「態度が気に入らない。俺、こういうのイライラすんだよ」栃木県の中学3年男子を自殺未遂に追い込んだ、体育教師の“あまりにも威圧的な罵声”

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2020年代に、栃木県壬生町の中学3年生だったイズミくん(仮名、当時14歳)は体育の授業中に教師から「お前の態度が気に入らない」「俺、こういうのイライラすんだよ」などの威圧的な指導を受け、その日の夜、橋の上から飛び降り自殺を図った。
【写真】「言い訳すんじゃねえよ」「俺、こういうのイライラすんだよ」と体育教師からイズミくんが怒声を浴びせられた中学校の現場
一命は取り留めたものの左頬や足首、背骨を骨折し、今も後遺障害に苦しんでいる。一体何が起きたのか、イズミくんと母親に話を聞いた。
体育教師の威圧的な指導が原因で自殺未遂に追い込まれたが一命をとりとめたイズミくん
トラブルが起きたのは、自殺を図った日の2時間目にあった体育の授業中だった。3クラス合同の、種目を選べる体育の授業で、イズミくんはソフトボールを選択した。
50人の生徒たちが2人1組のペアになり、バックホームでボールを投げる練習をすることになった。
A教諭の指示は生徒たちが複数の列に並んだ状態でボールを投げるというものだったが、投球がそれてキャッチできなかった場合に後ろの生徒にぶつかることを心配したイズミくんは、周囲の友人と話し合って別の角度で投げる練習を開始した。
「僕は野球部だったので、先生に指示された角度だと危ないからこっちの方がいいんじゃないかと思い、周囲の人たちに提案したんです。そうしたら残りの3人も一緒に合わせてくれました」
しかしその光景を見たA教諭は「(球を投げる)向きが違うじゃねえかよ」「屁理屈なんかいらないんだよ」と怒鳴りながらイズミくんたちに近づいてきた。イズミくんは「違うんです……」と理由を説明しようとしたが、A教諭は「言い訳すんじゃねえよ」と、イズミくんの言い分を聞く素振りを見せなかった。その後、イズミくんたちはA教諭の指示通りに投げる練習をした。そして授業が終わった。

「同じ方向に投げると危ないと思ってやったのに、説明しようとしても聞いてもらえず、問答無用で怒鳴られました。僕らが指示通りにしなかったことが火をつけたんだと思います」(イズミくん)
また、イズミくんの通っていた学校では、体育の授業の終わりには振り返りのための「ワークシート」に感想を書くことになっている。そのタイミングで、A教諭は他の生徒の前でイズミくんを「おい。お前、ちょっと来い」と言って呼び出した。
A教諭はバットを片手に持ち、地面に叩きつけるようにしながら、A教諭自身の指示が間違っていなかったと改めて主張した。そして、「ふざけてんのか。お前の態度が気に入らない。俺、こういうのイライラすんだよ」などと感情的に怒鳴り続けた。
その後、授業の振り返りの「ワークシート」に「つまらなかった」と書いてあったことにA教諭が気づき、イズミくんに近づいて、「お前、これ失礼だろ」と、再度、怒鳴り始めた。そして「お前はやりすぎだ。お前ちょっと来い」と怒鳴ると、イズミくんを職員室まで連れて行った。担任のB教諭も呼び出され、A教諭から叱責が続いた。
「イズミがノートに『つまらない』と書いていたのは確かによくないと思うのですが、もともと『ワークシート』は1カ月ごとの提出なんです。そのため、提出する時に整理して書き直そうと思っていたようです。しかも、『つまらない』は、このときの授業について書いたものではないのです。提出前のものについて、言い分を聞かずに怒鳴るのはやりすぎだと感じます」(母)

職員室から解放されたものの、A教諭はイズミくんに「ワークシート」の書き直しを命じた。イズミくんは教室で書き直している時に、涙があふれてきたという。教室には他の生徒もいた。
「A先生に怒られて落ち込み、担任のB先生も呼ばれて、さらに気持ち的に沈みました。教室の中で1人で『ワークシート』を書き直しているうちに、(気分が)どん底になってしまって、『死んでしまいたい』と思ったんです。書いている途中からもう頭の中は死に方を考えるのでいっぱいで、自宅から中学校とは逆方向にある橋のことを思い出していました」(イズミくん)

