「団塊の世代の方々が全て75歳となる2025年には、75歳以上の人口が全人口の約18%となり、2040年には65歳以上の人口が全人口の約35%となると推計されています」
厚生労働省の「我が国の人口について」には上記のように書かれている。つまり人口の約5人に1人が75歳以上ということになる。「2025年問題」と言われ、医療・介護・流通、ありとあらゆる職種で労働力不足が懸念されている。そのためにも「女性が産みたいと思え、産みたい人が産める社会」とすることがとても重要だ。
厚生労働省が11月22日に発表した人口動態統計によると、2023年10月から2024年9月までの1年間に生まれた子どもの数は、72万9142人だった。前年の同時期は76万9748人で、統計を取り始めてから最小の数だと話題となったが、さらにそれを下回る数字となっている。
かたや、こども家庭庁の発表では、虐待を受けて死亡した子どもの半数近くは0歳児で、予期せぬ妊娠や困窮により、こどもの命が絶たれている例もある。
そこで重要になってくるのが、産みたいと思う人が産みやすい社会にすることと、望まぬ妊娠をなくすことではないだろうか。
さらに「こども家庭庁」はこども・子育て政策の強化「3つの基本理念」として以下の3つを掲げている。
1.こども・子育て政策の課題
(1)若い世代が結婚・子育ての将来展望を描けない
(2)子育てしづらい社会環境や子育てと両立しにくい職場環境がある
(3)子育ての経済的・精神的負担感や子育て世帯の不公平感が存在する
2025年4月には不妊治療の保険適用からまる2年となる。高校の無償化は2020年4月から実施されてもいる。それでもなお、出生率は国が統計を取り始めた1899年以降、初めて70万人を割る69万人の見込みだという(厚生労働省が12月24日に発表した10月の人口動態統計速報より)。本当に産みたい人が産むことができる環境とはなにかを考える必要がある。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「夫が妊娠を望んでも、ハラスメントなども含め、妻はそうではない可能性も多くあります。特に今はアプリなどで出会い、“結婚のための結婚”をする夫婦が増え、それが浮気の原因になることもあるのです」と言う。
山村さんに依頼がくる相談の多くは「時代」を反映している。同じような悩みを抱える方々への問題解決のヒントも多くあるはずだ。個人が特定されないように配慮をしながら、家族の問題を浮き上がらせる連載が「探偵が見た家族の肖像」だ。
多くの家族の姿から2025年の問題点を浮き上がらせるテーマを改めてご紹介する「探偵が見た家族の肖像正月SP」第1回は介護とモラハラの事例をお伝えした。第2回は「妊娠・出産」についてお届けする。今回山村さんのところに相談に来たのは、49歳の恭史さん(仮名)だ。「15歳年下の嫁が外泊とか地方出張とか繰り返しており、浮気している可能性があるんです」と山村さんに連絡をしてきた。
山村佳子(やまむら・よしこ)私立探偵、夫婦カウンセラー。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリング経験を持つ探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。
「浮気疑惑はありますが、とりあえず、話を聞いて欲しいんです」と恭史さんから連絡があったのは、平日の朝9時。夕方にカウンセリングルームに来てくださいました。
恭史さんは、49歳の実年齢には見えず、若々しい容姿をしていました。趣味はゴルフとサーフィンで、真っ黒に日焼けしている。仕事は不動産関連会社で営業職として勤務しており、離婚歴があると話していました。
「嫁とは4年前、コロナ禍にマッチングアプリで知り合って結婚したんです。前のカミさんの間に子供がいなくて、両親から“孫の顔が見たい”と言われていたんです。僕もそろそろ落ち着きたかったし、条件も体の相性も合うので、入籍しました」
少子化社会の報道が連日のようにされています。2024年11月22日に厚生労働省が発表した人口動態総覧によると、2023年10月から2024年9月までに生まれた子供の数は約73万人で、前年同時期と比べても4万余り減少しているとのことでした。
「嫁は15歳年下なので、当時30歳だったんですね。若くて可愛い上に“日本のために、子供を作ろうね”とか“私たちの子供なら絶対に可愛いよね”と言ってくれたんです」
妻は、当時、派遣社員として勤務しており、コロナ禍で仕事が止まってしまいました。日本は正社員の雇用が手厚く守られていますが、派遣や契約社員などは簡単に解雇できてしまう。当時の妻の恐怖はどれほどだったかと推察してしまいます。
