「何度、農薬やロープを持ち出したことか…」“頂き女子りりちゃん”に3800万円を騙し取られた50代男性「月給20万円」「自宅はゴミ屋敷」の困窮生活

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「獄中日記」の有料配信、被害弁済を目的とした会社設立、映画化…。男性3人から計約1億5000万円を騙し取った罪で9月に懲役8年半の実刑判決を受けた“頂き女子りりちゃん”こと渡辺真衣被告(26、上告中)への支援活動が話題だ。獄中日記をアップするため3月に開設されたXアカウントのフォロワー数は29万人以上にも達している。約3800万円を騙し取られた被害者のAさん(50代)はこの動きをどう見ているのか。自宅を訪ねて話を聞いた。(前後編の前編)
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東京から高速道路を約1時間。田園地帯の一角にAさんの自宅はあった。荒れ果てた庭を通り玄関に一歩足を踏み入れた途端、ゾッとする光景が飛び込んできた。
土間から廊下まであちこちにビニール袋やティッシュ、空き缶などのゴミ屑が散乱している。「自宅での取材は難しい」と当初Aさんが難色を示していた理由が一目で理解できた瞬間だった。
Aさん自身も髪はボサボサ。糸屑のついた部屋着を纏っている。50代前半というが年齢以上に老けて見えた。
「精神状態がずっと不安定で暴飲暴食が止まらないんです。なんとか生きながらえているのが現状で…」
玄関に椅子を2つ並べて取材は始まった。この自宅に渡辺被告は3回くらいやってきたことがあるという。
「もちろんその時は綺麗に片付いていました。自宅に上がったと言っても何があったわけでもありません。いずれも小一時間、お茶を飲んで帰っただけ。彼女はなんとか私からお金を引き出そうと嘘八百を並べて、必死にいろんな演技をしていました」
2023年4月にマッチングアプリで知り合って以降、4カ月間で十回ほど会ったが毎回1時間程度だったと振り返る。
「いつも話す内容は無心です。親と縁を切るために借りている800万円を返さないといけない、友人の借金が2000万円以上ある…。気づけば3800万円。両親が私の将来のために積み立ててくれていた保険金などほぼ全財産を注ぎ込んでしまった」
最後の方で約2700万円の大金を渡した後、初めてホテルで男女関係を持ったという。
「関係を持ったのはそれ1回きり。それもたった1時間の逢瀬です。その後、再び『言えなかったけどまだ1000万円の借金が残っている』と始まった。もう金は尽きたと散々言ったのに、最後の最後でなけなしの300万円まで渡す羽目に…」
ずっとおかしいとは思っていたと話す。都合よくコロコロ変わる言動に不信感が拭えなかった。だが、
「金銭トラブルが解決すれば、この家に嫁いできて一緒に暮らせるという彼女の言葉を信じてしまった。悔やんでも悔やみきれません」
渡辺被告が逮捕されてから1年半。なんとか仕事は続けているが、生活は困窮を極める一方だという。仕事は医療関係で月の手取りは20万円ほどだ。
「大切な老後資金を全て失い、将来への不安が絶えない。彼女が貢いでいた元ホストが1800万円を弁済したと報道されていますが、あれは別にいる被害者に対してで私には一円も入ってきていません」
他界した両親が建てた家だけが残ったが、
「固定資産税を支払うのにも苦労しています。貯金は80万円ちょっとあるくらい。お金を取り返そうと思っても民事訴訟を起こす財力すらない。人生に絶望してロープや農薬を取り出してことも1度や2度ではありません」
そんなAさんが期待をかけるのが、渡辺被告の支援者が取り組む「渡辺真衣支援プロジェクト」である。
支援者は今年9月からnoteで獄中手記を1話300円で販売。書籍化する計画も進めているという。6月と10月には、都内で渡辺被告の近況を報告するイベントを開催した。いずれも〈収益は弁済活動に充てる〉としているが、Aさんは「一円たりとも私にはきていない」と話す。
そもそも一言も相談・報告がないままこれらの取り組みは始まっていたという。
