【取材拒否に異議を述べないことを「誓います」】熊本中1自殺問題“不適切指導”教諭がメディアに要請した「誓約書」

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2019年4月に熊本市立中学1年の男子生徒が自殺した問題で、11月22日、熊本市の大西一史市長は不適切な指導が指摘された男性教諭をめぐって「教育現場の対処能力が欠如していると言わざるを得ない」と批判し、対応を陳謝した。市の第三者機関・詳細調査委員会は10月、男性教諭の不適切な指導で生徒が抑うつ状態となった可能性が高く、自殺の一因になったとする報告書を公表した。しかし、その後も男性教諭は教壇に立ち続けており、市教委は11月17日になって「当面の間、教壇に立たせない」措置をとると発表した。こうした対応の不備には全国から批判の声が集まっているが、地元では男性教諭の取材対応でも異例の事態が起きていたという。
【写真】男性教諭が作成したという「誓約書」 男性教諭は小学6年生時の担任教師で、市教委が2020年3月に、2014年度から2018年度に不適切な言動の疑いがあった157件のうち40件を体罰や暴言、不適切な指導があったと認定していた。さらに熊本市体罰等審議会は11月16日の審議会で、新たに2件の不適切指導を認定していた。地元記者が語る。「男性教諭は2018年4月には、自殺した男子生徒の同級生だった男子児童の胸ぐらをつかむなどの暴行をしたとして熊本区検に書類送検され、同年9月に不起訴(起訴猶予)となっていた。自殺した生徒の保護者らは2019年3月、体罰などを繰り返しているとして教諭の処分を求める嘆願書を市教委に提出し、大西市長の後援会にも届けていた。その約1か月後に、男子生徒は亡くなっています。 部活動の指導に熱心で実績もあった教諭については、指導力が優れていると高く評価する保護者や児童がいる一方、不適切な指導による被害を被っている児童や保護者からは暴力的で怖いという印象があり、男子生徒が亡くなる前から児童や保護者、同僚の教職員からも学校の管理職に対して何度も教諭の問題行為についての訴えはありました。しかし、結果的には何も対応がされていなかったのです」 そうして一連の問題が全国的に報じられているなかで、地元メディアを困惑させる事態が起きていた。前出の地元記者がこう明かす。「第三者委員会の報告書が公開されたことを受けて、テレビや新聞など各メディアが当該の男性教諭にも取材を申し込んだのですが、男性教諭は現在の勤務先となっている小学校の校長を通じて、男性教諭が作成したという『取材に関する誓約書』という文書に事前にサインすることを求めたのです。 その内容は社名、所属部署、氏名と捺印欄に、『私は』という文面から始まり、『誤解を生む記事が掲載』されないように『真摯に取材すること』、『取材の目的及び取材内容を書面にて事前に通知し、その目的あるいは取材内容と異なる事項について取材しないこと』『取材を拒否しても何ら異議を述べないこと』などを『誓います』と記載されているのです。 誤った記事を掲載しないように真摯な取材を尽くすのは大前提として、不適切指導が認定され、生徒の自殺の一因になったという疑義がある取材対象に対して、事前通知したこと以外は取材をしないことや、取材対象自身が『誤解を生む』と指摘する記事を掲載しないなど、取材を狭めるようなことを『誓います』とする文書を事前に出すのは明らかに取材行為から逸脱しています。うちも会社と相談して、誓約書には応じられないとしましたが、他社もほとんどが応じなかったようです」 男性教諭の取材対応の窓口となっている現在の勤務先の小学校の校長は、本誌・週刊ポストの取材に「『誓約書』と取材内容の通知に関しては、各社にお渡ししたのは事実です」と認めて、こう答えた。「男性教諭本人が、『取材の際にはマスコミ各社に渡してほしい』ということで作成したものを、私が窓口でしたのでマスコミの方たちにお渡ししました。本人は取材の目的、内容をはじめ、発言の一部が切り取られることを危惧していたので誓約書を通して取材をお受けしたいということでした。誓約書は本人が持ってきたもので、私が添削するということはありませんでした。 男性教諭が以前、報道機関からの取材を受けた際に、当初の取材の目的とは全く違う質問を受けた経験があったので、その報道の影響を受け止めた中で、誓約書を作成したということです。『こういう内容では(サインするのは)難しい』とか各社の対応はそれぞれでした。(現在は)本人が学校現場を離れていますし、私自身が取材に対応していた時とは状況も変わってしまっているので、窓口についても教育委員会の内部で協議してもらっています。仮に取材申請があっても、私が本人に直接伝えていいのかわからないという状況です」 市教委では、亡くなった男子生徒が通っていた小学校と中学校の保護者に対して、男性教諭の体罰、暴言等の不適切な行為について情報があれば11月末日までに相談窓口に連絡するよう呼びかけている。必要な調査をした上で、12月開催の体罰等審議会で審議、男性教諭については年内に処分が決定するという。
男性教諭は小学6年生時の担任教師で、市教委が2020年3月に、2014年度から2018年度に不適切な言動の疑いがあった157件のうち40件を体罰や暴言、不適切な指導があったと認定していた。さらに熊本市体罰等審議会は11月16日の審議会で、新たに2件の不適切指導を認定していた。地元記者が語る。
「男性教諭は2018年4月には、自殺した男子生徒の同級生だった男子児童の胸ぐらをつかむなどの暴行をしたとして熊本区検に書類送検され、同年9月に不起訴(起訴猶予)となっていた。自殺した生徒の保護者らは2019年3月、体罰などを繰り返しているとして教諭の処分を求める嘆願書を市教委に提出し、大西市長の後援会にも届けていた。その約1か月後に、男子生徒は亡くなっています。
部活動の指導に熱心で実績もあった教諭については、指導力が優れていると高く評価する保護者や児童がいる一方、不適切な指導による被害を被っている児童や保護者からは暴力的で怖いという印象があり、男子生徒が亡くなる前から児童や保護者、同僚の教職員からも学校の管理職に対して何度も教諭の問題行為についての訴えはありました。しかし、結果的には何も対応がされていなかったのです」
そうして一連の問題が全国的に報じられているなかで、地元メディアを困惑させる事態が起きていた。前出の地元記者がこう明かす。