「15歳年上の俺と結婚するんだから、経済的な不安が背景にあったとは思いますよ。でも、僕は持ちマンションに住んでおり、投資用物件を複数持っている。嫁さんと子供くらいは食べさせることもできるし、私立の学費も余裕で払えます。そういうことも結婚の条件だったとは分かっていました」
妻は地方出身で親子関係が複雑、実家との関係は薄かったそうです。奨学金を借りて大学を卒業しており、返済額から給料を引くと、手元に12万円しか残らず、スナックで夜のバイトをしていました。
「そんな子だから、最初の頃は本当に可愛かったですよ。2000円のランチを奢ったら、驚かれましたし、5万円のネックレスで腰が抜けるほど驚いていた。最初はお互いにマスクをしながらのデートで、ろくに顔も見ていなかったのですが、“この子でいいかも”と結婚したのです」
この時に、妻が抱えていた奨学金という名の借金を返済してあげたと言います。金額は約230万円。これに妻は感謝し、妊活のためにも専業主婦になったそうです。
「当時、毎月、夫婦の営みを持っているのに妊娠しない。子供が欲しいのに“また生理が来た”と言われ、ガックシですよ。嫁も2年間妊娠しないので働きに出ることに。僕も忙しいのですが、その後も排卵期だけはすることにしていました」
妻の新しい仕事はIT関連会社の正社員。元々整った顔立ちをしていたのですが、出会ったころは長い困窮生活で痩せていたそうです。恭史さんと結婚してからいいものを食べるようになり、元気になったそうです。
「妊娠にいいものを食べさせていたんですよね。でも兆候さえないんですよ」
そのうちに、妻がさらに美しくなっていったそうです。
「自信がついたんでしょうかね。お尻とか胸とかに肉感が出て、いい感じに熟れている。こっちもそろそろ子作りと思って、嫁のベッドに入ると、疲れていると拒否されたことすらありました。そんなことが続けば、夫婦仲は冷えてくるし、会話も少なくなりますよね。こっちはそんなつもりで結婚したのではないので、一度離婚のことを切り出しました」
すると、妻は「離婚は絶対にしたくない」と泣き出した。そこに疑惑を抱いてしまったそうです。
「俺を愛しているとか好きとかじゃなくて、離婚すると生活に困るから嫌なんだと思うんですよ。都心のタワマンに住んで、俺のクレジットカードで好きなものを買えて、車だって乗り放題なわけでしょ。もし、嫁が誰もが羨む絶世の美女なら、パーティなどにも連れて歩けるけれど、まあまあ可愛い程度で、人前に自慢できる程の見てくれはしていない」
不動産業界は男性社会のために、男性目線で「見栄えがする女性」でないと、公の場に出にくいのだといいます。しかしその言い方にはやや違和感を覚えます。
「だからせめて子供を作ることが大切なんです。でもあるとき、ゴミ出しの時に、見慣れない薬のカラがある。ウチは薬を飲まない家なので、気になって検索したんです。するとそれは、低用量ピルだったんです。え、妊娠しないようにずっと飲んでいたのかよって」
それで、恭史さんの離婚の意思は固まりました。
「こっちから切り出したら、100%悪者にされる。でも俺が被害者なんですよ。ゴミ出し、掃除、風呂洗いなどの家事はみんな俺。嫁は汚部屋で平気なタイプですからね。生活費も買い物代も全て俺。嫁から肩の一つも揉まれたことがないし、感謝の言葉もありませんから」
恭史さんはコスト意識が高い。私のところに来たということは、妻の浮気を確信しているからでしょう。
「そうなんです。今週土日、嫁は地方出張だと言っています。ここ1年ほど、出張回数が増えている。“コロナの反動の需要増”と言っているけれど、IT関係の会社に、それほど出張る用事があるとも思えない」
再就職してから、無断で突然2泊してくることもあり、浮気の可能性を疑っているとのこと。
「この調査で、本当に嫁が出張しているなら、一生、嫁の面倒を見ます。今後、子供を産まなくても、俺をないがしろにしようと、それでいい。もう2度と調査はしません。でもこの調査で浮気をしていたらアウト。はい、さようならです」
恭史さんは「男の責任」という言葉を何度も口にしていました。男性の役割、女性の役割を常に頭に置いているひとなのでしょう。「この調査で、何も出なかったら、財産の全てを渡してもいいと思っています」と帰っていきました。週末の調査に向けて、私たちも万全の準備をします。
◇子供は授かりもので、年齢の壁もあるが、思い通りに行くものではない。また、メンタルも大きく影響してくるため、「絶対に産め」というプレッシャーはかえってマイナスになることも多い。恭史さんなりに妻のことを思い、努力をしているのもわかるが、少し心配にもなる。
では妻は本当に浮気をしているのか。そして妊娠・出産のことはどう思っているのか調査の結果は後編「個人資産家の49歳夫が望む子供。15歳年下の妻がひそかに避妊をしていた理由」にて詳しくお伝えする。
個人資産家の49歳夫が望む子供。15歳年下の妻がひそかに避妊をしていた理由