「東京大学」志願者が“過去最少”なぜ? 中国から熱視線で「下見」も “専門的”大学選び多様化【Nスタ解説】

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きょうから国公立大学の2次試験が始まったということで、「多様化する大学選び」についてお伝えします。
【写真で見る】「東大はアジアで一番の大学」春節では中国の親子連れが東大キャンパスを下見
そんな中、今年の東大の志願者数は去年より約1000人減った8421人で、過去最少となりました。
齋藤慎太郎キャスター:東大の志願者数はなぜこれだけ減ったのでしょうか。
代々木ゼミナール教育情報センターの奥村直生主幹研究員は「東大の“1次選抜”(大学入学共通テスト)通過に必要な点数が上がった。点数が足りないと判断した人が、東大志願を諦めたのではないか」としています。
記述が多くなる2次試験の受験者数を絞り、より丁寧に答案を採点するために選抜基準を厳しくしたということです。
東京大学では25日、2次試験の前期日程が始まりました。受験生はどのような理由で東京大学を目指しているのでしょうか。
開門の時間を待つ東大の受験生は、最後まで参考書などに目を通します。
辺りには、応援のメッセージが。「努力は実る」…実らせるときが来ました。
25日から始まった国公立大学の2次試験。東大の受験生に志望した理由を聞くと…
東大の受験生「理学部の天文学科に興味があって、東大だとレベルが高い研究ができると思った」「僕は東大で野球部に入りたい。東大で神宮球場で野球をしたいという夢があるので、そのために東大を受けに来ました」「(Q.将来の夢は?)システムエンジニアになってAIを研究して、また新しい技術革新を起こしていく」
東大の2025年の志願者数は2024年の9432人より1000人ほど減った8421人で、国立大が法人化された2004年度以降で最少となりました。
東大の受験生「『やった』って思いました。(試験に)受かる確率が上がるかな」
現役の東大生(3年)「目指す人が減っているのは寂しい思いがある」
2024年に東大に入学したのは3126人で、女子学生の比率は20.6%にとどまっています。
東大にいま、熱い視線を送っているのが中国の若い世代です。
中国から「東京大学に入れたらラッキーだと思うので、もっと一生懸命勉強します」
実は、東大に通う外国人留学生の7割近くは中国から(2024年11月時点67.8%)。先日の「春節」の連休では、多くの中国の親子連れが東大キャンパスの下見に訪れていました。
中国から「東京大学はアジアで一番の大学だと思います」「いい大学でした。将来は医者になりたいです」
東大を含む国公立大学の2次試験。2025年は全国175の大学に、42万8500人が出願しています。
齋藤キャスター:25日に2次試験の前期日程が始まった東京大学は、2025年から授業料を値上げします。
学士課程などの授業料は現在53万5800円ですが、2025年4月からは約10万7000円値上げし、64万2960円になります。教育研究環境の充実や教育人材の拡充などが理由として挙げられるということです。
ホラン千秋キャスター:東京大学の変化には、どのような狙いがあるのでしょうか。
教育アドバイザー清水章弘さん:個人的には東大の人気が落ちているということはないと思います。
2次試験には記述試験もあるので、より丁寧に採点するため、1次選抜の合格者数を減らしたいという意図があるのではないでしょうか。
また、東大の試験に関わった教授に取材した際には「試験の採点にかかる教員の負担がすごく大きい」ということだったので、そういうことも背景にあるのではないかと思います。
南波雅俊キャスター:東大を目指す学生なども含めて指導しているかと思いますが、昔と変わったと感じる点はありますか。
教育アドバイザー清水さん:大学の選び方が変わってきていると思います。
全国の高校の進路指導を担当する先生に話を聞いてもそうですが、これまでの「偏差値の高い大学に浪人してでも入る」という雰囲気から現役志向になってきていたり、偏差値だけではない選び方が増えてきたりしている印象です。
意志を持って「大学に入って何をするか」というところから逆算して、志望校を選んでいる印象があります。
ホランキャスター:漠然と「やりたいことは決まっていないけど、有名な大学に行きたい」という学生も多かったように思いますが、変わってきてるそうですね。
元競泳日本代表松田丈志さん:最近、日本の水泳界では日本の高校からアメリカの大学に直接行くという選手が増えていて、その中でアメリカの大学事情を調べることがあります。
(日本の)大学入試は、それまでにやってきた勉強の実績などをみますが、アメリカなどは、これから何をしたいか、将来的にどうなりたいかという未来について、試験を通して聞くということです。
単純にその方が「未来志向でいいな」と思いましたし、日本も“行き先”を決めて選ぶという意味では少し変化してきてるのかなと思いました。
齋藤キャスター:一方で、少子化にもかかわらず、全国の大学の数は増えていて2024年は過去最多となりました。
【全国の大学数(文科省 学校基本調査より)】2004年度:709校2014年度:781校2024年度:813校(過去最多)
なぜ大学は増えているのでしょうか。
教育アドバイザーの清水さんによると「受験生のニーズに合わせ、専門的な分野を学べる大学が増えてきている」ということです。
大学選びで重視するポイントについて高校生に聞いたところ、“大学の知名度”はあまり重視しておらず、学べる内容に重きをおいているようです。
1位:学べる内容2位:取れる資格3位:学部名・学科名4位:自分の学力との相性5位:学校の所在地6位:学校の建物や設備7位:知名度が高い※マイナビ進学総合研究所より※全国の高校3年生3195人対象
齋藤キャスター:そうした中で、特色を前面に押し出す大学が増えてきています。
▼「iU情報経営イノベーション専門職大学」・2020年 東京・墨田区に開校・“就職率0%”を目標に起業家を育成するなどの教育・経営に必要な知識を学び、卒業までに全員が企業にチャレンジ
▼福井県立大学「恐竜学部」・2025年4月に開設・化石の発掘、地質調査など・一般選抜の倍率 前期:7.3倍 後期:27.3倍
ホランキャスター:定員割れする中、大学数が増え続ける現状をどうするかという課題もあると思いますが、学生に選んでもらうということを考えると、尖った学部がある大学がだんだん強くなっていくということもあるのでしょうか。
教育アドバイザー清水さん:普通は就職率が高い方が生徒を募集しやすいはずですが、“逆張り”で特色を持たせて、その代わり「起業したい人はたくさん来て」と特色を打ち出してるわけです。「恐竜学部」も同様かと思います。
小学校、中学校、高校でも学び方が「探究型」に変わりつつあり、自分の好きなもの・得意なものを見つけやすい環境にあるということも背景にあると思います。
「これを掘り下げたい」という思いを持って大学に入る人が増えているため、こういう(特色のある)大学のニーズが高まっているのではないかという印象です。
南波雅俊キャスター:AIなどについて専門的に学べる大学で学んだ人たちが、東京や世界で活躍する人材になっているという話を聞きました。
大学時代から専門的に学ぶというのは世界を見据えるという点や人材育成という点で考えてもすごく大きいように思います。
元競泳日本代表松田さん:日本はどうしても大学を出て、新卒で採用されてから研修して戦力に育てていく文化ですが、大学は知識や能力を身につけて卒業後に即戦力で働けるようにするための準備期間だと思いますので、目的を持って大学に行ってほしいと感じます。
==========<プロフィール>清水章弘さん教育アドバイザー東大在学中に“勉強のやり方”を教える塾起業学習法に関する著書多数2児の父36歳松田丈志さん元競泳日本代表五輪4大会出場4個のメダル獲得JOC理事宮崎県出身3児の父

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