「共通テスト国語」東大生から”疑問噴出”の中身

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2025年度共通テストの会場の様子(写真:時事)
2025年1月18日・19日に、大学入学共通テストが行われました。今回の共通テストは、新しい学習指導要領に対応した最初の試験であり、必修科目に「情報機廚追加されたほか、地歴公民の再編、国語に大問が追加など、従来から大きな変更点がありました。
僕たちカルペ・ディエムでも、現役東大生や東大卒など10人以上がこの週末にオフィスに集まって今年の共通テストを解き、「この問題、面白い!」「この科目、今年はこんな問題を出したんだ!」と大いに盛り上がりました。
基本的に、共通テストの問題はどれも良問で、東大生の知的好奇心が満たされるようなものが多いのですが、今年はとある科目の問題に関して、「これは共通テストの問題として、適切ではないのでは……」と多くの東大生の意見が一致する問題がありました。
それは、国語の問題の第3問です。従来は出題されていなかった、新傾向の問題でした。今回はこの問題について、みなさんに共有したいと思います。
まず、今回の新傾向問題は、1つのテーマについて、複数の資料をもとに考察するというものでした。評論文や小説の問題とは異なり、グラフや表などを見て、それを用いて問題を解いていく、というものです。
【写真を見る】これって国語の試験?東大生から疑問続々…「共通テスト国語の第3問」試験の中身
今回は「外来語に関する意識の調査」というグラフを使った問題が出題され、「インフォームドコンセント」「シミュレーション」「リハビリテーション」といった言葉に対して、外来語のまま使ったほうがいいか・言い換えたほうがいいか、それぞれの割合がどれくらいかが示されていました。
問1では、Uさんは、「インフォームドコンセント」という語に注目する理由を明確にするため、【文章】の1段落のXに文を書き加えることにした。書き加える文として最も適切なものを、次の 銑い里Δ舛ら一つ選べ。
とあり、4つの選択肢が提示されました。
この4つの中に、
「インフォームドコンセントについては、外来語の言い換えを肯定的に捉える人の割合が他の語より多い」という選択肢がありました。
さて、みなさんに質問です。この選択肢は正しく、Xに書き加える文章として適切でしょうか?もしくは間違いでしょうか。
併せてグラフでは以下の情報が示されています。これらの情報も基に考えてみましょう。
「インフォームドコンセント」という言葉について、「言い換えないで外来語のままで使ったほうがよいと思うか」について、「そう思う」人が15.2%、「そうは思わない」人が54.7%。「シミュレーション」や「リハビリテーション」よりも、「そう思う」人の割合が低い
ヒントも1つ。「言い換えないで外来語のままで使ったほうがよいと思うか」について、「そう思う」と答える人の割合が他の語よりも少なかった、と考えてみましょう。
……正解は、「正しい」です。
「言い換えないほうがいい」と答える人の割合が少ない→「言い換えたほうがいい」という人が多い→「言い換え」を肯定的に捉える人の割合が多いと言える
ということですね。
別に解けない問題ではないと思いますが、どうでしょうか?単純に、「面倒くさい」という感想を抱きませんか?国語の授業を真面目に聞いていれば解ける問題、というよりは、論理パズルを解いているような印象を受ける人も多いのではないでしょうか。
もちろん、みんなが解けてしまうような簡単な問題では、差がつきません。しかしそれにしても、今までの国語で求められていたものとは大きく異なる難しさだと言えます。
ちなみに、この問題について、大学入試センターでは事前に試作問題が公開されており、この問題の概要について、意図が解説されています。
「それぞれの資料をレポートに引用するために、複数の文章やグラフの内容や要旨を適切に解釈する力や、よりよいレポートにするために、レポートの内容を捉え直したり、根拠の示し方について考察したりする力等を問う。」
確かにここで書かれている通り、グラフの内容を要約する力・解釈する力を身に付けるのはとても大切なことだと思います。
ここで書かれていることは、少なくとも、今まで出題されていた評論文や小説の問題を解く能力の延長線上にある能力ではないと言えます。
これに対して、東大生からは、以下のような声が挙がっています。
「これがこれからの国語の問題なの? 今まで自分がやってきていたこととは全然違う(1年生 理系)」
「文章中に散らばった情報を集めて、情報同士を繋ぎ合わせて整理していくような問題とは大きく異なり、ただただ解きにくいだけの問題(3年生 理系)」
「今までの国語の問題をレゴだとすると、今回の問題は間違い探し。自分で考える能力を求めているのではなく、ただただ、間違いを探させるだけだ(4年生 文系)」
僕自身が解いてみた感想としても、彼ら・彼女たちとほぼ同じ意見で、「これが国語の問題なんだ。どこの大学の入試問題とも違う、まったく新しい内容の問題が出題されているな」という印象でした。
もちろんこれらは高校を卒業した東大生の声であり、今の学習指導要領の中で学校教育を受けてきた学生たちとは違う感覚を持っていることには十分に留意するべきだと思われます。
しかしそれはそれとして、非常に解きにくくて、今までの問題とは大きく質が異なることは明らかなのではないかと思います。
今後もこのような問題の出題が続くのではないかと考えられますが、どのように対策すればいいのか、これからの受験生たちは、大いに頭を悩ませることになるのではないでしょうか。
(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。