「東大文一・法学部が日本最難関」の時代は完全終了…「文二の躍進」「超エリート学部設立」で東大がもうすぐ「まったく違う大学」に変わる

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大学を受けるなら、どうせだったら法学部か医学部をめざしなさい……。平成期までに大学受験を終えた世代には、周りの大人からこんなふうに言われた人が少なくないだろう。
ところが今、医学部はともかく「文系の最高峰は法学部」という時代は、完全に終わった。国内最難関である東京大学でも、その傾向は顕著だ。
「文一(文科一類)と法学部は、もはや東大文系の『象徴』ではなくなりました。それは東大受験生にも、『文一は進路の幅が狭く、コスパが悪い』と思われるようになったから。
かつてなら文一に入っていたような最優秀層が、ここ数年は文二(文科二類)を選び、商社や金融、GAFAなどの企業に入りやすい経済系・情報系の学部学科に進学する傾向が強まっています」
こう語るのは、教育ジャーナリストでルートマップマガジン社取締役の西田浩史氏である。
東大文系入試の出願先は、文科一類(法学系)、文科二類(経済学系)、文科三類(文学系)の3つの科類に分かれている。
15年ほど前までは、最難関の文一と最も易しい文三では、合格者の最低点が20点近く離れていた。それがだんだんと縮まってゆき、2021年には文一が最下位に。昨年’24年の入試でも、文二が最高得点だった。
「志願倍率を見ても、昨年は理三(理科三類、医学系)が4・29倍と全科類でも際立って高く、競争が激しい状態が続いている一方、文一は過去20年で最低の2・9倍まで下がりました」(大学の内情を取材するジャーナリストの田中圭太郎氏)
財務省をはじめとする中央省庁キャリア官僚は、「激務薄給」といわれるうえ、庶民から目のかたきにされる。弁護士は頭数が増えたために、四半世紀前と比べて収入が半減し、食えないケースも珍しくない。文系エリートの「お決まりコース」が、崩壊したということだ。
そこへきて、東大の「大転換」を物語る変化も起きている。2027年から新学部「カレッジ・オブ・デザイン」を設けるのである。
秋入学・5年制で定員は100名前後。公式発表によると、〈文理融合の学際的な知識に基づく、従来とは異なる「デザイン」教育〉〈民間企業の実務家等の指導〉〈授業は英語で実施〉〈日本国内を含め世界から学生を受入〉〈従来の大学入試にとらわれない新しい選抜方法〉などが特徴だという。
田中氏が指摘する。
「法人化から20年あまりが経ち、国立大学は資金繰りに頭を悩ませていて、東大も例外ではありません。そこで近年、寄付金などを投資運用したり、研究の応用で稼ぐベンチャー企業を支援したりしています。
しかし一方で、起業に関心がある優秀な層や、卒業後に寄付をしてくれそうな富裕層の子息は、ダイレクトに海外の大学へ進むケースも増えている。新学部設立は、そうした超トップ層の受験生を国内に繋ぎとめる狙いがあるのだと思われます」
東大では2025年度の入学者から、授業料が年間11万円近く値上げされることも物議を醸した。「入試の点さえよければ、カネがなくても、無名の公立高校出身者でも入れる」という古きよき東大像は、完全に過去のものになるのかもしれない。
後編記事【「早稲田の政経」が令和に大復活…慶應を抜き去り、いまや「京大レベル」に格が上がった「私大文系ランキング」激変の裏側】へ続く。
「週刊現代」2025年2月1・8日号より
「早稲田の政経」が令和に大復活…慶應を抜き去り、いまや「京大レベル」に格が上がった「私大文系ランキング」激変の裏側

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