大手牛丼チェーン「すき家」が1月21日に味噌汁に“異物”が混入するトラブルがあったことを事実と認めた。鳥取南吉方店のGoogleマップ上に〈味噌汁の中にねずみの死骸が混入していました〉と写真付きでクチコミが投稿され、〈本当ならありえない〉〈もう一生すき家行けない〉と炎上するなか、「すき家」が3月22日、ホームページで声明を出した。ネズミが混入した経緯を以下のように説明している。
【写真】「味噌汁の中にネズミがまるごと…」異物混入があった問題の画像。東京店舗で働く現役クルーが提供した「味噌汁の鍋」と「冷蔵庫で準備していたお椀」の写真
〈混入原因について調査を行った結果、「みそ汁」の具材をお椀に入れて複数個準備をする段階において、そのうちの1つのお椀の中に異物が混入していたと考えられています。当該従業員が提供前に商品状態の目視確認を怠ったため、異物に気付かずに提供が行われました〉
しかし、「すき家」で現在クルーとして働く男性は、公式発表への違和感を表明する。この男性によると、基本的なオペレーションとして、まずお椀にワカメやネギなどの具材を手作業で入れた後に積み重ね、一番上の椀にふたをした状態で冷蔵庫内に保存しておくという。必要になり次第、保温性の鍋から味噌汁をおたまですくい、椀に注いで提供することになっている。
「具材はお椀の底に少しの量なので、あんなに大きなネズミが紛れ込んだらすぐ気づくはずです。作業が忙しくなったりすると、鍋のふたを開いたまま厨房に置きっぱなしにしてしまうこともあるので、鍋に混入する可能性は想像しやすいです」
しかし、もし椀ではなく鍋のほうにネズミが混入していたとなると、ネズミが煮込まれた味噌汁を大勢の客が飲んだことになってしまう。混入があった鳥取の店舗で全く同じオペレーションだったかはわからないが、“椀への混入”はいかにして発生したのか。「すき家」に問い合わせた。
「当社の調査によって、異物が店内に侵入した経路については、当該店舗の大型冷蔵庫の扉が店外に面しており、その下部に発生していたパッキンのひび割れから侵入した可能性が高いと考えています。
全国の店舗のうち、同様の冷蔵庫を持つ店舗は72店舗であり、この72店舗についてはパッキン交換などの対策を実施しました。また、お椀への混入原因については、味噌汁の具材を入れたお椀を冷蔵庫で一時保管していた間に混入した可能性が高いというのが当社の認識です」(「すき家」の広報担当者、以下同)
店内映像をチェックした結果、異物が混入していたのは鍋ではなく椀だったという。
「具材をお椀に入れる準備工程や、味噌汁を鍋で作成する段階から保温機器 (ジャー)にセットし、当該お客様に提供がされるまでの一連の店内映像を確認しました。その結果、当該異物がジャーに混入する様子は確認されませんでした。
一方、味噌汁を注ぐ前のお椀に異物のような物が入っていたことを映像で確認しています。混入が認められたお椀は1つだけです」
ネズミの習性も鑑みて、異物が鍋に混入した可能性を強く否定する。
「味噌汁のジャーは使用後、閉めるルールになっていますが、仮に開いていたとして も、90度の温度で煮立っている味噌汁のジャーのふたが開いているところにネズミが飛び込む可能性は非常に低いと考えています。ネズミは熱に敏感で、本能的に高温の物体を避ける傾向があるといわれています」
科学的な観点からも、ネズミが鍋に混入していたとは考えにくいという。
「当社の専門部署が、混入した異物が加熱されていたかどうかを調べる検査(カタラーゼ検査)を実施した結果、加熱されていないことを示す反応が出たことから、科学的な視点からも異物が鍋に混入した可能性は著しく低いと考えております」
異物混入のトラブル発生から2か月遅れの声明となったことに批判が集まっているが、現場レベルでは迅速な対応を取っていたようだ。
「混入原因の調査については当日から現地で実施いたしました。当該店舗については発生後すぐに一時閉店し、衛生検査の実施と、異物混入に繋がる可能性のある建物のクラックなどへの対策を講じるとともに、商品提供前の目視確認など、衛生管理に関して改めて従業員に対する厳格な教育を行いました。
全国の店舗に対しても、異物混入を未然に防ぐために提供前の商品状態の目視確認を徹底するよう改めて指示を行いました」
「すき家」広報部は、改めて消費者に謝罪を述べる。
「従業員が味噌汁を注ぐ前に目視確認できていなかったのは、会社として非常に遺憾と捉えております。味噌汁を提供されたお客様には大変不快な思いをさせてしまったことを深くお詫び申し上げます。
また、多くの消費者の皆様にご心配をおかけしておりますことについて、改めてお詫び申し上げます」
「すき家」の徹底した調査によると、異物混入の被害にあった客は、あくまでクチコミを投稿した1名だけのようだ。とはいえ、今回の騒動で“食の安全”に不信感を覚えた人々は多い。
「すき家」は、今年2月に発表された「一番好きな牛丼のチェーン店」ランキングでトップに輝いた(※「LINEリサーチ」調べ)。牛丼チェーンの覇者は、消費者の信頼を取り戻すことができるか。