4月13日に開幕した大阪・関西万博。20日までの総入場者数が70万人を超え、ニュースでその盛況ぶりを目にした人も多いだろう。そんな中で、「警備員への土下座騒動」がSNSなどで物議を醸している。取材班は万博でアルバイトをしている男性に取材を行ない、現地で何が起きているのかを聞いた。
〈画像〉取材に応じたアルバイトスタッフA氏の関係者入場証
4月13日に開幕した大阪・関西万博は、20日までの総入場者数が70万人を超えた。
メタンガスや“謎のドローン”が会場上空を飛ぶ事件などの問題から不安視する声も多い中、新たな事件として「警備員への土下座強要騒動」がSNSなどで物議を醸している。
“事件”は17日の午後4時頃に発生。警備員に対して怒鳴る男性の動画が撮影されたという。
「一部報道によると万博会場の西ゲート付近にて、万博の警備員に対して怒る男性の姿があったといいます。続けてその男性は『土下座しろ』と怒鳴ると、警備員はそのまま土下座しました。このカスタマーハラスメント報道に対して、SNSでは各著名人らが『日本人として恥ずかしい』などのコメントを投稿し、大炎上している」(ワイドショースタッフ)
しかし、世界各国が集まる万博で見られる日本人の恥ずかしい行動はこれだけではない。
集英社オンラインの取材に対して、「“おもてなし”や“わびさび”などの奥ゆかしい日本人像からはかけ離れていて、同じ日本人として恥ずかしい限りです」と語るのは、海外パビリオンにてアルバイトをする日本人男性A氏(20代)だ。
「私はとある海外パビリオンでレジや食事の配膳、テーブルの片付けなどのアルバイトをしています。万博のアルバイトはタウンワークなどで現在も募集されていて、手荷物検査のアルバイトなどは高いものだと時給2000円ほどのものもあります。他にも万博の公式案内クルーなどは時給1850円で公式サイトから募集がありました。
私たちのようなアルバイトは各パビリオンから雇われているような形で、知人の紹介などで集められています、私も知人の紹介から入りました。時給は1500円で、隣にある違う国のパビリオンも1550円と同じくらいでした」
A氏は今回の土下座報道を受け、他にも日本人の恥ずかしい行動は会場各所でも見受けられると続ける。
「私が働くパビリオン内にあるレストランの客層は3割から5割ほどが日本人で、半分以上は外国人です。ゴミの分別などをしっかりするのは、意外にも外国人のお客さんなんです。食事を終えた後は飲み残し、食べ残し、ゴミ、缶、ペットボトルなど、細かく分別してゴミ箱に捨てるのですが、日本人は缶のところにペットボトルを入れたり、飲み残しと書いてあるところに食べ残しを捨てて詰まらせたりする。
分別方法は日本語で書かれているのですが、見ているとちゃんとやらない人のほとんどが日本人で、むしろ外国の方はどこに捨てていいのか戸惑いながらも、ちゃんとしたところに捨ててくれます。
また、ゴミ箱の前にはスタッフがいることが多いのですが、そのスタッフにゴミを預けるときも、外国人は必ず笑顔で『アリガトウ』と、カタコトでも感謝を示してくれる。一方で日本人はスタッフに無言で渡してきたり、トレーに乗ったゴミや食器をそのままゴミ箱の上に置いて、スタッフをチラッと見て去っていくことが多くて……」
ゴミの分別などを疎かにする日本人の行動は、理解できないと話す。
「これらの行動がカスハラとは言いません。けれど“お客様は神様”という精神がどこかで出すぎてるんじゃないですか。『やってもらって当たり前』という雰囲気がとても強いです。これは万博が自国開催というところに甘えているのか、それとも勘違いしているのか……。
あとは今の日本の暗い部分が出てると思うんですよね。人との交流が下手というか、なんか明るくないんです」
さらに、こう続ける。
「お客さん側だけでなくて、働いてる側も外国の方のほうが接客などを含めてものすごい丁寧なんですよ。ある外国人のスタッフに『接客が丁寧ですね』と言うと『日本だから丁寧にしないと』と言っていて。“おもてなしの国”で接客することの意味を話してました。
一方で数多く募集されていた万博のスタッフはどこかやる気がないというか。外国の関係者の出入りが多く言葉が通じないことに疲弊しているのか、目が全く合わなかったり、言葉を発さないとかすごくて冷たく感じます。自覚が足りないようにも思います」
最後にA氏は、自国開催だからこそ、世界に見られているという自覚を持つべきではないかと語った。
「一部かもしれませんが、これら日本人の横柄というか冷たい態度は、悲しいというのを通り越して恥ずかしいですね。警備員さんに土下座をさせる動画もそうですが、簡単にSNSなどで拡散されるじゃないですか。これを見た外国人はどう思うんだろうと考えると、本当に恥ずかしい。
自国開催で世界中の人が集まるので、むしろいつもより“見られている”ということを意識するべきですし、“おもてなし”の心を忘れちゃいけないのではないでしょうか」
いろいろな問題点が浮き彫りになりつつある大阪万博…批判はされても今日も舞台裏でスタッフたちは汗をかき働いている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班