身近な疑問・質問・お悩みを解決するCBCラジオ『北野誠のズバリ』の「ズバリ法律相談室」のコーナー。5月7日の放送には、原武之弁護士が「感謝と反省で流した涙に、慰謝料を請求できるのか?」という驚きの質問が寄せられました。きっかけは、結婚式当日に母親から渡された1冊の通帳。Aさんが思わず涙した理由と、まさかのどんでん返しとは?
Aさんは、15年経っても根に持っていることがあるといいます。
こどもの頃にもらったお年玉や入学祝い、合格祝いなどのお金をすべて母親に預けていたというAさん。親がこどものお金を使い込むという話をよく耳にしていたため、自分も同じだろうと気にしていなかったといいます。ところが、思いがけない出来事が起こりました。「私が28歳で結婚する時、結婚式の当日、母親に呼ばれて家に行くと、私名義の通帳と印鑑を渡されました。『あなたのだから、必要になったら使いなさい』という母の言葉に、私のために貯金していてくれたんだと感謝すると同時に、こどものお金を使い込むような親だと思っていたことに『本当にごめんなさい』と心の中で反省し、涙が止まりませんでした」(Aさん)ここまでは素敵なエピソードです。ところが…
「そんな大切なお金は使えない」と、受け取った通帳と印鑑をずっと大切に保管していたというAさん。ところがある日、金融機関からシステム変更による通帳更新の連絡が届きました。そこで初めてその通帳を開いたというAさん。「残高は342円。なんでやねん!原先生、私が母親に感謝と反省で流した涙に対して、慰謝料はとれたのでしょうか?教えてください」(Aさん)悔しさを滲ませるAさんに、北野誠も「このお母さんすごいね。342円の残高の通帳を『あなたのために使いなさい』って。いやいやいや、何ぬかしとんねん(笑)」と呆れた様子で反応しました。
原弁護士によると、こどものお年玉や貯金を親が使い込んだとしても、刑事罰や犯罪として問われることはないそうです。形式的には「横領」や「窃盗」になるものの、「親族特例」で刑事罰が免除されるといいます。これは法律では「親族相当例」と呼ばれるもので、刑法244条に基づき、一定の親族間で行われた財産犯については刑罰を免除したり、親告罪として処理したりするという取り決めです。この規定は「家庭の中に国家権力が入るわけではない」という考えに基づくものですが、民事上は別。原弁護士「民事上は当然親子でも損害賠償できるので、使い込んだということが立証できれば、返還を命じる裁判を起こすことはできます」つまり、裁判所が認めれば、親が使い込んだお金を返還しなければならない可能性はあるということです。
しかし、質問にあった「感謝と反省で流した涙に対しての慰謝料請求」については、やはり難しいようです。原弁護士「そんな風に言われて、悪いことをしたと思ってごめんなさいというのはわからんでもないですけど、それは心の中の問題で、誰にもわからないわけですね、正直」北野「もう渡すなよ。342円しかないんだったら(笑)」原弁護士「ユーモアかもしれないし。もしかしたら『これを糧に頑張りなさい、開いたらびっくりするけどね』という感じなのかもしれないですけど。まあいろんな意味があるのかもしれないので、それを裁判所が判断するというのは非常に難しいと思います」
原弁護士自身も、親からお金をもらえなかったことを何十年も覚えているそうです。北野は、自分のこどもたちのお金はしっかり貯めていたと話しました。最後に、342円という残高について「ギャグとしか言いようがない」と北野。「語呂合わせで入れておいてくれれば。326円で“みのる”とかね。『今後、あんたの人生がが実るように326円だけ残しておいた』とかね」と冗談を交えながら締めくくりました。(minto)
北野誠のズバリ2025年05月07日14時15分~抜粋(Radikoタイムフリー)