月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」

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自身の年金加入状況や将来の受給見込み額を知らせる「ねんきん定期便」。しかし、そこに記された情報や自身の加入記録に対し、「何かおかしい」と違和感を覚える人もいるかもしれません。その違和感に気づけたなら、まだ手遅れではない可能性も。もし気づかずに65歳を迎えてしまうと、後悔することにもなりかねません。
毎年、誕生月に届く「ねんきん定期便」。自身の年金見込み額を知ることができ、老後の生活設計の参考になります。しかし、そこで違和感を覚える人もいます。会社員の古川翔太さん(仮名・45歳)もその一人です。
「ねんきん定期便」でよくある違和感の一つが年金額です。記載されている金額を見て「これしか受け取れないの?」とパニックになる人も多いといいます。ただ、それは年齢によって記載内容が異なることを知っていれば、過度に心配する必要はありません。「ねんきん定期便」は、大きく50歳未満と50歳以上で記載内容が異なります。
50歳未満の場合、「これまでの加入実績に応じた年金額」が記されています。これは、「今後保険料を納めなかった場合に受け取れる金額」を示しています。そのため、金額の少なさに驚いてしまう人が少なくありません。一方、50歳以上の場合、記載されているのは、現在の加入状況が60歳まで続いたと仮定した場合の年金見込み額です。こちらの方が、将来実際に受け取る金額に近いと考えられます。ただし、今後の収入が大きく変動すれば、記載されている見込み額との差は大きくなる可能性があります。
しかし、古川さんが覚えた違和感は金額ではありませんでした。
「あれ、保険料が未払いになっている」
昨年の誕生日時点で、未納がなければ納付実績は24年(=288ヵ月)と記載されるはずが、実際には3年弱(約36ヵ月)短かったそうです。そして古川さんは、このとき初めて「年金ルール」の詳細を知ることになります。
そもそも日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、国民年金に加入しなければならず、その保険料は月額1万7,510円です(令和7年度)。ただし、学生には申請によって保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」があり、多くの学生が利用しています。この制度は平成12年(2000年)4月に始まりました。古川さんは20歳のとき、すぐにこの制度を利用し、保険料の納付猶予を受けました。
しかし、これはあくまで「猶予」であり、「学生の間は収入が少ないため納付を待ちますが、社会人になって収入が得られるようになったら納めてください」という意味合いです。ところが、「学生の間は保険料を払わなくてよく、納付したものとみなされる」と誤解している人も少なくありません。
「20代の頃は、年金なんてよくわかっていなかったし、制度について詳しく知ろうとも思いませんでした。国民年金と厚生年金の違いがわかったのも、つい最近のことです。今になって当時の記録が“効いている”とわかって、ようやくその重要性に気づきました」
老齢基礎年金を受け取るには、原則として保険料の納付済期間などが10年以上必要です。学生納付特例制度の承認を受けた期間は、この受給資格期間(10年以上)に含まれます。ただし、将来受け取る年金額の計算対象にはなりません。
では、古川さんがこのまま誤解に気づかず、猶予期間分が未納の状態で年金請求を行った場合、どうなるのでしょうか。古川さんが65歳になる20年後を想定し、猶予された3年間分の保険料が未納のままだったケースを考えてみましょう。満額の場合、老齢基礎年金の受取額は月額6万9,308円(令和7年度)です。単純計算で、受け取る年金額に月額約5,200円の差が生じます。1年間で約6万円、10年間で約60万円、20年間で約120万円……。もし保険料を満額納付したつもりでいた場合、月5,000円強の差でも「何かの間違いでは……」と唖然とするのではないでしょうか。
もちろん、「たった5,000円程度」と考えるか、「5,000円も!」と考えるかは人それぞれ。しかし、「何とかならないのか」と考えても、学生納付特例制度で猶予された保険料を追納できるのは、原則として猶予期間から10年以内です。つまり、45歳の古川さんの場合、20代前半の猶予期間からはすでに10年以上経過しているため、追納はできません。ちなみに、学生納付特例の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、経過期間に応じた加算額が上乗せされるので注意が必要です。
「もう手遅れか……」
もし満額に近づけたいのであれば、60歳以降に国民年金に任意加入するという方法もあります。これは、60歳以降も国民年金保険料を納めることができる制度で、納付期間が40年に満たない場合などに利用できます。ただし、任意加入して満額受給を目指すことが経済的に有利かどうかは、個々の状況や価値観によって判断が分かれます。加入を検討する際は、事前にしっかりと試算することをおすすめします。
古川さんは、「今のところ(任意加入で)満額受給に近づけたい」と考えつつも、最終的な結論は「そのとき(60歳)になってから考える」としています。いずれにせよ、年金を受け取る段階になって初めてこの事実に気づく、という事態を避けられたのは幸いだったと話します。
このように、「制度の詳細は知らないまま、年金保険料はきちんと納めているつもり」という人は少なくありません。働き盛りの40代こそ、自身の納付状況や年金制度の概要を今一度確認すべき時期といえるかもしれません。
[参考資料]
厚生労働省『令和7年度の年金額改定について』
日本年金機構『ねんきん定期便』
日本年金機構『学生納付特例制度』

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