【なぜ】埼玉・八潮市下水管点検「5年以内再検査の“B判定”」で陥没…専門家「判定を見直す必要がある」全国の下水管点検要請へ

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埼玉・八潮市で道路が陥没し、転落したトラックの男性運転手が行方不明になっている事故。2月3日で発生から7日目となりましたが、依然、救助は難航しています。
救出活動を阻むのは、陥没した穴の内部にたまった水。元東京消防庁・特別救助隊員の田中章氏は、水によって周囲の地盤が緩み、崩落の危険があることから、二次災害につながる可能性もあるといいます。
元東京消防庁・特別救助隊 田中章氏:(救助活動は)まず排水をしていかなくてはいけないと思います。排水作業と噴き出している水が何なのかという原因を突き止めて、その水を止めると。
今回の陥没事故を受け、国土交通省は、東京や大阪など全国7つの自治体に対し下水道管の緊急点検を行うよう要請しました。
下水道管に起因する道路陥没は、2022年度に約2600件発生しており、水インフラに詳しい「グローバルウォータ・ジャパン」代表の吉村和就氏によると、そこには日本の抱える、ヒト「下水道部門の職員数の減少」、モノ「下水道管の寿命がどんどん減っている(※標準的な耐用年数とされる50年)」、カネ「人口減少による使用料収入の減少」の、 “3つの減”が関係しているといいます。
2015年以降、下水道は5年に一度の点検が義務化されており、その点検による判定で、「補修する」「しない」が決まってきます。今回の埼玉県八潮市の現場は、骨材が露出している状態の「B判定」で、「5年以内に再調査を行う」という状況でした。
しかし、吉村氏は「すぐに対応が必要」とされているA判定が「鉄骨が露出している状態」である点に触れ、B判定でもコンクリート管の厚さを点検していないため、どれくらいの腐食具合かわからず、鉄筋の露出まですれすれだった可能性があると指摘します。
グローバルウォータ・ジャパン 吉村和就代表:下水道の配管、A・B・C判定をもう一度見直す必要があるのではないかと思っています。特にB判定の時に、骨材が見える、その骨材の位置が表面なのかあるいは鉄筋のすぐそばの骨材なのか、厚さ・深さの測定が全くされていないと。なぜならば目視で単なる骨材が見えましたと「B判定」になっていると。5年に1度というインターバルも見直す必要があると思います。
――厚みを確かめる細かな検査はしない?今まではあくまでも目視での検査ですから。(2012年の)笹子トンネルで崩落事故があった後に、ハンマーでたたいて本当にちゃんとくっついているかどうかを調べる、打音検査といいますが、本来はハンマーでコツコツたたいて骨材までどのくらいあるか、あるいはどのくらい肉が減っているか、これを調べる必要があるわけですが、当然のことながらコストがかかるわけですね。
――下水管の中で一番劣化しやすい場所はどこですか?水の流れが止まるところ、例えば今回のようにカーブになっているところですね、ここに汚泥がたまるんです。そうすると、汚泥が腐食して硫化水素が出て硫酸になってアルカリ性のコンクリートを溶かすと。ですから、汚泥がたまるところは重点的に検査をしなくてはいけないと。
――現在の基準のA判定からB判定の間をもうけるべきでは?その通りです、これは今から10年前に決められた基準なんです。これから下水道配管は老朽化に向かうということで、国土交通省の下水道部が出したのがこの判定です。現在ですと、ドローンや自走式のカメラ、すべて超音波を当てて壁の厚さを測る近代的な検査方法もありますので、そのようなものをB判定の時にちゃんと使うということが必要ではないかなと思います。
検査で補修となった場合でも、課題があります。下水管の内側に樹脂材をまいて一回り小さい管を形成し補修する「SPR工法」は、50年間利用可能になり、下水を止めずに補修できることから、日本が世界に誇る技術です。吉村氏によると、下水管を取り換えるコストが100とすると、SPR工法は10~20で行うことができるといいますが、初期コストが高額でなかなか進みません。
吉村氏は、下水道の維持管理をしっかり行っていくためには、「2065年までに2015年の料金の約2倍にする必要がある」と話します。しかし、現在の下水道料金の増加具合では、この2倍に達するまでに150年ほどかかってしまうのです。
グローバルウォータ・ジャパン 吉村和就代表:去年4月から、水道行政がすべて国土交通省に移りました。国交省がこれから日本の水道下水道をすべて一括して管轄することになったわけです。ですから、当然値上げの方は、例えば水道料金は今1350の自治体の約半分が赤字です。それを埋め合わせてさらに老朽化対策するには、2~3倍水道料金を上げなくてはいけない。上水道、下水道も倍になるのではないかと試算が出ております。
橋下徹弁護士:これは上下水道管だけでなく、道路もトンネルも橋も、日本のありとあらゆるインフラについて、維持していくということが本当にできるのかと言えば、政治業界の世界では全国津々浦々のインフラを維持していくことは無理だとみんな分かっているんです。そこまでお金はかけられないと。ではどうするのかと言えば、きちっと整備できるところに、そういうインフラが必要な人はそこに集まってきてくださいと政治が大号令をかけなくてはいけないんですが、ただ現実は、今住んでいるところのインフラをやってくれと。でもこれは、できないということが分かっているのなら、どこかで大号令をかけなくてはいけないんですが、政治家が批判を恐れて言えないと…。
グローバルウォータ・ジャパン 吉村和就代表:インフラを守るためにどうしたらいいかというと、ひとつは料金の値上げですね。これは市民のコンセンサスを得て値上げをする、それからもうひとつは国がやっている国土強靱化の予算を地下にある水インフラ、上下水道に投資をすると。国費の投入も必要かと思います。(めざまし8 2月3日放送)

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