ウーバーイーツジャパンは、13~17歳の子供がアプリで料理などを注文できる「Uber Teens」を全国で開始した(著者撮影)
ウーバーイーツジャパンは4月21日、料理宅配サービスを13~17歳も使えるようにすると発表した(4月21日付・日本経済新聞)。
サービス名は「Uber Teens(ウーバーティーンズ)」。これまでは18歳未満は注文できなかったが、同日から全国で解禁。増加する共働き世帯の需要をつかみ、サービス利用者を増やす狙いのようだ。
Uber Teensは、保護者がアプリ内で家族用アカウントを作成。招待された子供が設定された利用上限額の範囲内で、注文できる仕組みとなっている。支払いは保護者のアカウントにひもづけられ、アルコール類は注文できない。注文状況は保護者側がリアルタイムで確認できる。
なお、新サービスに対応する配達員は利用者からの評価が高い、一定の配達実績がある者に限定される。
……と、このように説明すると、かなり綿密に設計したサービスのように感じられるし、実際、ウーバー側は消費者のニーズに応じて開始するのだろう。いわゆる、「マーケット・イン」的な発想でのサービスなのだ。
が、このニュースが流れたとき、ネットには辛辣なコメントが飛び交った。
具体的には、「犯罪を誘発するのではないか」「子供を危険な目に遭わせるつもりか」「なぜこんな危険なサービスを始めるのか」「ウーバー配達員に子供だけで過ごしている時間を知らせることになる」「犯罪に巻き込まれた場合の責任の所在は?」……などの意見だ。
ウーバー配達員として今年で6年目の活動に突入した僕は、今回の新サービスに対するネットの反応を見たとき、悲しさを覚えた。職業差別だし、社会的なイジメ以外の何物でもないと思ったのだ。
例えばアマゾンや佐川急便など、宅配サービスでは玄関の扉を開けて、商品を受け取ることが多々ある。当然、お届けする家庭の事情によっては、未成年者が応対するシチュエーションもあるだろう。
そもそも事実関係の認識が、スタート地点から間違っている。例えば今回の新サービスが始まる前から、一部の利用者はウーバーを使って、遠隔操作で食事を子供に届けていた。
筆者の配達を例に、説明してみよう。
ウーバーイーツのアプリ画面。すでに、家族利用を想定したサービスを提供している(著者撮影)
その日、僕は四角いバッグにお弁当を2つ入れ、配送先の一軒家を目指していた。
お客様情報の備考欄には「黄色い家です」と記されているが、残念ながら夜間の配達のため、家の色を識別することはできない。よって住所と表札を頼りに探したが、それらしいお宅が見つからない。配達用アプリに表示される「ピン」の位置もズレている。
配達用アプリにはお客様住所に「ピン」が刺さっている。しかし正確な情報が反映されていない「ピンズレ」のケースがまれにある(著者撮影)
僕はお客様に電話をかけた。電話に出たのは女性の方だった。その方は、かなり苛立っていた。もしかしたら僕が自宅周辺でウロウロしていたのを、リアルタイムで確認していたのかもしれない。その女性からは「私は今職場にいて、その食事は子供たちの夜ご飯なんですけど、早く届けてくれませんか」といったクレームを受けた。
ようやく見つかった一軒家で、インターホンを押すと中学生くらいの男の子が出てきた。
ものすごく大人な対応ができる男の子で、「配達ありがとうございました」とお礼を伝えられた僕は、「共働き世帯の子供はシッカリしてるなあ。やろうと思えば自炊とかも(YouTube見ながら余裕で)できるんだろうなあ」と感心してしまった。
このように今回の新サービスが始まる前から、未成年者に食事を届けるシチュエーションは多々あった。僕はウーバー配達員として7200回以上の配達を行ってきたが、小学生や女子高生に食事を届けたこともある。
共働き世帯やシングルマザーの方など、家庭の事情により自宅で食事を作れない方々が(遠隔操作で)ウーバーを利用することで、愛する子供たちへ美味しい食事を用意していたのだ。
