【急増】美容医療トラブルの背景に“直美”の存在…術後に鼻呼吸できなくなるケースも ベテラン医師による教育スキーム“JIKIDEN”とは

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今トラブルの相談が急増しているという美容医療。厚生労働省によると、美容医療の施術数は2020年のコロナ禍で一度減少したが、現在も年々増加している。国民生活センターに寄せられた美容医療を巡るトラブルに関する相談は、2023年には2018年(1741件)の5倍以上の5507件にも上っている。ビスポーククリニックの理事長は、相次ぐ美容トラブルの背景に“直美”の増加があると指摘。その対策として、ベテラン医師による教育スキーム“JIKIDEN”の取り組みを始めたと話す。
トラブルの相談が急増しているという美容医療。
こちらの写真のケースでは、鼻に凸凹とした傷跡が残り、また、別のケースでは鼻の穴が細くなり、鼻呼吸ができなくなったというケースもあったという。
実際に美容医療の施術後に合併症が発生した女性は、「ショックとパニックと、とんでもないものが(顔に)入ってしまったなという気持ち。しこりとかを見てしまうとこう苦しくなってしまうというか…。その後、なかなか頭から離れない」と話す。
この女性は目の下のクマなどに悩み、全国展開する聖心美容クリニックで、肌を若返らせるという注射の施術を2019年までに2回受けた。しかし、治療後に異変が起きた。
施術後に合併症が発生した女性:治療を受けてから1年後に、こめかみにしこりがあるのに気がついた。その後、FGFというものが添加されていたことを知ったんです。
女性は治療には自分の血液の成分が使われると認識していたが、実際には傷薬として使われるbFGFという医薬品が一緒に顔に注入されていた。
この医薬品は注射で使うことが推奨されておらず、しこりができるリスクがあるものだった。
施術後に合併症が発生した女性:医師が説明をしっかりしない状態で、施術をしていたことも許せない。
女性は裁判を起こし、裁判所は2024年12月、クリニック側がしこりなどができるリスクについて、説明義務を怠ったと認定し、施術費や治療費を支払う決定を出した。
取材に対し、これまでのところ、聖心美容クリニック側から回答はない。
美容医療の施術数の推移についてのデータがある。
厚生労働省によると、美容医療の施術数は2020年のコロナ禍で一度減少したが、現在も年々増加している。
また、国民生活センターに寄せられた美容医療をめぐるトラブルに関する相談は、2018年度に1741件、2019年度に1862年、2020年度に2053件、2021年度に2602件、2022年度に3462件、2023年度には5507件にも上っている。
こうした現状を受け、厚労省は検討会を開催した。その報告書には、医師の経験不足に起因すると考えられる健康被害について、取り上げられている。
ビスポーククリニック・室孝明理事長:トラブルはやっぱり急激に増えている印象はあります。
こう指摘するのは、美容外科医として22年の経験を持つ室医師。さらに指摘したのが、医師の経験不足だった。
ビスポーククリニック・室孝明理事長:今、SNSとかを見るとお分かりだと思いますけども、若い先生方の発信によって、患者さんはそれを見て(施術を受けに)いく。若さっていうのは、言い方を変えると(医師の)経験値だったりとか。
経験不足の背景にあるのが“直美”の増加だ。
“直美”とは医学部を卒業し、2年間の臨床研修を終えた医師が、すぐに高収入とされる美容医療の道に進むこと。
美容医療に携わる医師らが所属する日本美容外科学会(JSAS)によると、2024年4月時点での新規入会者のうち3人に1人が「直美」だという。
ビスポーククリニック・室孝明理事長:医師に必要な倫理観が十分育ちきっていない状態で美容医療に入ってしまって、例えば、トラブルの対応。合併症が起こった時にどうやって治せばいいのかとか、患者さんと信頼関係を結ぶためにどういうふうにするべきなのかとか。
こうした現状を受け、室医師はある取り組みを始めた。
ビスポーククリニック・室孝明理事長:「JIKIDEN(直伝)」というローマ字で直伝なんですけど、直接教える・直接伝えるということに主眼を置いた教育サービス。
「JIKIDEN(直伝)」とは、クリニックの垣根を越えて、ベテラン医師が若手医師に具体的な手術方法から、その前段階のカウンセリング時の注意点などを細かく指導する取り組み。
このクリニックでは、夏からの本格的な指導を前にリハーサルを開始した。指導を通じて室医師が持ち続けていたのは、ある危機感だ。
ビスポーククリニック・室孝明理事長:美容医療に限らず、医療とは知識・経験・技術と、それ以外にも人柄・倫理観…。色々なものが必要になってくる。皆さん同じように思っているけど、どうしていいか分からない。なんとかせんとこの業界ダメになっちゃう。
こういった現状に厚労省も対策に乗り出した。
「医師の経験不足」への対応策として、学会でガイドラインを策定し、医師が経験に応じた治療を行うことや、研修制度について乗り込むべきとしている。
さらに問題が起きた時に患者が相談できる連絡先があるか、などを年に1度、クリニックから報告するように求め、都道府県が必要な情報を公表できるようにしていくとしている。
施術後に合併症が発生した女性:もちろん、色々な部分で規制はしてほしいなと思いますけど、先生の言うことは正しいものだ、まさか患者にとって害があるようなことではない、と多くの人は思っている。まずは美容外科医ですけど、医師であるということを自覚してほしいと思いますね。(「イット!」 1月23日放送)

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