ワナで駆除のシカ、生きたままクマが捕食…エサ場と認識し人間が襲われるケースも

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野生のツキノワグマが、わなにかかった生きたシカを襲って捕食する様子を動画で撮影することに、東京農工大(東京都府中市)の小池伸介教授らの研究チームが初めて成功した。
シカの駆除のため各地でわなが設置されているが、人里近くに設けるとクマに襲われる懸念もあり、小池教授は「シカ向けのわなを設置する時には、住宅地から離すことが重要だ」と指摘している。(長谷部耕二)
生態学を専攻する小池教授によると、ツキノワグマが食べるのは主にドングリなどの木の実や植物で、生きた成獣のシカを捕食する様子が記録されるのは珍しいという。この研究成果をまとめた論文が学術誌「Ursus」オンライン版に掲載された。
小池教授らは昨年5月、栃木県日光市の山林で、動物の熱を感知して自動的に撮影できるカメラを設置。すると、未明にシカが山林に設置されたくくりわなにかかり、その約40分後に現れたクマが首元に襲いかかる様子を撮影していた。クマはその後、動かなくなったシカをカメラから離れた場所に移動させて食べたとみられ、研究チームが翌日、現場でほとんどの内臓がなくなったシカの死体を見つけた。
クマはシカの捕食後も、24時間ほどは現場近くにいたとみられるという。さらに、シカがわなにかかってからクマが短時間で現れていることから、小池教授は「クマが『ここがエサにありつける場所だ』と学習していたと考えられる。結果的に、人間がクマに新たなエサ場を提供した可能性がある」と指摘する。
シカなどによる森林や農地の食害が全国的に問題になっており、足にワイヤを巻き付ける仕組みのくくりわなが各地で設置されている。ただ、小池教授によると、わなを設置すればクマが周辺を訪れる可能性が高まり、シカ用のわなにクマがかかって仕掛けた人が襲われるケースも確認されているという。
小池教授は「クマとの遭遇を防ぐため、わなの位置を周辺住民らに周知することや、住宅の近くにわなを設置しないことが必要だ。クマがかかりにくいわなを使うことも重要だ」と強調する。

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