医師の思い込みや注意不足で診断が間違っている懸念を看護師が感じても、半数は医師に伝えなかったとする調査結果を、順天堂大などの研究チームが発表した。
医師への遠慮が背景にあり、両者がコミュニケーションをとりやすい環境が必要だとしている。論文が国際科学誌に掲載された。
調査は2023年6~7月、インターネットを通じて実施、病院や診療所などに勤務する22~68歳の看護師430人が回答した。
調査から1か月以内に医師の診断に懸念や違和感を1回でも感じたことがある看護師は263人(61・2%)。このうち懸念を伝えなかったのは138人(52・5%)だった。理由(複数回答)では、「医師のプライドを傷つけてしまう」(21・1%)が最多となり、「伝えても無視される」(18・6%)、「診断は医師がするもの」(15・7%)が続いた。小規模な病院や診療所ほど、懸念を伝えにくい傾向があった。
チームの宮上泰樹・同大助教(総合診療学)によると、診断の間違いや遅れなどの「診断エラー」は、全診断の5~10%に上るとの報告がある。治療が結果的にうまくいったり、自然に治ったりすることがある一方で、病状の悪化などにつながる場合がある。
長尾能雅(よしまさ)・名古屋大教授(患者安全学)の話「看護師が診断に懸念を伝えにくい問題は以前から指摘されており、非常に重要なデータだ。診断を医師の聖域とせず、多職種の意見を取り入れることが大切だ」