78歳、真面目な父が遺した“秘密”…相続で発覚したまさかの「隠し子」。家族も知らなかった“生前の行動”が遺産分割を意外な結末へ【相続診断士の探偵が解説】

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父の急逝という大きな悲しみに暮れる中、思いもよらぬ事実が発覚したら──。不倫ではなくとも、元交際相手との間に隠し子がいたことが判明する、といったケースは珍しくありません。遺書が残されていない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があり、そのためには隠し子本人と連絡を取らなければなりません。MJリサーチ綜合探偵社の取締役で相続診断士でもある若梅秀孝氏が、実際に寄せられた依頼をもとに解説する本連載。今回は、急逝した父の相続手続きの過程で隠し子の存在が発覚した事例をもとに、相続における隠し子の権利や、意外と難航しがちな本人との連絡手段について解説します。
今回の相談者は、大谷さん(男性・47歳)です。
大谷さんは、先月、78歳の父親を亡くしました。持病などはなく直前まで元気だったので、家族は突然の出来事に大きなショックを受けました。大谷さんも「もっと親孝行をしておけばよかった」などと悔やみましたが、悲しみに浸る間もなく、死亡届などの手続きや葬儀の準備など、慌ただしくこなしました。葬儀が終わって少し落ち着いた頃、「相続の手続きも早くしないと」と妹に急かされ、手続きを進めたところ、衝撃の事実が発覚。
「父はとても真面目な性格だったので、私は特に不安に思うことはありませんでしたが、妹が相続人調査はしっかり行うべきだと言うので、念のため戸籍謄本を取り寄せて相続人を調べました。その結果、父と結婚前の交際相手との間に子どもがいることがわかりました。父が母と結婚する前に別の女性と交際していたことは知っていたのですが、父から当時の話を聞いたことはありませんし、子どもがいたことは初耳だったので、すごく驚きました」
父と元交際相手との間に子どもがいることを妹に伝えると、妹は「お父さんに隠し子がいたなんて……」と大粒の涙をこぼしました。その姿を見た大谷さんは、このことは母には絶対に話したくないと思いました。母は、高齢で体が弱くなっているうえ、突然の父の死に大きなショックを受けて、寝込んでしまったからです。
「結婚前の交際相手との間に子どもがいることを母が知っているかどうかはわかりません。ですが、もし知らなかった場合は、大きなショックを受けるに違いないと思いました。知っていたとしても、過去のことを蒸し返されて嫌な気持ちになるだろうと思うと、母に話す気にはなれませんでした」

父と結婚前の交際相手との間の子どもは大谷さんにとっては見ず知らずの他人ですが、父が認知をしていたため、父の法定相続人であることは揺るぎない事実です。父は遺書を遺していなかったため、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。そこで、大谷さんは、母には内緒で、父と元交際相手との間の子どもを探すことに。しかし、どうやって探せばよいか見当がつかず、弁護士事務所に相談しました。
「弁護士に相談したところ、戸籍の附票を確認すれば、住民票の現住所がわかると教えてもらいました。そこで、弁護士に依頼して、戸籍の情報をたどり手紙を送りました。手紙には自分の連絡を記載したのですが、いつまで経っても連絡がこなくて……」
妹からは「まだ連絡が取れないの?」と責められ、焦りを感じた大谷さんは、住所の場所まで足を運ぶことに。遠方だったので、休日に片道3時間半かけて現地に行きました。玄関がオートロックになっているマンションだったので、入口のインターホンで呼び出しましたが、応答はありませんでした。夜まで付近で待って、再び呼び出しましたが、やはり応答はありません。大谷さんは途方に暮れてしまいました。
大谷さんは、再び弁護士に連絡し、本人に手紙を出してから1ヵ月以上経つけれど未だに連絡が取れていないことを伝えました。弁護士からは、「そこには住んでいないのかもしれませんね。以前、同じようなケースで、探偵に依頼して居場所を突き止めてもらったことがありますよ」と言われ、普段からお世話になっているという相続診断士が在籍する探偵事務所を紹介してもらいました。
「探偵に依頼すれば本当の居場所がわかるのだろうかと半信半疑でした。でも、自分ではこれ以上、調べようがなかったので、わらにもすがる思いで、弁護士に紹介してもらった探偵事務所に相談することにしました」
大谷さんは、弁護士に紹介された探偵事務所に相談し、相続の手続きを進めるために亡き父親と元交際相手の子どもを探してほしいと依頼しました。その後、間もなくして、探偵事務所から「見つかりました」と連絡が入りました。
「こんなに早く見つかるとは思っていなかったので、びっくりしました。早速、探偵に教えてもらった住所に連絡したら、本当に本人と連絡が取れて、話すことができました。とても感じの良い人で、父から大学の学費を仕送りしてもらって感謝しているので遺産はいらないと言われました。正直、すごくほっとしました」
その後、大谷さんは、弁護士に遺産分割協議書の作成を依頼して、無事に相続手続きを終えました。大谷さんは、父が元交際相手との間の子どもの大学の学費を出していたことを知り、父の思いを垣間見たような気がしました。
「父は、元交際相手との間の子どもに対しても、親としての責任を少しでも果たしかったんだなと思いました。とにかく、円満に相続手続きを済ませられて本当によかったです」
今回のケースのように、相続が発生した後、遺族が知らない隠し子の存在が発覚するケースは決して少なくありません。遺書が残されていない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があるので、まずは本人と連絡をとらなければなりません。
戸籍をたどって住民票上の最新の住所が判明しても、本人がその場所に住んでいない場合、個人で探すのは困難でしょう。そのような場合は、調査のプロに居場所の特定を依頼するというのも一つの手段となります。
若梅 秀孝
MJ リサーチ綜合探偵社
取締役

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