【平岩 幹男】発達障害を抱えた子どもがつく典型的な「3パターンの嘘」への「叱るよりも効果的な」対応方法

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発達障害とは何か。
近年増加傾向にあると言われる発達障害。どう診断されるのか。どんな種類があるのか。医療や教育はどうおこなわれているか。小学校入学から中学進学、思春期から成人への成長過程を踏まえ、さらなる将来をどう考えるか。
発達障害をめぐる現状を明らかにすることで見えてくる、さまざまな考え方、課題や将来の方向性。そして、発達障害のこども達との向き合い方とは。
著者の50年近くにわたる臨床経験を凝縮した一冊『こどもの発達障害 僕はこう診てきた』より一部抜粋・再編集してお届けする。
『こどもの発達障害 僕はこう診てきた』連載第15回
未就学児から青年期まで、発達障害を抱えた子どもたちの診療のなかで「子どもがうそをつく」という訴えもよく耳にします。うそは事実と異なることを他人に告げることですが、3通りあります。
いちばん多いのは「回避型」のうそです。ADHDを抱えているとときどき見られますが、叱られるのがいやだから「お手伝いは終わった」と言うことなどが典型です。だいたいすぐばれます。ゲームを1時間の約束で始めたのに残り20分になったことを告げたら、「まだ40分あるよ」と言うパターンもあります。
お手伝いについては、叱るよりは「すぐやってくれたらうれしい」のほうがうまくいくことが多いでしょうし、ゲームの場合には「約束が守れないと次のとき困るよ」ではなく、「約束を守って次も楽しくやろうね」と話したほうがやめやすいです。
2番目は「トラップ型」のうそです。オオカミ少年の話を思い出してください。「オオカミがきた」とうそをついてみんなを集めておもしろがり、本当に来たときには手伝ってもらえなかった話です。発達障害を抱えていると、対人関係や他人の操作は苦手なことが多いので、このタイプのうそは少ないと思います。
意外に多いのが「夢見型」のうそで、頭のなかに浮かんだことをそのまましゃべってしまう、こうなればいいなという希望的観測を事実のように話すパターンです。叱るのではなく「そうなれば何が起きるかな」と会話を続けているうちに、子ども自身が気づくことが多いです。
大人の詐欺は「欲望のために」故意に事実と異なることを話したり行ったりするわけですが、子どもの場合はそうでないことが多いです。しかし、たとえ夢見型であっても、大人になっていく過程でうそをつくことが増えていくのは好ましくありません。子どもを支える表現を用いながら、うそを減らしていくことを目指したほうがいいでしょう。
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