【清水 芽々】避妊を面倒くさがる彼と「できちゃった婚」のはてに…子どもを連れて無理心中を企てた27歳母親の懺悔

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2月に入って親子心中と思われる事件が相次いで報じられた。
1件目は埼玉県熊谷市。店舗の駐車場に停めてあった車の中で、30代の男性と息子ふたりが横たわっているのが発見され、5歳の息子が死亡している。車内には練炭が置かれていた。
その2日後、今度は名古屋市の市営住宅の敷地内で、2歳の男児と30代の女性が転落死している。このふたりは親子で、上層階から転落したとみられているが市営住宅の住民ではなかった。
このふたつの事件は、現場の状況などから無理心中の可能性が高いと考えられている。
こども家庭庁の調査によれば、この20年間で635人の子どもたちが親の身勝手な理由による「無理心中」で亡くなっているという。
「無理心中」は親による虐待と言えることから、犠牲になった子どもたちは「虐待死」としてカウントされ、この635人という数字は、同期間の児童虐待死者数(1655人)の約4割を占めているということになる。
親が子どもを道連れにして自殺を図る「無理心中」…そこには他人には窺い知れない事情があると思われるが、どんな背景があったときに、そのような凶行に走るのか―ー。
その一例として、実際に我が子を手にかけようとしてしまった母親の懺悔を聞いて欲しい。
栃木県在住の川辺莉子さん(仮名・27歳)は20歳の短大生時代に高校の同級生だった浩紀さん(仮名・27歳)と「できちゃった結婚」をし、3人の子宝に恵まれた。一方で、独身気分の抜けない浩紀さんは家庭を顧みず遊び回っていたという。
「浩紀は普段から『子どもができたから仕方なく結婚した』が口癖になっていて、家事や育児にもまったく興味を示さない父親でした。
『よだれがつく』と言って赤ん坊を抱くことも嫌がり、目の前でおむつを替えようものなら『汚ねえもん、見せるなよ!』とキレる始末。『汚されたくない』という理由で、自分の車には絶対に子どもたちを乗せませんでした。彼にとっては、子どもの存在自体が受け入れられなかったようです」
父親になりきれない男性は存在する。浩紀さんがそうだとすれば、なぜ3人も子どもを持ったのか?
「浩紀が避妊を面倒くさがったからです。女遊びを繰り返していた浩紀はたまにしか私に手を出さなかったのですが、私が嫌がっても『そう簡単にはデキないよ』と笑いながら言って押し通しました。家事と育児でヘトヘトになっている私としては『一刻も早く眠りたい』という気持ちもあって、つい言いなりになってしまって…そんなことを繰り返して3人の子どもを産んだことになります」
浩紀さんは、莉子さんが妊娠を告げるたびに喜ぶどころか、
「マジかよ!?お前ってデキやすい身体なんじゃねえの?」と揶揄する始末。子どもが生まれるごとに莉子さんの負担は増えるばかりだったという。
「生活費も入れてくれないので、仕方なくお互いの実家に援助してもらっていました。私の実家は黙ってお金を出してくれましたが、浩紀の実家は『カネもないのに子どもばっかりつくって』と冷たい目で見るんです。私だけの責任じゃないのに…」
莉子さんが3人目の子どもを出産したばかりの頃、夫婦に離婚話が持ち上がった。切り出したのは夫の方だ。
SNSで知り合ったという、5歳年下の女性と密かに浮気を続けていた浩紀さんは、「彼女と結婚することにしたから」と言って莉子さんに離婚を迫ったのだという。
「そんなバカな話が通用するわけないでしょ!」と怒りが収まらなかった莉子さんの訴えにより、双方の実家も交えて話し合うが、浩紀さんの意志は固く、義両親も「そもそも、まだ家庭を持つ気がなかった息子を、妊娠をたてに強引に結婚まで持ち込んで、子どもを3人も産んだアンタが悪い」と莉子さんを責めるありさまだったと莉子さんは話す。
「義両親からは『これ以上息子の人生を台無しにするな』と離婚に応じるように言われました。もともと結婚にも出産にも反対だった私の両親も、『アンタの境遇には同情するけど、親の言うことをきかなかったんだから自業自得。悪いけど面倒みきれない』と私を突き放しました」
子どもを3人抱えて行き場を失った莉子さん。
社会経験がないというハンデを持ちながら、必死に働いて子どもを育てていた彼女だったが、いわれのない辱めを受けたり、子どもに障がいが見つかるなど心労が重なり、子どもを連れて川へ飛び込もうとするまで追いつめられて行く――。
つづく後編記事『「あとからママも行くからね」…子どもを抱えて橋から身投げしようとした母親を救った、意外な“恩人”』では、絶望の淵に立たされた莉子さん母子のその後に迫ります。
【つづきを読む】「あとからママも行くからね」…子どもを抱えて橋から身投げしようとした母親を救った、意外な“恩人”

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