「立件された被害者は私を含めて3人しかいませんのでおかしな話です。ネットで気づいて支援者たちに私から連絡を取りましたが、無視されたり心無いことを言われました。弁済会社の代表者でもある弁護士にはこちらから連絡してようやく話が出来ましたが、どう弁済していくかなど具体的な話はなかった。『来年3月ころには…』とは言うのですが曖昧な言い方で本当に弁済を受けられるのか甚だ怪しいのです」
10月にはクラウドファンディングによる映画化も発表された。こちらの告知文にも〈被害を受けた方へのご相談を行いながら、加害者や関係者への綿密な取材を慎重に進めてまいりました〉と書かれているが、これについてもAさんは「一度も連絡を受けたことがない」と言う。
だがプロジェクトに疑念を抱きながらも「期待している」と語る。
「というか、これしか金を取り返す手段がないからです。このプロジェクトが潰れてしまったら私にはもうすがるものはない。彼女には弁済する力がありませんから」
そして新たな動きがないかネット上をチェックするうちに、さらに精神的に落ち込む悪循環に陥ってしまうというのだ。
「獄中日記を読んでいると、スター気取りで自己憐憫の弁を繰り返す彼女に吐き気がします。そもそも彼女からは一度も謝罪を受けていません。こちらから2度も手紙を送っているのに無視されたまま。ネット上には『パパ活していたんだから当たり前だろう』みたいに被害心情を踏み躙る言葉も散見されます。私は男女関係の見返りを求めてお金を支援していたのではありません。詐欺にあったのです」
プロジェクトを運営している支援者はAさんの訴えについてどう思っているのか。合同会社の共同代表を務め、裁判で渡辺被告の情状証人として法廷にも立った作家の草下シンヤ氏に話を聞いた。
「Aさんから連絡は受けていたもののお返事できなかったのは、弁護士が一本化して対応すべきと考えたからです。ただ3人の被害者にどう集まったお金を分配していくか等の弁済計画がまだ固まっていないのは事実です。期待していたAさんが不信感を抱くのも当然のことで、申し訳なく思っております。初めての試みだったので、会社を立ち上げたものの、渡辺被告が滞納している約6000万円の所得税の支払いと並行してどう弁済を進めていくかの調整などに時間を要したのです」(草下氏)
最近ようやく弁済を始められる環境が整ってきたが、ここに来て新たな問題が生じたと話す。
「まだ状況がはっきりしていないので詳細はお話しできませんが、現在、渡辺さんとの話し合いが中断しているのです。獄中日記の更新が止まっているのもそのためです。『弁済のため』という名目を掲げてこのプロジェクトを始め、すでにnoteの売り上げなど200万円くらいのお金を会社で預かっています。早く収支を公表して弁済活動をスタートさせたいのですが、なにぶん、このプロジェクトは渡辺さんの意思を確認した上で始めた渡辺さんが主体の活動であり、彼女の意向を確認しないと進められないのです。なお私たちはあくまでサポート役でありこの活動で一銭の利益も得ておりません。むしろ会社の登記費用など持ち出しばかりです」(同)
ただ渡辺被告と連絡が途絶えることはこれまでもよくあったことで、プロジェクトが頓挫したわけではないと強調する。
「これまでは詐欺にあった被害者が被害金を取り返せることはほぼありませんでした。社会実験的な取り組みですが、始めた限りはなんとか成功させたいという気持ちです。弁済のために加害者と連携した経済活動を行うのは手探りの活動であり、税務署などとも協議を進めながら慎重に行っています」(同)
取材後、草下氏から「Aさんに対するお詫びを載せて欲しい」とメッセージが届いた。
〈地裁判決後、Aさんがホストから被害回復されるような説明をYouTubeでしてしまいましたが、別の被害者にホストから弁済されるものでしたので、この場をお借りして、誤報の謝罪と訂正させてください〉
後編【“頂き女子りりちゃん”に3800万円騙し取られて…50代被害男性が「騙されていると薄々気づきながら、苦しみ抜いて書いたラブレター」】では、Aさんが渡邉被告に向けて書いた「3通の手紙」を全文公開している。
デイリー新潮編集部

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