【スキマバイト現場の実態】北関東の工場で50代女性ライターが試してみた「70代男性の絶叫が響きわたる」「主任が商品の下着で興奮しセクハラ行為」

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面接なし。履歴書なし。スマホ一つで簡単に始められる「スキマバイト」。その中には、表からは見えない過酷な職場がいくつも潜んでいるのだ。
北関東のある工場の一角。箱に入ったネジを10個ずつ集めて、小さな袋に詰めていく単純な作業を、私は延々と続けている。カシャンカシャンと鳴る機械の音と、ネジの数が合わないことを知らせるブザーだけが聞こえてくる退屈な空間だ。
作業を始めてわずか2時間、私の意識ははるか彼方に飛びそうだ―そんな時、一つの叫び声が響き渡った。
「ウウアアーー!」
単純作業の繰り返しに精神が限界を迎えたのか。声の方向を向くと、70代くらいの男性がネジの入った箱を地面にぶちまけ、パニック状態に陥っていたのだ。しかし周りで働く人たちは誰も見向きもせず、助けようともせず、黙々と作業を続けているではないか。
ここは本当に「職場」なのだろうか―。
* * * * *
「スキマバイト」をご存じだろうか。履歴書や面接なしに、スマホのアプリに個人情報と身分証を登録するだけで、簡単に日雇いバイトを見つけることができるサービスだ。今年4月には、ファーストフードチェーン「サブウェイ」が、店長以外全員がスキマバイトワーカーの店舗をオープンしたと発表し、話題を集めた。
いまやスキマバイトアプリの登録者の総数は、3200万人に上り、若者だけでなく、中年あるいは高齢者もよく利用しているという。
私は昨年56歳を迎えたライターだ。夫とは2年前に離婚し、20歳の娘の大学卒業を見届けるまでは稼がなければならない。本業のライターだけでは十分な収入を稼げないが、なかなか時間を作れない。そんな時に知ったのが、スキマバイトだ。これを使えば、「朝9時から昼の12時まで」「午後3時から1時間だけ」といった自由な時間でバイトに入ることができるのだ。
ライター業のネタ探しにもなるかもしれないと軽い気持ちで始めたのだが、そんな甘い世界ではなかった。おカネと引き換えに、これまでの人生で一度も体験したことがなかった「限界職場」の世界を知ることになるとは……。
利用方法はいたって簡単。アプリに個人情報などを登録し、日時や業種を指定し応募したら、後は当日現場に行くだけ。
この春、初めて向かった職場が、冒頭の北関東の工場。誰にでもできて、気軽におカネを稼げる仕事だったが、あまりの単調さにうんざりしてしまった。まさか70を超えた男のリアルな悲鳴を聞くことになるとは……。
それでもこの職場はまだマシなほうだった。
次の日に向かったのは、北関東のはずれにあるアパレルブランドの倉庫。野球グラウンドの半分ほどの広さがある。
ここでの作業も、倉庫に並んだ段ボール箱から指定されたアイテム(シャツやズボンなど)を抜いて、別の箱に入れるという至極簡単なものだ。
基本、バイト先で名前を呼ばれることはない。社員やパートと違い、私服を着ている人は明らかに「日雇いバイト」。現場の責任者からは「スキマさん」と呼ばれるのだ。名前も個性も奪われるので、まるで『千と千尋の神隠し』の世界だ。私は60代後半と思われる男性とともに、30代の社員から「君たちスキマさんは、女性用下着の場所をお願いね」と言われた。
男性は背が低くつぶらな瞳が印象的で、寺尾聰から白い歯と精気を抜いたような風貌をしている。肌着のようなヨレヨレの薄いTシャツが少し不気味だ。私は名前も知らないスキマさんのことを心の中で「ヨレヨレさん」と呼ぶことにした。
ヨレヨレさんは、作業の始まりから様子がおかしかった。
ブラジャーを探すだけの簡単な作業なのに、一つ一つ丁寧に顔に近づけていたのだ。
商品に不備があるのかと気になって近づいてみると、ヨレヨレさんから「ムフー、ムフー」と、まるで機関車のような鼻息が聞こえてくる。
汗の滲んだ手はブラの中心、つまり女性の乳首が当たる部分に押しつけられている。まさかビニールの上から触るだけで興奮しているのか……。
しばらくすると、次はパンティーを手に取り、女性の性器がその中にあるかのように下から覗いている。ヨレヨレさんはまごうことなき変態さんだった。
気持ち悪くなった私はヨレヨレさんをその場に置き去りにし、自分の持ち場に戻ることにした。
18時に仕事は終わり、私はたまたま居合わせた社員さんにそれとなくヨレヨレさんの話をしてみた。すると、彼はその倉庫では「有名人」だというではないか。
「この倉庫に何回も来ているスキマさんでしょ。下着をいやらしく触ることで有名ですよ。作業も遅いし、気持ち悪いからあまり来てほしくないんだけど……。
この辺の地域では、スキマバイトアプリからやってくる人はほとんどが高齢者です。それも、普通の職場では働けないような人たちばかり。
それでも受け入れてしまうのは、人手不足だからです。「限界職場」の現実ですよ」
6時間で8100円の稼ぎ。同僚の質にさえ目をつむれば、悪くないのだろうか。
スキマバイトの案件は多種多様だが、企業側にも条件があり、中高年以上は接客業には応募できないことが多い。悲しいかな、中年には接客してほしくないということか。
私の場合、時間さえ合えば、業種や条件にはこだわりはない。ただ、喫煙所のある工場を見つけると積極的に応募してしまう。たばこは退屈な作業の中で、唯一の癒やしだ。
【つづきを読む】後編記事『「手を止めるな、給料泥棒!」50代女性ライターが体験したスキマバイトの現場「監視役の上司が尻に手を押し当ててきて…」「多目的トイレでは外国人カップルが淫行」』へ続く。
「週刊現代」2025年5月12日号より
【つづきを読む】「手を止めるな、給料泥棒!」50代女性ライターが体験したスキマバイトの現場「監視役の上司が尻に手を押し当ててきて…」「多目的トイレでは外国人カップルが淫行」

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