「LINEにすぐ返信しない」Z世代と付き合うコツ

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不安定な時代を生きてきたZ世代は、社会情勢の変化の影響を受け、不穏な時代の落とし子として身を守るすべを身につけて成長してきました(写真:miyuki ogura/PIXTA)
こんにちは。「メンタルアップマネージャ」の大野萌子です。
2月に入り、早いところでは企業の内定者研修が始まります。Z世代と呼ばれる彼らと信頼関係を築き、特性を伸ばしていくためにはどうすればよいのかと試行錯誤している現場も少なくないと思います。今回は、受け入れ側の心がけと姿勢を確立するために、Z世代の特徴を『できる上司のZ世代をモンスターにしない言葉』から、一部抜粋、再編集してお伝えします。
ミレニアル世代の頃に一気に普及したデジタルツールは、Z世代ではもう当たり前の社会基盤になっています。そんな彼らは生まれた頃から、携帯どころかスマートフォンを手にして、動画を子守歌のようにして大きくなります。
呼吸するように情報社会の恩恵を手にして、情報は人からでなく、テレビや新聞、雑誌などの旧来のメディアでもなく、インターネット上から得ているのも特徴です。
社会に出てからパソコンを手にした上司世代は、ワードやエクセルや、パワーポイントなどのソフトが身近ですが、Z世代はスマホやタブレット操作が中心で、むしろパソコンは不得手だったりします。
しかし、なんといっても彼らがよりどころにし、常に欠かさないのが情報の「検索」です。
食事にしろ、買い物にしろ、ネット検索から得た基本情報を把握してからでないと動くことができません。飲食店に行くときも、場所だけではなくメニューや金額、さらに人の口コミ情報までおさえてから出かけるのが定番です。
上の世代が「欲望を満たす」ために各種メディアを使い、「人と違うこと」をアピールしようとするならば、Z世代はあらかじめ不安要素をつぶし、「安心を得るためにググる(検索する)」ことを繰り返し、SNSなどで「人の共感を集める」ことに苦心しているのです。
あふれる情報の渦の中で必要な情報を得ようとすると、コスパ(コストパフォーマンス)、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視するのも無理のないことでしょう。
昨今は、映画やドラマ、音楽などエンタメ分野を中心に、サブスクリプション(一定期間の定額サービス)が当たり前になっていますが、膨大なコンテンツの中で効率よく情報を把握し、仲間内の話題についていくために倍速でコンテンツを視聴するのも必要に迫られてのものなのかもしれません。
均質性の高い日本社会において、Z世代は公平さと同時に、個性を尊重することを教え込まれてきました。「多様性」はこれからの価値観として受け入れながらも、現実の社会ではこれまでの社会通念や慣習から男らしさ、女らしさなどといった決めつけが根強く残っています。彼らは空気を読むことに長けているため、小さな差別も敏感に察知してしまいます。
だからこそ、「女の子だから野球をやっちゃいけない」、「男の子だから刺繍が趣味なんておかしい」といった風潮には抵抗や引っかかりを感じます。
例えば、理数系は男の子の科目という意識がまかり通っていることに対し、「女の子なのに算数ができてすごいね」などと言われると、(それはいけないことなのだ)とすり込まれてしまい、算数が得意だったはずの女の子が、だんだんできなくなっていってしまうこともあります。
また、規制や締め付けは嫌いながらも、不安定な時代を生きてきたためか、強い安定志向があるのも彼らの特徴です。
地域や経済状況によりますが、上の世代に比べると、高価なブランド品や海外旅行など、これまでなら憧れの対象だった贅沢品を望むことがありません。
それは我慢しているわけではなく、不景気とはいっても、一定の豊かさを享受してきたためなのか、あるいはバブル崩壊後の社会に慣れてしまったということなのか、浮き沈みの激しい贅沢な暮らしよりも、地に足のついた安定した暮らしが続くことをよしとします。
当然、多くの物を所有することを望まず、さらに人とシェアすることにも抵抗がなく、必要最小限の物で暮らす「ミニマリスト」という生き方を追求する人もいます。
ただし、安定を望む気持ちには、「失敗したくない」「損をしたくない」という気持ちが垣間見えます。
組織やグループの中で空気を読み合い、「悪目立ちしたくない」という思いから、基本的に人を出し抜いたり、スタンドプレーをすることもありません。
昨今、組織やグループで情報共有をする際に、メンバー間の一斉メールでなく、LINEなどの通信アプリでトーク画面を共有する場合がありますが、友達同士のグループであっても、誰かの意見に最初のコメントをアップすることを嫌がります。
