修学旅行先で相次ぐ「京都撤退」…外国人観光客の増加で各地の学校から悲鳴「日本人が日本のいい場所を巡れないなんて…」

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学校生活最大の思い出の一つである修学旅行。行先の定番といえば京都なのだが、外国人観光客の増加を理由に、避ける学校も増えつつあるという。それでは、もう一つの大定番である東京はどうなるのだろうか。
【画像】外国人観光客だらけで通行できない京都の道
京都の観光客の増加はデータを見ると顕著だ。公益社団法人・京都市観光協会の調査によると、2000年時点では4051万人だったのが、2023年時点では5028万人。この増加の大きな要因の一つが外国人観光客で、2000年時点で外国人宿泊客数は40万人だったのが、2023年時点では536万人と、13倍以上に膨れ上がっている。
一方で日本人宿泊客数は2000年時点で902万人、2023年時点でも939万人とそれほど大きな変化はない。さらに2024年の京都市内主要ホテルの月別客室稼働率を見ると、宿泊客のおよそ6割が外国人だった。
そして、問題になっている、修学旅行で京都に行った生徒数だが、2000年時点で99万人、2017年がピークの113万人。その後、コロナ禍で激減し、最新の2023年は81万人。修学旅行の生徒数の減少は少子化も関係しているとみられるが、減少傾向にあるのは確かだ。
修学旅行で京都を避ける学校は、その理由として混雑によって歴史ある名所を思うように周ることができないことをあげている。また物価の高騰やオーバーツーリズムによって、宿泊施設を探すことが困難になっていることも原因の一つであるようだ。
修学旅行では通常、1、2年前から新幹線や宿泊先を予約するのだが、この数年で一気に物価が上がった影響で、2年前に確定した値段で客を受け入れる宿泊先が赤字になっているケースもあるという。
SNSを見ると、修学旅行先が京都から変更になったという投稿が複数散見され、この先もますます修学旅行生数は減少していくとみられる。
〈え、ちょっと待って、修学旅行京都とかじゃなくて北陸になるぽ……むり〉
〈うちの上の子(中学)が去年修学旅行でしたが、京都の修学旅行は最後になるとの話でした。物価高とインバウンドのせいで、行き先を北陸に変更するとかって話でした〉
〈うちの子の学校、いままでずっと京都だった修学旅行先が別の場所になった。子ども達は怒ってたらしいけど…〉
〈日本人が日本のいい場所を巡れないなんておかしいよ〉
では、同じく観光客数が増加している東京を修学旅行先に選んでいる学校はどうなのだろうか。中部地方の現役小学校教諭に話を聞いた。
「旅行先を東京から変更するという案は、私の学校でも周りの学校でもあまり話は聞きませんね。まず修学旅行の目的として、政治や経済の中心である日本の首都・東京を見学し、肌で感じることがあげられるので、、東京は選択肢からなかなか外せないかと。
また、外国人観光客の存在自体はむしろプラスに考えられていて、日本には外国人から見て魅力ある観光地があることを、生徒が身をもって体感できる要因になります。電車や観光地で外国人から声を掛けられた際、外国語の学習が生かされることもあるかもしれません」(中部地方・小学校教諭、以下同)
ただ、旅行先は変えずとも時期をズラすという案は出ているという。全国的に5月と11月が小中学校の修学旅行のピークのため、バスの運転手の確保と新幹線の予約がかなり難しくなっているそうだ。
「修学旅行の予定は一度決めたら変更がほぼできないので、来年からすぐに変更とはいきませんが、2、3年後には大きく変わっている可能性はあるでしょうね。ちょうど、去年頃から法律でバス運転手の拘束時間の制限が厳しくなり、移動の利便性と荷物の運搬を兼ねて長時間活用していたバスが使いづらくなりました。
お土産を買うと帰りは荷物が多くなるので、これまでは行きは新幹線、帰りはバスというかたちをとっていましたが、11月は高速道路の集中工事の時期と被っていて渋滞にハマってしまい、帰校時刻が遅れることが多いです。これによって、運転手の拘束時間の問題で追加料金が発生するケースもあるため、時期の変更は検討されています」
一方で、インバウンドの影響でお土産の値段も高騰していることについては、修学旅行先の変更の理由にはならないという。というのも小学校の修学旅行では学校側がお小遣いの上限を決めていることが多く、その中でいかに賢く買いたい物を買うことができるか計画を立てることもまた、一つの学習になる面があるからだ。
「ただ、お土産を買う場所で、高価なものしかない取扱いのない所は避けるようにしていますね。例えば東京スカイツリーなんかはいい例で、観光地として知名度が高く、展望台にいきたい子どもも多いですが、いかんせんお土産代がバカにならない。それに比べて東京タワーは、『これぞ東京』的なお土産が比較的安く買えるし、展望台も悪くないので、そちらにしようとなったりしています」
これから先、日本にはますます外国人観光客が増えていき、彼らとどのように共生するのかが課題にもなっている。そういう意味では、子どものころからそうした問題を直に体験しておくという理由で、インバウンド需要が高い場所へ行くのはいい勉強になるかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部

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