ちなみにウーバー配達員として、同じお客様のところへ配達することはまれだ。ベテラン配達員の僕でさえ、同じお届け先へは過去に50件も配送したことがない。それぐらい、今では多くの人が活用しているサービスなのだろう。
Uber Teensで得られる情報などたかが知れていることを含め、過度な心配は不要ではないか……というのが僕なりの見解だ。
それでも防犯面での不安があるという方は、(そもそもサービスを利用しないだろうという予想は置いといて)例えば配送方法を「置き配」に指定するなどの対策がある。
先日、出前館で商品にネズミが混入する事件が起きたばかりだが(詳細はこちらの記事を読んでほしい、害獣や昆虫などの混入リスクはゼロではなくなってしまうものの、それでも「置き配」は圧倒的に便利だ。
一人暮らしの女性の方などは、現行のサービスを利用する際も「対面」を避ける傾向があり、これをそのまま18歳以下の子供たちにも適応すればいい。
一方で、ウーバー配達員の中には「ハズレ」が混じっていることは周知の事実だ。ネットやSNSでは「配達員ガチャ」といった言葉も浸透している。とは言え、Uber Teensの配送は、高評価の配達員に限定されるため、サービスの質は担保されていくのではないか。
配達員の質を向上していくという動きは、実際、ウーバー運営にも見え始めている。
これまで、ウーバー配達員は高評価だろうが低評価だろうが関係なく、仕事が平等に振られる「平等という名の不平等」の環境で働いてきた。しかし、2025年3月末日より段階的に、この姿勢を改めることがウーバーから発表されている。
頑張った人がキチンと報われる制度設計は、現場の人間からすると「やりがい」「モチベーションアップ」につながる。ウーバーのサービスの質は、今後上昇していくのではないか。
高評価の配達員に関するウーバーからのアナウンス(著者撮影)
また視点を変えると、これだけ厳しいウーバーに対する世間の評価がある中で、高評価を維持している配達員には清潔感や一般常識など、顧客が満足できるサービスを提供できる力があると考えていいのではないか。
ウーバー配達員の満足度(高評価か否か)は販売業者とお客様、直近100件の評価によって決まる。誰から一人でも「いいね」の逆、「わるい」の評価がされると、満足度は99%となり、そこから100件続けて「いいね」を獲得しないと満足度100%には到達しない。
満足度が何%になると「高評価」扱いになるのかは不明だが、僕はウーバー配達員として2年間近く、満足度100%(高評価)を継続してきた。しかし昨年末頃に「わるい」の評価を受けてしまい、現在は満足度98%(高評価)となっている。
満足度100%だった頃のプロフィール画面(著者撮影)
満足度は内訳を表示することができる(著者撮影)
誰が「わるい」の評価をしたのか、配達員に知るすべはない。
評価者を特定させないためにも運用上、ここは仕方ないと思うが……何のトラブルもなく配達を終えた後、自分の満足度が低下しているのを発見したときは、正直少しだけ人間不信になる。僕と同じような不安と不満を抱いている配達員は、SNSなどの投稿を見る限り少なくないようだ。
なお僕は海外一人旅が趣味で、異国ではウーバー(タクシー)をよく利用するのだが、配達員の評価が「これまでに配達した総計」に基づいた評価がされており、すごくいいなと思っている。
飲食店のレビュー、口コミなどがイメージしやすいが、評価者が多ければ多いほどその評価はより正確なものになる。
2025年にバングラデシュでウーバーを使用した際、表示されたドライバー情報(著者撮影)
ウーバーでの総送迎回数と評価が表示されており、安心感につながった(著者撮影)
もしこのような評価方法に変更できれば、これまで以上に利用者(お子さんを持つ親御さんも)は安心できると思うのだが、どうだろうか。
(佐藤 大輝 : ライター・ウーバー配達員)