フジ、辞任した港氏や大多氏にまさかの「同情の声」 進まぬパワハラ疑惑調査に「不満の声」も

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フジテレビの第3者委員会の調査報告書が公表されてから約1カ月が過ぎた。社内では報道局の新たなパワハラ疑惑が浮上しているが、調査は進んでいない。一方、中居正広氏(52)による性暴力を受けた元女性アナウンサーを中傷する声が社内にはあり、引責辞任した港浩一前社長(72)らには同情論がある。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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【独占写真】高級外車でお出かけ…フジ記者会見の直前にキャッチした「中居正広氏」の変装姿
新たなパワハラ疑惑はかなりの数の社員が把握している。だが、第3者委員会の調査からは漏れた。
このパワハラ疑惑は元報道担当の上級幹部から、部下の元報道幹部に対して行われたとされる。
被害に遭った部下の元報道幹部は記者時代、世紀の大スクープを放ち、フジ報道局の名を大いに高めた。そんなこともあり、「きちんと調査を行うべきだ」(フジ関係者A)という声が強い。
一方、元報道担当の上級幹部は、日枝久・前取締役相談役(87)の側近の1人。
「調査が行われないのは日枝氏が力を失っていないからかもしれない」(同・フジ関係者A)
そもそも日枝氏は最初から復権を狙っていたという見方が強い。
「本当に日枝氏が復権したら最悪。信用の回復なんて無理」(同・フジ関係者A)
一方、中居氏から性暴力を受けた元女性アナへの中傷が続いている。
元フジ報道局解説委員でJapan In-depth編集長の安倍宏行氏(69)は「決して許されないこと」と語気を強めた。
一方で港氏や大多亮・元関西テレビ社長(66)を讃えたり、同情したりする声があるという。一般的な企業の場合、重大な人権侵害行為をしたら、幹部であろうが退場しなくてはならない。過去の功績も消える。だが、どうもフジの現時点での基準は少し違うようだ。
「港氏、大多氏は人身御供になったという誤った考え方が社内にあるのではないか」(Japan In-depth編集長・安倍氏)
ゴールデンウィーク明けにはフジの親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の決算役員会がある。
約8%の株を持つ安定株主の東宝は、フジの大幅赤字の中身を気にするだろう。一方でフジの社風を一新できるかどうかも関心事に違いない。そうしないとCMが戻ってこない。
FMHが気にすべき株主はダルトン・インベストメンツ(保有株7%強)などアクティビスト(モノ言う株主)だけではない。安定株主が常に応援してくれるとは限らない。
アクティビストはほかにSBIホールディングス傘下で5%強の株を持つ投資顧問会社のレオス・キャピタルワークス、11%強を持つ旧村上ファンドの村上世彰氏(65)の長女・絢氏である。
SBIホールディングス会長兼社長の北尾吉孝氏(74)はダルトンが選んだ12人の役員候補に入っている。キーパーソンだ。同じくカギを握る人物は村上氏と絢氏。2人は目下のところ、誰とも連携していない。単独行動を貫いている。
一方、世間の人はフジの再生の可能性をどう見るか。毎日新聞4月14日付の世論調査の結果は次の通りである。
※元タレントの中居正広氏がフジテレビのアナウンサーだった女性に性暴力を加えたとされる問題を巡り、フジテレビが信頼を回復できると思いますか
できると思う 15できるとは思わない 54わからない 29
(数字は%、小数点以下を四捨五入。0は0.5%未満)半数以上の人が信頼回復はできないと見ている。かなり厳しい結果だ。
他局はどう見ているのだろう。日本テレビ関係者は「再生までには数年かかるのではないか」と読む。
そもそも日テレはフジに厳しい。両社は1990年代から犬猿の仲なのだ。フジが昨年度まで9年度連続で視聴率4位でありながら、いまだ民放の盟主を気取っているところが見受けられ、それが反感を買っている。
テレビ朝日の早河洋会長(81)のフジ嫌いもテレビ界では有名な話。根っ子には椿問題(1993年)があるとされている。
まず当時のテレ朝の椿貞良・取締役報道局長が、日本民間放送連盟(民放連)の会合で「反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道を(しよう)」などと発言したとされる。これをスクープしたのがフジ系列の産経新聞だったため、テレ朝はフジによるリークを強く疑った。
早河氏はこのほど次期民放連会長に内定した。早河氏は会長を初めて引き受ける。前任の遠藤龍之介前フジ副会長(69)が辞任したからだ。なにやら因縁めいている。
4月から出直したフジの視聴率はどうなっているのだろう。新番組がほぼ出揃った4月第3週(14~20日)の個人視聴率を見てみたい。
世帯視聴率は高齢者が好む番組の数字が高くなってしまうため、テレビ界もスポンサーも5年前から使っていない。
全日帯は午前6時から深夜零時、ゴールデン帯は午後7時から同10時、プライム帯は同7時から同11時だ。
NHK 全日帯2.5%、ゴールデン帯4.8%、プライム帯4.1%日本テレビ 全日帯3.1%、ゴールデン帯4.9%、プライム帯4.5%テレビ朝日 全日帯3.2%、ゴールデン帯4.5%、プライム帯4.7%TBS 全日帯2.6%、ゴールデン帯4.2%、プライム帯4.1%テレビ東京 全日帯1.1%、ゴールデン帯2.9%、プライム帯2.5%フジテレビ 全日帯2.1%、ゴールデン帯3.6%、プライム帯3.5%
フジは3部門とも5位。相変わらず苦しい。だからなのか、フジはこれまで視聴率を積極的に発表したがらないように見えた。TVerの再生数ばかり発表しているようだった。
だが、視聴率が高くならないと業績は回復しない。視聴率から目を背けるのはフジのためにならないはず。視聴率はテレビ局にとって、この上ない刺激材料であるはずなのだ。
4月に始まった春ドラマで、フジの目玉は「続・続・最後から二番目の恋」(月曜午後9時)。14日放送分の個人視聴率は5.5%で、この週放送されたプライム帯ドラマ13本のうち、2位だった。
トップは20日放送のTBS「日曜劇場 キャスター」(日曜午後9時)で7.2%。ただし、2つのドラマの視聴率の中身はかなり異なる。
「若い視聴者が観ているのは圧倒的に『キャスター』」(ドラマ制作者)
仕方がないのである。「続・続・最後から二番目の恋」は良質のドラマに違いないが、小泉今日子(59)と中井貴一(63)を中心とする熟年世代の恋物語なのだから。おまけに11年ぶりの続編である。若い世代には取っつきにくいだろう。
そもそもこのドラマの第1期(2012年)は「木曜劇場」(木曜午後10時)で放送された。最初から大人の視聴者を意識したドラマなのだ。
このドラマは不祥事より前に準備された。若い世代を狙い続けてきた月9の本格的なリニューアルと見ていいのではないか。
社の刷新より月9の改革のほうが先行する形となった。
高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。
デイリー新潮編集部

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