広さの水田を預かることになったヒロインが後継者不足、そして採算の合わない現実、そんなコメ作りに奮闘する姿をリアルに描いた作品だ。
日本一美しく田んぼを撮りたいという安田監督のこだわりで完成するまで4年の歳月をかけた。この映画を通じて表現したかったこととは何か。
「秋、土用干しと言って、一回1週間ぐらいカラカラにして、田んぼをひび割れるぐらいまで乾かして、一気に水を入れて穂をはらませるみたいな手法がもう何百年も伝わっているとか、コメ作り自体に面白いヒントがいっぱいある。そして、日本映画で一番美しく田んぼ周りを撮りたいし、ご飯が出来上がるまでに農家がどういう手順で、どういう思いで作ってきたのかを分かってほしいなという思いで作った」
しかし、この映画が公開されて8年、コメ農家を取り巻く環境は大きく変わったという。
「現状は描かれた世界よりも、もっと悲惨な感じになっている。映画のなかでは、お父さんが70歳ぐらいで亡くなるが、実父は82歳で亡くなる。馬力のある責任感があって頑張ってやろうとしてる農家が高齢化で亡くなっている。
そもそもできない田をボランティアみたいな感じで引き受けて、返した時にその田んぼが一気に耕作放棄地になってしまって、そういうのが実は直接のコメ不足の原因になっている」
農水省の調査によると、農業従事者で最も多いのは65歳以上で69.6パーセント、兼業農家は77.7パーセントにも達し、別の仕事で農業の赤字を補填しているケースが多いという。
「僕は補助金だとやる気がなくなる。補助金は誇りの問題でもある。基本的には政府の買い上げ価格を経営が成り立つぐらいまで高く上げて、そして頑張っていいものを作ったら、いい値段でたくさん買ってもらえるという、そこの買い上げ価格をまず今の数倍、2倍3倍に上げて、それを消費者に安く卸すという、国策としての主食を守るという意味で、政策転換のなかでやっていかないと難しい。いわゆる経営的な問題を、補助金をもらうから言いなりにならないといけない。経営の自主性を失うというのが怖い」
それでもコメ作りを続ける理由は、亡き父親の姿だった。「親父は赤字と分かっているのに、困っている人たちの田んぼを何十も預かっていて、頑張っていた姿を見ている。僕もその子としては、すぐに自分で諦めるわけにはいかない。日本中でお米を頑張って作っている。僕だけのことを分かって欲しいということではなく、日本中のお米を作っている農家が、どういう気持ちで今取り組んでいるかを分かって欲しい」と涙をこらえながら訴えた。
(『ABEMA的ニュースショー』より)

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