【スクープ】安倍晋三元首相の政治資金3700万円を甥・岸信千世議員が“実質的な無税相続”していた 「血縁を理由にした寄附は政治資金の私物化」との指摘

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国民には1円単位での細かい納税を課しながら、政治家には“特権の抜け道”が用意されている──自民党の派閥裏金問題はそうした構造が国民の怒りに火をつけ、今国会でも元安倍派事務局長の参考人招致問題が紛糾している。そして本誌・週刊ポストは裏金問題よりもさらに根深い、世襲政治家の特権をめぐる新事実を掴んだ。【前後編の前編】
【図解】岸信千世氏が安倍晋三元首相の政治資金を“無税相続” そのカラクリを徹底解剖
いま国民は実質賃金が上がらないうえ、度重なる増税で家計負担は重くなる一方だ。富裕層も相続税の課税強化や最高税率引き上げで相続のたびに資産を奪われ、どんな資産家でも「3代で財産を失う」と言われる。
だが国民の重税感を尻目に、世襲政治家たちは政治資金の“無税相続”という特権を享受し続けており、2024年12月に野党5党が共同提出した「政治資金世襲禁止法案」はいまだ審議が始まらない。
この「世襲政治家」として象徴的な人物がいる。
3人の総理を生んだ岸・安倍一族の4世議員、岸信千世氏(33)だ。父は岸信夫・元防衛相、安倍晋三・元首相は伯父という政界サラブレッドで、初当選からわずか1年半で石破内閣のデジタル大臣政務官兼内閣府政務官に抜擢されるなど出世街道をひた走っている。
この信千世氏は父から衆院山口2区の地盤・看板・カバン(資金)を継いだばかりか、亡くなった伯父の安倍氏からも約3700万円もの政治資金を受け取っていることが本誌の調べで判明した。
資金の流れはこうだ。
安倍氏の政治資金約4億円は6つの政治団体に遺された。その多くが元夫人の安倍昭恵氏が代表を継いだ「晋和会」に集められ、引き継がれた。
信千世氏に渡ったのはこのうち「東京政経研究会」の資金の一部。政治資金収支報告書によると、同研究会には安倍氏が亡くなった時点で約1億8700万円の資金が遺されていたが、昭恵氏の「晋和会」に1億円、安倍氏の後継者として旧山口4区の補選に出馬した吉田真次・代議士の資金管理団体に5000万円がそれぞれ寄附された。
残った資金は信千世氏が補選に当選した直後の2023年5月にまず2000万円が信千世氏の資金管理団体「誠信会」に寄附され、東京政経研究会が翌2024年4月に解散する際、残余金の約1714万円が全額、信千世氏の「誠信会」に寄附されたのだ。政治資金を監視してきた上脇博之・神戸学院大学教授が指摘する。
「これには実質的な相続と言えるにもかかわらず、相続税がかからないという問題があります。相続税は、『資産家が亡くなった時に、子供が何の努力もなく遺産を全部手にするのでは公平な世の中にならない。だから国が相続税を取り、国民に再分配する』という仕組み。そうした考え方を踏まえれば、世襲政治家だけが父や伯父の政治資金を無税で相続できるのはおかしいと言えます。
しかも、政治資金が安倍氏の後継者として同じ選挙区から出馬した吉田氏に寄附されたのはまだしも、選挙区が違う信千世氏への寄附は理屈が通らない。血縁を理由にした寄附ならまさに政治資金の私物化でしょう」
(後編に続く)
※週刊ポスト2025年3月14日号

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