2月12日、斎藤智華被告(33=逮捕時)の公判が東京地裁で開かれた。智華被告は夫の斎藤貴聡被告(32=同)とともに、フェラーリやランボルギーニなどの高級車でトラックを追跡し、『飛び石が跳ねて車が傷ついた』などと運転手に因縁をつけ免許証を撮影し、それをもとに不正に作成したクレジットカードで商品を購入し騙し取った詐欺罪に問われている。斎藤夫妻らによる被害総額は9500万円以上にのぼると見られている。
〈画像〉3500万円…斎藤夫妻の真っ白なフェラーリと智華被告。クレームをつけては金を要求していたという
斎藤智華被告は12月25日に開かれた初公判のときから起訴事実については認めたものの、詐欺に加担したのは『夫の暴力や脅しがあり断れなかった』と主張していた。社会部記者が語る。
「斎藤夫妻は一連の詐欺について、量刑上有利になるように、智華被告は夫・貴聡被告に強要され、『やむをえず行なった』と主張しているとみられます。しかし、検察側はあくまでも智華被告は自発的に犯行を行なったとみて公判を進めています」
2月12日、刑務官に連れられてグレーのスウェット上下という姿で入廷した智華被告は被告人席に座ると、開廷前から感極まった様子で涙を流し、鼻を赤くしていた。
続いて入廷してきたのは、黒いTシャツとグレーのスウェットパンツ姿の貴聡被告だった。
夫である貴聡被告は堂々とした足取りで証言台の前まで歩いていく。
刑務官が手錠を外す間、被告人席に座る智華被告に向かって『大丈夫だ』と言わんばかりに複数回うなずいてみせ、何かを話しかけていたので、見かねた裁判官が『話しかけないように』と注意する場面もあった。
そして、貴聡被告が宣誓書を読み上げ、証人尋問が始まった。
智華被告の弁護人が、共犯とはどのような共犯なのかと尋問をすると、貴聡被告は「一緒にやりましたが、私が半ば無理矢理、私が妻に強制的にやらせたというのが正しいので。妻は犯行に反対しておりました。
脅しても言うことをきかなければ思い切り蹴ったり、ぶん殴ったり。実家に火をつけてやる、と脅したこともあります。怪我をさせた時の診断書もあります」と証言を始めた。
弁護人に結婚生活を尋ねられると、「あまりにもケンカがひどくなりすぎて、妻が家を飛び出して別居したこともあります。私が妻を探し出して家に連れ戻したりしていました。詐欺とか犯罪が関わらないときはけっこう優しくしてて、詐欺が関わるときのみ暴力を振るったりしていました。仲直りのときは好きな物を買ってあげたりして仲直りしていました」と説明した。
その後、智華被告とともに、起訴されている被害金約300万円の詐欺事件の弁済関係を進めていることと、智華被告への気持ちを涙ながらに語った。
「妻を愛してるんですけど……。こういうことに関わってしまって…本当に申し訳なく……。ちゃんと真面目に働いてまた妻に認めてもらえるよう頑張りたいです。愛してます。世界一」
この間、こらえきれなくなった智華被告のすすり泣きが法廷に響いた。
出来の悪いドラマのワンシーンのようで、静粛な法廷にもどことなく呆然とした空気が漂う。
その空気を切り裂くように「あなたは被告人のこと愛してますとか言ってますけど、そもそもどういう出会いだったんですか?」と検察官の反対尋問が始まった。
貴聡被告は「バーで働いている時に出会いました」と答え、検察官はその後、結婚した経緯を確認したのち、「結婚して、なぜこんな犯罪を継続してやっていくことになるんですか?」と尋問を行なった。
貴聡被告の説明によると、もともと事業を始めようとして金融公庫にお金を借りようとしたが借りられず、犯行に手を染め広がっていったとのこと。
さらに検察官がクレジットカードを作成した経緯などを尋ねると「全部私です。100%、1000%、120%カードを作っているのは私です」と吐き捨てた。
検察官が一連の詐欺事件で、斎藤夫妻とともに起訴されていた共犯者の野村祐貴被告について「野村さんわかります?」と問うと、「わかりません」と即答し、検察官は苦笑しつつも「共犯者として起訴されていた野村さんはわかりますよね?」と尋ね直した。
そして、貴聡被告は怒ったような口調で「彼とは24時間一緒にいたわけではないのでこのような事実関係や詳しい事情は知らないはずです」と突っぱねていた。
検察官は野村被告や被害者の供述調書から、智華被告が怯えて従っていた様子や状況は一切なかったと告げるが、それに対し貴聡被告は「男性と女性の前で態度がまるっきり変わる人は多いので。私は女性に対して強く当たってしまうタイプなので。私は女性が相手だとついつい手が出るタイプ」と反論した。
さらに検察官の追及が続く。
智華被告と貴聡被告の口論の音声データやLINEのやり取りが、押収されたiPhoneに残されていた。
この点について検察官は「たしかに2人とも口調を荒らげて話していますが、智華被告人が一方的に言いくるめられてることはまったくない。LINEも怯えている様子はまったくない」と告げる。
「私も毎回、毎回暴力を振るうわけではなく、詐欺のときだけ暴力になってしまうわけです。その録音の内容は詐欺とは関係ないはずです。怯えてるかどうかは文章からじゃわからないでしょう」と鼻で笑った。
斎藤夫妻の様子をエレベーター内や店などの防犯カメラで確認しても仲よく話しているところしか映っていないと検察官が指摘すると「24時間ケンカしているわけではないので。外でもケンカしない。四六時中、毎日、365日起きてる間ずっとケンカしているわけではないので勘違いしないでほしい」と真っ向から否定する。
検察官が「では、愛してるとか言ってますが、なぜ詐欺のときだけ暴力を振るうんですか?」としごく真っ当な質問をすると、
「私が1人でやりたくなさすぎて。どうしても手伝わせたいという感情が芽生えてしまって我を忘れてしまった」などと答えた。
暴力を振るうことは100%自分が悪いと言う貴聡被告に、検察官も「それなら、なぜ離婚しないのか?」と問い詰めた。
すると「好きだから。殴ったりしても、好きだからという理由で男女関係続けたらダメなんですか?」としれっと返した。
最後に検察官は「あなたが大切な奥さんである智華被告をかばっているようにしか思われないことはわかりますよね?」と尋ねた。貴聡被告は「実際に私はあったことを」と話し始めるが、すぐに「以上です」と回答を打ち切った。
貴聡被告は尋問を終えて退廷しようとする際、智華被告に向かって手錠をはめられた左手を腰元で小さく振った。
証人尋問は斎藤夫婦の茶番劇が繰り広げられる結果となったわけだが、今後どのような判決が下されるのかに注目が集まる。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班