それというのも、現代はSNSなどのコメントなど、ちょっとしたことで批判されたり、“炎上”することがあります。何気なく送ったコメントに人がどういう反応するのがわからない段階で、安易に口火を切ることを恐れ、別の誰かが回答したものを参考にして、無難に自分のコメントを書くことを選びます。配慮に配慮を重ね、波風を起こさず通り過ぎたいという思いが透けて見えます。
それは従来の日本的な前例主義とは少し異なり、何かのきっかけで批判を集めたり、いじめの対象になってしまうことがある昨今では、とにかく失敗したくないという保身からのものでしょう。
彼らの現状を見て行くと、今はとても生きづらい世の中にも思えます。職場で上司世代が「若者らしい自由な意見や提案を言ってほしい」といくら思っても、なかなか意見が出てこなかったり、会話が成り立たなかったりするのも、彼らが何も考えていないわけではなく、Z世代なりの処世術ともいえます。
「親ガチャ」という言葉をご存じでしょうか。
「ガチャ」とは、小型の自動販売機(カプセルトイ)でハンドルをガチャガチャと回す音から来ていて、中から何が出てくるか、自分では選べないのが特徴です。
そこから、自分では選べないにもかかわらず、それによって今後が左右されてしまう、つまりはずれくじを引いたような状況に陥ることを指し、親から不利益を被ることを「親ガチャ」などといいます。
若い彼らは安定を望む性質もあり、親の影響を強く受けます。そのため親の考えに偏りがあったりすると、彼らもそれに引っ張られてしまいます。
かつては仕事を選ぶ際に、家業として親の職業を継ぐことも多いことでした。以前は反発して、親の跡なんて継ぎたくないというケースも多くありましたが、安定志向ゆえか、親の職業に親和性のあるものを選ぶことが多くあるようです。
実際、家業を継ぐことは、目の前にロールモデルがいるわけですし、自然と選択肢に入ってくるものですし、あえて親元を飛び出して自由に生きるより、エネルギーが少なくて済み、彼らにとって効率的に映るのかもしれません。
就職先選びとなったときも、親の影響は強く表れます。
核家族化や少子化の影響もあるのか、内定辞退の理由に、「親からダメだと言われた」という場合も多いようです。
そのため、会社説明会に親同伴をよしとする企業があったり、会社の知名度が低いと「聞いたことないからダメ」だと親から言われてしまうことがあるために、企業側もただ名前を連呼するCM戦略をとるケースも増えています。
企業側は人手不足の昨今、よい人材に入社してもらいたい。少子化が進み、こまやかに手や目をかけられて育ったZ世代は親との距離が近く、中には目立った反抗期がなかったという場合もあるほどです。
そうした背景からか、面接などで「尊敬する人は誰か」と問われたときに「親」だと答える若者が増えているようです。
ただし、本心からそう思っている場合と、就活にも傾向と対策が重視される昨今、キャリアコンサルタントなどから「尊敬する人を問われたら、親だと答えると身の丈にあった感覚を持ち、身近な人をリスペクトできるとみなされて印象がいい」とアドバイスされている場合があります。
上司世代からは、「親を尊敬していると聞くと、視野が狭いというか、物足りない思いがします。小さくまとまってほしくない」という意見もあります。
また、親は親で、「こういうふうに頑張ってほしい」「ここを目指してほしい」という展望や思いがあり、それを我が子に託すわけですが、当の本人がどこまで自分の考えをもっていて、それを貫こうと思っているのか、そこには具体的なビジョンがあるのか、それは本人次第。まわりはそれを引き出すのが精一杯だと言うほかはありません。
そんな彼らに対して、どう対応したらいいのでしょうか。

いくら社会人になりたてのZ世代といっても、相手を変えることはできません。具体的なビジョンについて、言葉を尽くして話し合うことしかありません。
彼らはこの不安定な時代の中で、なるべくしてそのパーソナリティを育んできたわけです。押さえておきたいのは、彼らは決して自分勝手に生きることを望んでいるわけではないのです。
不安定な時代を生きてきた彼らは、社会情勢の変化の影響を受け、不穏な時代の落とし子として身を守るすべを身につけて成長してきたわけですから、闇雲に彼らを敵視したり、言い聞かせようとするのではなく、双方が歩み寄って理解することが必要です。あきらめずに実践し続けてほしいと思います。
(大野 萌子 : 日本メンタルアップ支援機構 代表理事)

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