手術で女性患者に重い後遺症を負わせた罪で、執刀医が起訴されました。業務上過失致傷の罪で27日、在宅起訴されたのは、兵庫・赤穂市の市民病院に勤務していた松井宏樹被告(46)です。
手術前の2019年、女性患者の様子を撮影した映像では、自ら歩いて車に乗れるほど元気な様子が見受けられます。ところが手術後の2021年、両足がまひして歩けなくなってしまい、強い痛みもある状態だといいます。
女性患者の家族:「この痛みを治してくれ。足を動くようにしてくれ。そうじゃなければ死ぬ」と言ってた。
女性は十分に歩くことができた2020年1月、腰の痛みで赤穂市民病院を受診し、腰の骨の変形により神経が圧迫される「脊柱管狭窄(きょうさく)症」と診断されました。担当したのが、脳神経外科医だった松井被告です。
女性患者の家族によると、当時、松井被告からは「手術は早くした方がいい。早くしないと人工透析になる可能性がある」と説明されたといいます。
手術を勧め、診断からわずか5日後に自らが執刀し、ドリルを使って腰の骨の一部を取り除く手術を実施。ところが、この手術で松井被告は、神経の一部を誤って切断してしまい、女性患者には、両足のまひや尿意や便意が感じられなくなる重い障害が残ったのです。
FNNが入手した手術の様子を記録した動画を別の医療機関の外科医に検証してもらったところ、一部を見た印象だと断った上で、執刀医の技量について「色んなところにドリルを当てにいってる。どこを削ればいいのか分かっていないのでは(という印象)。1人で手術していい医師なのかと言われると疑問を感じる」と話しました。
松井被告は2019年に、この病院に着任。この手術を含めて、自身が関わった8件の手術で医療事故があり、患者2人が死亡し6人に障害が残りました。
松井被告はその後、病院から手術の執刀を禁じられ、2021年に依願退職しました。
2024年9月、松井被告は、女性と家族が損害賠償を求めて起こした民事裁判に出廷。手術のミス自体は認めた上で、技量不足との指摘には「前の病院では助手も経験しているし、全く技量不足ではない」と答えました。また、ミスの原因については「上司の医師にせかされ、よく削れるドリルに変えたことが最大の原因だ」と主張しました。
松井被告の起訴を受け、女性の長女は「二度と母のような医療被害者を生むことがないよう、執刀した医師を厳罰に処していただき医療過誤を起こした医師が、繰り返し手術したり不適切な診療を続けることがないよう医道審議会には厳しい行政処分を下していただけますよう強く望みます」コメントしています。