「もう連絡しないで」と言われたのに何度もバッタリ会って…32歳の砲丸投げ選手が「高嶺の花」とゴールインできたワケ

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人生いろいろ、家族もいろいろ、幸福の形もいろいろ。近年、「結婚がゴールではない」という声も大きくなりつつあるとはいえ、ゴールインした二人には幸せになってほしいと思うのが人情というものだろう。
そして、そのゴールに到達するまでには、十人十色のドラマがあるのは言うまでもない。目下、幸せに包まれているカップルにエールを送りつつ、出会いから現在までを根掘り葉掘り聞いてみる「令和の結婚事情レポート」。
今回登場していただくのは、昨年12月7日に入籍した、東京ヴェルディトライアスロンチームに所属する江田佳子(よしこ)さん(31)と、サトウ食品新潟アルビレックスランニングクラブの砲丸投げ選手、佐藤征平(まさひら)さん(32)。
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【写真をみる】征平さんには「高嶺の花」だったという妻・佳子さん 自然体な笑顔が愛らしい
連絡を断ったのに偶然の出会いが重なるなど、あらかじめ同じ道に進むべく運命付けられていたかのように佳き日を迎えた。
2012年春。前年に落とした単位を再履修することになった国士舘大学2年の征平さん。教室の大半を占める1年生の中に、佳子さんの姿を見つけた。
「かわいい子がいるな」
一目ぼれであった。再履修はけがの功名と思ったが、「自分には高嶺の花」と思い、声もかけずに諦めた。
佳子さんは当時水泳部。陸上部の征平さんの思いを知る由もない。16年の卒業後、トライアスロンを始め、体育学部の教務助手として水泳と陸上の授業を担当し、大学に残っていた。
ある日の防災訓練で、誘導係の佳子さんの方へフルフェイスヘルメット姿の原付バイクがやってきた。誘導すべき方向と反対側へバイクを逃がしてしまう。
「フルフェイス姿がちょっと怖かったんです」
訓練を知らずに来た征平さんだったが、彼女に制止されようとした際「アッ、あの子だ!」。訓練終了後、陸上競技場に来た彼女と再会し、「昔、一目ぼれしたんだ。連絡先教えてくれ」と、ド直球で申し込んだ。
佳子さんはこの時初めて彼を認識。「え?」と思ったが、怖いイメージを引きずったのか「はい」とLINEを交換。ただ、彼は連絡先をゲットしたことに満足し、特段、連絡を寄越すこともなかったという。
17年3月の陸上部の追い出しコンパに、ともに参加。もともと陸上部に知り合いの少ない佳子さんは、顔見知りの征平さんにビールを注ぎに行き、初めてじっくり会話。その後、征平さんは積極的に佳子さんを食事に誘うように。そのたびに「とりあえず付き合おう」とアプローチした。
だが佳子さんは、競技者としての心の持ちようを話してくれる彼を「競技者として尊敬する人」と捉え、彼の好意を拒みはせずとも、交際の打診には「そういう目で見てない」とつれない。
東京ヴェルディに所属後の19年初頭、佳子さんに足の疲労骨折が判明。「恋愛している場合じゃない」と考え、征平さんに「もう連絡しないで」と伝えた。
ところが偶然は恐ろしい。その後、何度もばったりと出会う。偶然が続くうち、佳子さんは「尊敬できる人と一緒にいることで成長できるかも」と思い始め、彼を意識するようになる。
砲丸投げの練習をする征平さんの姿を見守るうちに思いがこみ上げ、初めて自分から連絡をした。
「ご飯に行きませんか」
連絡しないでと言った手前、「見向きもされないかも」と覚悟したが、すぐにOKの返事が来た。6月9日、征平さんが自宅に彼女を招き、料理を振る舞った。佳子さんは自身の思いをしたためた手紙を持参していたが、先に征平さんが「付き合おう」と告げ、この日から交際開始。佳子さんは後から手紙を渡した。
とはいえアスリート同士。互いの日程をすり合わせての旅行など至難の業で、年末に岩手県の大船渡温泉へ行き、疲れを癒やした程度だ。忙しさの合間を縫って昨年12月7日、征平さんの地元、岩手県陸前高田市で入籍した。「競技とは関係なく、ユニフォームやシューズを持って行かずに海外旅行するのが夢」と二人は笑う。
18、19年に砲丸投げで国体を連覇した征平さんに続き、佳子さんは22、23年にトライアスロンで国体連覇。今は28年ロス五輪を目指す。
将来生まれてくる子どもには「スポーツをやらなくてもいい。どんな子に育つか楽しみ」というが、新たな国スポの優勝賞状を携えてくる日も期待できそうだ。
「週刊新潮」2025年2月6日号 掲載

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