イズミくんはその日、学校から帰宅して2時間ほどゲームをすると家を出た。
「家を出る前に、ゲームのデータをまるごと友人にLINEで送りました。自分の大好きなゲームだったので、引き継いで欲しかったんです。その時には『死んじゃおう』と思っていて、自分が死ぬことはほぼ確定していました。『死にたい』と思ったのはそれが初めてでしたが、当時の自分にとっては他の選択肢はありませんでした」(イズミくん)
自殺直前は「心理的視野狭窄」つまり、死ぬか生きるかという極端な考えに陥ることが多いと言われており、イズミくんもその状態だったのだろう。そんなイズミくんが向かったのは、自宅から数キロ離れた大きな橋だった。本屋に向かう時などに何度も通ったことがあり、橋は水面から約10mほどの高さにあるのでそこから飛び降りようと思ったという。
その橋へ向かう途中、イズミくんは母親が運転する車とすれ違い、咄嗟に隠れている。そして30分ほどかけて橋まで歩くと、スマートフォンを橋の上に置いた。イズミくんのスマホには家族にGPSで位置情報を知らせるアプリがインストールされていた。
「スマホを置いたのは、(位置情報を共有しているアプリで)見つけて欲しかったからです。僕が行方不明のまま帰ってこなかったりしたら、親が悲しむだろうなと思ったからです。それに、スマホは高価なものなので壊したくない気持ちもありました。橋の上では『車から見られないようにしないと』と5分くらい考えていました。葛藤も少しはあったと思います」(イズミくん)

イズミくんが橋の上に着いたとき、母親は自宅近くのスーパーで買い物をしていた。何気なくイズミくんの位置情報を確認すると、橋の付近を示していたという。
「おかしいとは思ったんですが、塾に行っているはずの時間でしたし、『位置情報がずれているのかな』と思いました。念のためLINEもしたのですが、既読になりませんでした。家に戻っていたイズミの姉も『塾に行ったんじゃない?』と特に気にする素振りはありませんでした。とりあえず塾が終わる19時まで待ったのですが、帰宅するはずの時間になっても帰ってきません。胸騒ぎがして塾まで迎えに行ったらイズミの幼馴染に『きょうは塾に来ていなかった』と言われました。それでGPSが示している橋に行きました」(母)
母親が橋に近づくと、水量が少なくなっていた川の中洲の中央付近にイズミくんが倒れているのが見えた。母親は動揺して泣きながら橋の上から警察に電話をし、救急車も要請した。
「周囲を見渡しても橋の下に降りられそうな場所もなく、パニックになりました。生死がわからないので、とにかくパニックで、『助けて』と叫んでいました」(母)
イズミくんはそのとき、少し意識があったという。
「橋から落ちてしばらくは気絶していたんですが、一度目を覚まして10分ぐらいは意識がありました。生きていることがわかり、あらためて死にたいと思いました。眠れば死ねると思い、また目を瞑って寝ようと思いました。
痛みもあって眠りに落ちずにいたのですが、しばらくすると母が僕の名前を叫んでいるのが聞こえました。その後、どれくらい経ったのかわかりませんが救急車が来たのがわかりましたが、意識がボンヤリしていてあまり覚えていません」(イズミくん)

母親がイズミくんを探すために連絡した知人から父親にも伝わり、父親も職場から現場に駆け付けた。その後、イズミくんは到着した救急車で病院に搬送された。両親は救急車に同乗することが許されず、父親の車で大学病院へ向かった。
「一命は取り留めたものの、病院では『今後、後遺症が出る可能性があり、覚悟してください』と言われました。日付が変わった頃に緊急手術が終わり、わずかな時間でしたが、面会が許されました。
『イズミ!』と呼びかけるとすぐに目を開け、焦点はあっていなかったんですが、すぐに私だとわかって体を寄せようとしてきました。私は泣きながら『生きててよかった。みんな待っている』と声をかけるのが精一杯でした。気持ちの整理ができないままで、泣くことしかできませんでした」(母)
その後、イズミくんは集中治療室に1カ月にわたって入院し、その後はリハビリ病院に転院した。
前日まで元気だったイズミくんが急に自殺未遂を起こしたことにショックを受けた両親は原因の解明に乗り出した。しかし待っていたのは、長い苦難の日々だった。
〈「もう理不尽すぎて…」中3男子を自殺未遂に追い込んだ体育教師の“高圧的指導”が調査で明らかに「屁理屈言うな」「話聞いてんのか」〉へ続く
(渋井 哲也)

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