「手を止めるな、給料泥棒!」50代女性ライターが体験したスキマバイトの現場「監視役の上司が尻に手を押し当ててきて…」「多目的トイレでは外国人カップルが淫行」

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面接なし。履歴書なし。スマホ一つで簡単に始められる「スキマバイト」。その中には、表からは見えない過酷な職場がいくつも潜んでいるのだ。
前編記事『【スキマバイト現場の実態】北関東の工場で50代女性ライターが試してみた「70代男性の絶叫が響きわたる」「主任が商品の下着で興奮しセクハラ行為」』より続く。
さて、3度目のスキマバイトの日。始業前に喫煙所に行くと60代の男性がたばこを吸っていた。
恐らく同じようにスキマバイトを利用して来た人だろうから、軽く挨拶をする。すると、男性は目を合わせないまま、何やらぶつぶつと語り始めた。
「本来、俺はここで働く奴らの上に立つ人間だ。お前らみたいな日雇いでしか働けない底辺とは違う……」
怖くなったので、すぐにたばこの火を消し、集合場所に向かう。職場の社員に彼のことを聞いてみたところ、8年前に地方の銀行をリストラされて以降、ずっと日雇いバイトをしているベテランだという。社員からスキマバイトワーカーのまとめ役として頼りにされ、バイトたちからは「リーダー」と呼ばれていた。妙な自意識の高さに納得がいく。
この工場の作業は、初日のライン現場とほぼ同じ。コンベアから流れてくる文房具を部品ごとに仕分ける作業だ。
退屈で頭がおかしくなりそうだが、常に周りには社員と思われる人たちが見回りをしている。作業が遅いバイトが「手を止めるな、給料泥棒ー」といびられているのを何度か見たことがあるので、休むことはできない。
無心で作業を続けていると、ふと後ろにいる見回りの男がずっと私の後ろに立っていることに気づいた。
横目でその人をそっと見てみると、「つぶやきの元銀行員」ことリーダーその人だ。
「俺は特別だからな~。お前らの監視役なんだよ!」
看守のような歩き方でうろちょろしている。初めは1mくらいあったはずの距離が少しずつ近くなっている。
気持ち悪い。警戒心を高めたが、なんと極限まで近づいたリーダーは、右手の甲を私の尻に押し当ててきたのだ。一瞬何が起きたかわからなかった。私は56歳だゾ。
思わず声を上げそうになったが、次々と流れてくる文房具の部品を前にして、手を止めることはできなかった。いつのまにか私は、近くで叫び声が聞こえようが、セクハラを受けようがトラブルを全部無視して、手を動かす資本主義の奴隷に成り下がっていたのだ。おカネをもらうかわりに心が殺されるスキマバイトは、『あゝ野麦峠』の世界そのものだった。
作業はいたって簡単なのに、スキマバイトは何故か苦労が絶えない。トイレ不足もその一つだ。物流倉庫など、長らく男性中心の職場だった場所だと、女性用トイレが圧倒的に少ない。
春先のこの日も、昼の休憩時には女性用トイレに行列ができていた。社員からは「屋外の多目的トイレは女性が優先的に使える」と言われた。
しかし、多目的トイレも使用中ではないか。しかも全然出てこない。あまりにも長いからノックしてみるが、反応がない。「様子がおかしい」と耳を近づけてみると、中からうめき声とも喘ぎ声とも取れる女性の声がする。
もしや……と思っていたら、数分後、中から外国人の若い男女が出てきたのだ。男のほうが扉の前に立っていた私にガンを飛ばし、流ちょうな日本語で「ジロジロ見てるんじゃないよ!」と言い放つ。服を見れば彼らも同じスキマバイト仲間とわかる。休憩中にナニをやっていたのか。
退屈な仕事で体力を持て余してしまうのはわかるが、スキマの時間でやることではなかろう……。
もう慣れっこにはなったが、スキマバイトで起きた珍事件は枚挙にいとまがない。
限界シニアの掃きだめ―申し訳ないが、これが私のスキマバイトに対する偽らざる本音だ。私が年老いており、選べる職場が少ないことも「限界職場」に当たってしまう要因なのだろう。
しかし最近では、スキマバイトアプリが若者を犯罪の道に誘っているとの指摘もある。スキマバイトアプリの一つ、タイミーでは’24年11月初めに闇バイトの実行犯集めが疑われる求人が掲載されたことが話題になった。
スキマバイトは「隙間の時間を利用したバイト」の意味ではなく、表からはハッキリとは見えない、社会のスキマを生きる人たちのためのバイトなのかもしれない。
「週刊現代」2025年5月12日号より
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