「第三者委員会の報告書が公開されたことを受けて、テレビや新聞など各メディアが当該の男性教諭にも取材を申し込んだのですが、男性教諭は現在の勤務先となっている小学校の校長を通じて、男性教諭が作成したという『取材に関する誓約書』という文書に事前にサインすることを求めたのです。
その内容は社名、所属部署、氏名と捺印欄に、『私は』という文面から始まり、『誤解を生む記事が掲載』されないように『真摯に取材すること』、『取材の目的及び取材内容を書面にて事前に通知し、その目的あるいは取材内容と異なる事項について取材しないこと』『取材を拒否しても何ら異議を述べないこと』などを『誓います』と記載されているのです。
誤った記事を掲載しないように真摯な取材を尽くすのは大前提として、不適切指導が認定され、生徒の自殺の一因になったという疑義がある取材対象に対して、事前通知したこと以外は取材をしないことや、取材対象自身が『誤解を生む』と指摘する記事を掲載しないなど、取材を狭めるようなことを『誓います』とする文書を事前に出すのは明らかに取材行為から逸脱しています。うちも会社と相談して、誓約書には応じられないとしましたが、他社もほとんどが応じなかったようです」
男性教諭の取材対応の窓口となっている現在の勤務先の小学校の校長は、本誌・週刊ポストの取材に「『誓約書』と取材内容の通知に関しては、各社にお渡ししたのは事実です」と認めて、こう答えた。
「男性教諭本人が、『取材の際にはマスコミ各社に渡してほしい』ということで作成したものを、私が窓口でしたのでマスコミの方たちにお渡ししました。本人は取材の目的、内容をはじめ、発言の一部が切り取られることを危惧していたので誓約書を通して取材をお受けしたいということでした。誓約書は本人が持ってきたもので、私が添削するということはありませんでした。
男性教諭が以前、報道機関からの取材を受けた際に、当初の取材の目的とは全く違う質問を受けた経験があったので、その報道の影響を受け止めた中で、誓約書を作成したということです。
『こういう内容では(サインするのは)難しい』とか各社の対応はそれぞれでした。(現在は)本人が学校現場を離れていますし、私自身が取材に対応していた時とは状況も変わってしまっているので、窓口についても教育委員会の内部で協議してもらっています。仮に取材申請があっても、私が本人に直接伝えていいのかわからないという状況です」
市教委では、亡くなった男子生徒が通っていた小学校と中学校の保護者に対して、男性教諭の体罰、暴言等の不適切な行為について情報があれば11月末日までに相談窓口に連絡するよう呼びかけている。必要な調査をした上で、12月開催の体罰等審議会で審議、男性教諭については年内に処分が決定するという。

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