【佐藤 大輝】ひろゆきが燃えにくく、切れにくい「7万円の最強パーカー」をつくったワケ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

黄色いパーカーでお馴染みの「ひろゆき」が、能登に本社を構える丸井織物株式会社と共同で、「世界でほぼないし、聞いたことがない」とされるアラミド繊維100%を使った「最強の服」の販売を始めた。商品価格は約3~7万円。アラミド繊維は消防服や防弾チョッキなどに使われており、一言で表現するなら「防御力」に優れている。なぜ論破王と名高いひろゆき氏は、「いったい誰が買うんだよ」と論破されそうな衣類の販売を始めたのか。
ガスバーナーで炙る、ロウソクで燃やし続ける、ナイフで切りつける……。「最強の服」の防御力を実演証明しながら記者会見を行ったのは、株式会社made in Japan代表取締役社長の西村博之氏だ。国内の優れた技術を国内外に広めることを目的として設立された同社は、石川県能登で法人登記されている。資本構成はひろゆき氏が約60%。丸井織物株式会社が約35%。株式会社GUILD代表・高橋将一氏が約5%となっている。
勘のいい読者はお気づきかもしれないが、同社が納める法人税は、地方自治体に納付する「地方税」となるため能登に入る。今回私とマネー現代編集部が同社について取り上げたのは、開発した商品に「?」が多かったことが一番の理由だが、能登の復興について読者の方々に関心を持ち続けてほしい願いもあった。
さて、ひろゆき氏らは事業第一弾として、アラミド繊維100%を使用した「最強の服」の販売を開始した。アラミド繊維は防火性と防刃性に優れており、消防服や防弾チョッキ、軍用ヘルメットなどに利用されている。昨年12月に行なわれた商品発表の記者会見では、アラミド繊維は「500度くらいまで分解しない」という丸井織物に所属する繊維技術士のコメントもあった。
商品ラインナップは全部で4種類だ。半袖Tシャツ3万1900円。長袖Tシャツ3万7400円。パーカー6万400円。ジップアップパーカー7万1400円(すべて税込み)。販売はオンライン限定となっている。
実はひろゆき氏のトレードマーク、黄色いパーカーはアラミド繊維(ケブラー)で作られている。ひろゆき氏は「丈夫な繊維で作られてるから一生着られるんじゃね?」と考え、この服を5万円ほどで購入したが、メーカーの生産中止に伴い、一般の人が入手できる頑丈な服がなくなった。ならば自分で作ってしまおう。どうせならアラミド繊維100%にしよう(アラミド繊維配合ではなく、100%使用の衣類はおそらく世界に一つもない)と開発したのが、この度発売された「最強の服」というわけだ。
ただ、理由はそれだけではないらしい。共同開発者たちのコメントを聞く限り、どうにも本商品の開発の裏側には、我々が普段イメージする「ひろゆき」の印象とは180度異なる「情熱と愛情」が隠れているようだ。
「ひろゆきさんは日本のことが大好きで……、だけど日本の人には嫌われまくって、パリに追いやられた背景があると思うんですけど……。それでも日本の良さ、素晴らしさを、最終的には海外に広めていけるような会社になったらいいと聞いて、僕も日本の良さを伝えたいという想いで参画させていただきました」
(株式会社GUILD代表取締役・高橋将一氏)
「能登の震災が起きた時に、いち早く能登に来ていただいて、色々な支援をしていただいた……。我々は能登にある会社ですので、そこで関係性を深めていきました……。(ひろゆき氏は)支援などについては裏では熱く語ってくれていまして。そのとき感銘を受けて、何か一緒にやろうってことで始めました」
(丸井織物株式会社・代表取締役専務の宮本智行氏)
ひろゆき氏の意外な一面については、同社の「メイドインジャパン」という会社名からも類推できるかもしれない。会社名の由来について、ひろゆき氏は「日本製であることを分かりやすくしたかった」と説明。日本人が思っている以上に、日本製品は海外で評価されている。自分たちの活動を見て真似する人が出てきてほしいと「想い」を語った。
また現在の衣料品の多くは、人件費等の安い国で作られていること(日本の雇用が失われている)についても問題意識があるようだ。安くて大量に作ろうと思うと仕方のない部分もあるが、技術力のある日本人が高品質の商品を作り、そこでちゃんとした報酬を得られる構造にしたい。そのためにはメイドインジャパンで縛ることが重要で、誰かがやるべきだが、みんなあんまりやらないと私見を述べた。
とはいえ私たち庶民からすると、かなり高額な値段設定のようにも感じる。丸井織物の宮本氏は「14%のアラミド繊維で4~5万円するのが相場観。素材がめちゃくちゃ高い。無理して作ってる(製造については役員会議でも問題になった)」と説明しているが、そもそもの性能についてもイマイチ意図がわからない。今後は靴下など、ひろゆき氏は「丈夫な服シリーズ」の販売に意欲を示しているが……、いったいどのような顧客層をターゲットにしているのか?
同社の広報担当を務める高橋氏は、「世界には治安の悪い国がある」「日本の人たちが今以上に世界に対して発信し、行動していくためにも、安全性を重視した」と説明。日本国外で活動する際の衣類として想定していることを語った。
なるほどたしかに。筆者はこれまで世界37ヶ国を旅したが、エジプトでナイフを持った男に遭遇したことがある(幸い何も被害はなかった)。命はお金じゃ買えない。アラミド繊維100%の服、奮発して買いたくなってきた……。
* * *
北朝鮮への渡航経験があるなど、これまでに世界約60ヶ国を旅してきたひろゆき氏。アラミド繊維にこだわった商品開発からも、海外渡航におけるリスク管理の意識の高さがうかがえる。後編記事〈無敵のひろゆきが完敗したヤバい国、正露丸は最強…60か国を渡航して学んだ「危機回避能力」と「旅の醍醐味」〉では、ひろゆき氏本人に、日本人が海外渡航する上で「絶対に守るべきポイント」について話を聞いていく。
【つづきを読む】無敵のひろゆきが完敗したヤバい国、正露丸は最強…60か国を渡航して学んだ「危機回避能力」と「旅の醍醐味」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。