「7万円台の結婚式」「平日チャペルでイベント」…苦境のブライダル業界が生き残りをかけて改革へ

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新型コロナの影響もあり、ここ最近苦境にあえいでいるというブライダル業界。こうした中、生き残りをかけて各社、様々な取り組みを行っているという。
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東京・銀座にあるノバレーゼ銀座。ウェディングドレスのレンタルなどを行うお店で、店内には所狭しとドレスが並ぶ。
「こちらがニューヨークのブランドで、当社で非常に人気が高いドレス」(ノバレーゼ 取締役執行役員 笹岡知寿子氏、以下同)
このほか、結婚式場の運営なども展開するノバレーゼ。これまで、5万5000組以上の式を手がけてきたという。
そんな中、ここ最近、ある危機感を抱いているそうだ。
「結婚式自体を挙げるマーケットというのは、どんどん減っている事実はある」
それが、「ブライダル業界の低迷」である。
東京商工リサーチの調査によると、結婚式場や、結婚相談所といったブライダル業界の2024年度の倒産件数は13件と、過去2番目の数字に。また、休廃業・解散件数は4月~12月の時点で、すでに過去最高を更新する37件となっている。
この背景について、ブライダル業界の事情に詳しいブライダル産業新聞の権藤咲デスクは次のように説明する。
「大きなダメージを与えたのがやはりコロナというのが一つある。(コロナ明けに)特需みたいのは一時あったが、その需要も落ち着いてきたので、ここからが本当の勝負という形にはなっていると思う」(ブライダル産業新聞・権藤咲デスク、以下同)
また、コロナ禍を経て、ある層が増えてきているという。
「いわゆる『ナシ婚層』と呼ばれている。お金が無くはないが、『その分は生活にとっておこう』『新婚旅行の方にお金を使いたい』とか、いろいろな背景で、結婚式はやらないという層」
SNS全盛のいま、写真を撮影するだけの夫婦も増えてきていると、権藤デスクは指摘。それもあってか、フォトウェディングの市場規模は2022年には、1000億円を突破している。
また、若い世代からはこんな意見も。
「(結婚式は)挙げたい。費用がかかるので、それなりにお金を貯めないといけないなというのは、不安がある」(20代女性)
「そもそも結婚式というよりも、結婚ってどうなのという話はよくする。結婚すると1人の時間が減るとか、そういう考えの友達が周りには結構いる」(20代男性)
人々の意識の変化もあり、苦境にあえぐブライダル業界。では今後、生き残っていくためにはどうすればいいのか。ブライダル産業新聞の権藤デスクは、結婚式の開催以外で稼ぐ「新たな収入源の確立」をあげる。
「どうしても結婚式ビジネスが土日祝日でしか稼働がなかなかできなかったが、例えば土日の夜の空いている時間のチャペルを活用してプロポーズやPRにつなげる施設・式場も少しずつ増えていると感じる」(ブライダル産業新聞・権藤デスク)
今回、ニュース番組『ABEMAヒルズ』が取材したノバレーゼでは2025年4月から、平日など空いている時間帯のチャペルを活用し、結婚していないカップルを対象にした音楽イベント(恋人たちの聖なる音楽堂)を始めた。
「結婚式場って普段入ることはないが、入ることでこういうことなんだという体感をしてもらう。平日の部分は、日常でもお越しいただけるような場所としてしっかり稼働して、土日は結婚式をできるように」(ノバレーゼ 取締役執行役員 笹岡知寿子氏)
また、人数や会場を小規模にすることで、7万円台から結婚式があげられるという「小さな結婚式」というサービスも。
「経済的な理由。もう一つは、例えば年齢的な理由や、子どもがいるからと躊躇している人がいるのではないかと考えて、ある意味、結婚式を諦めているカップルに叶えてほしいということでスタートしたのが我々のビジネス」(株式会社レック 勝田誠之氏)
このサービスでは「挙式のみ」や「挙式と会食」など、豊富なプランから自由に組み合わせることが可能とのこと。夫婦それぞれにあわせた多様なニーズに応えていくことも、これからのウェディング業界には求められてくるようだ。
「ブライダル業界にかかわらず、やはり改革は必要かなと思う。今までの結婚式で十分だよねというような形になってくると、列席する側もそもそもつまらないだとか、これであれば数百万払って結婚式をやる意味はないと感じてしまわれる可能性は高い。今までに甘えることなく改革を一つずつしていくというのは重要なポイント」(ブライダル産業新聞・権藤デスク)
このブライダル業界の現状に、ノンフィクションライターの石戸諭氏は次のように述べる。
「実際のところ新型コロナは多くの業界に劇的な変化をもたらした。その一つがブライダル業界。僕もかつて取材をしたが出会いの場が減っていき、婚姻そのものが大きく減ったのがコロナ禍の象徴的な変化だ。さらに、少なくとも僕らの世代ぐらいまでだと、なんとなく結婚式はやるものだと思っていたが、コロナ禍で人と人が集まるというのはリスキーな行為であるという考えも広まった。延期するにしてもいつ緊急事態宣言や流行の波が来るのかわからなくなったカップルもいるだろう。社会の変化を受けて『そこまでお金をかけて結婚式をやる意味ってあるの?』と存在意義が問われてしまった、ということではないか」
「データを見るとそもそも未婚層が増えていて、もう少し年を重ねてから結婚してみようという人たちも増えている。若くして結婚が当たり前ではなくなったこと自体は、決してネガティブな変化ではないと思う。今までは『結婚して一人前』的なある種の同調圧力、社会の目があっての結婚もあっただろう。それが衰退して、結婚しなくても生きていけますよということにはなりつつある。とはいえ、結婚を選ぶ人はいる。彼らのニーズに応えていくことが業界の課題になっている」
(『ABEMAヒルズ』より)

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