院内で発生した殺人事件を隠蔽(いんぺい)していた「みちのく記念病院」(青森県八戸市)。ずさんな運営実態が徐々に明るみに出てきた中、元従業員から新たな証言を得た。
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【写真を見る】衝撃! ニセの死亡診断書の実物
みちのく記念病院は精神科をメインとしており、約410床のベッドを擁する。院長だった石山隆(61)と弟で医師の石山哲(60)が、犯人隠避の容疑で青森県警に逮捕されたのは2月14日のこと。
「石山兄弟は看護師に指示を出し、実際は殺害されていた男性の死亡診断書の死因欄を、〈肺炎〉と偽るなどした疑いが持たれています。殺人事件は2年前、アルコール依存症の入院患者が、同じ病室で過ごしていた認知症患者を暴行で死に至らしめたというもの。死亡診断書は、認知症で意思の疎通ができなかった高齢医師が作成した形になっているそうで、偽造されたことは明らかだといえます」(社会部記者)
兄弟の逮捕後、この高齢医師の名が記された死亡診断書が、200人分以上も発見されている。
「重度の精神疾患や認知症、終末期の患者を受け入れるみちのく記念病院は、地域医療にとって“最後の砦”。ここで亡くなる患者が大勢いることは仕方ない側面があると思いますが、死亡診断書の偽造がまかり通っていたとすれば、それはさすがに異常事態です」(同)
10年以上前、このトンデモナイ病院で働いていた看護師は、
「あそこは“患者にかける時間を極力少なくする”という方針が徹底されていた病院でした」
と言い、こう続ける。
「例えば、夜間は医師が不在で、当番の看護師と介護士が患者さんの対応にあたっていた。問題が起きた際はリーダー格の看護師が院長の隆先生にメールで指示を仰ぐルールになっていましたが、いつもレスポンスが遅く、返答は通り一遍の文面ばかり。やる気のない医師でしたね」
これでは当然、事故も起きる。
「当時、病院は介護用の見守りセンサーを導入していませんでした。そのため、目と耳が不自由な認知症のお婆さんを、常に私たちの注意が及ぶナースステーション内のベッドに、寝かせていたことがあったのです。でもある日、夜勤中の看護師と介護士が部屋のカギをかけないまま、外まで一緒にタバコを吸いに出てしまったそうです」(前出の看護師)
すると、老婆も無人になったナースステーションのドアを開け、フラフラと出歩いていったという。
「結果、院内の階段を転げ落ちて血塗れの状態で発見されたそうです。後日、私が見たら顔中が紫色に腫れ上がっていました」(同)
こんな病院のトップを務めてきた隆容疑者は、みとりのタイミングについて“強いこだわり”を持っていたという。
「隆先生は“亡くなる直前に私を呼ぶように”というお達しを出していました。できる限り、生前の患者さんと向き合いたくないからです。ある時、隆先生を呼んだタイミングが少し早かったとして、看護師さんが説教を受けたことがあった。およそ1時間も“なぜ、あなたはこんなに仕事ができないのか”などと嫌みを言われ続けたそうです。結局、説教している間に患者さんが亡くなったといいます」(前出の看護師)
そんな隆容疑者の印象は、
「とにかく暗いんです。無表情で感情の起伏もなく、何を考えているのか分からない人でした」(同)
今回の事件の一報を聞いて、このような感想を持ったという。
「私はすぐに辞めましたが、当時から危険な病院だと感じていました。“やっぱりおかしなことになったな”と思っています」(同)
底知れぬ闇は、どこまで明らかになるのだろうか。
「週刊新潮」2025年3月6日号 掲載