貸金庫から十数億円を盗み出し…三菱UFJ元行員の調査が難航している「意外なワケ」

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三菱UFJ銀行の女性行員が前代未聞の不祥事を起こした。貸金庫の中の顧客の財産を盗み出したのだ。銀行を熟知したベテラン行員だったからこそできたあまりにも大胆な犯行。銀行の信頼、そして貸金庫の安全神話も破られてしまった――。
三菱UFJ銀行が東京都内の複数の支店に設置されていた貸金庫から顧客の現金や貴金属が元行員によって盗まれていたことを発表したのは、11月22日のことだった。被害総額はおよそ十数億円にのぼる。
三菱UFJ銀行といえば、日本最大かつ世界有数の総合金融グループ「MUFG」の中核を担うメガバンク。その行員が銀行の信頼を損なうような重大事件を起こしたことに、日本中が衝撃を受けた。
「事件は練馬支店と玉川支店の2ヵ所で起きました。被害者は60人ほどとされています。ただし、この数字は元行員の供述に基づいた数字にすぎず、今後調査が進む中で被害額や被害者数が増加する可能性があります」(全国紙経済部記者)
事件は2024年10月31日、利用客から「貸金庫の中身がおかしい」との相談が寄せられことで発覚した。調査を進めたところ、ひとりの行員に行きついた。
「事情を確認すると、貸金庫の窃取を認めた。そして11月14日に懲戒解雇されました。40代の女性管理職で、関係者によると新卒で入行後、キャリアを重ねて管理職になったいわゆる“叩き上げ”のベテラン行員です。店頭での業務を担い、責任のある立場にいました」(前出の記者)
週刊文春の報道によると、元行員は女優の和久井映見似で可愛らしい雰囲気。ややぽっちゃりして大きな目がチャームポイントで、既婚者だが子どもはいなかったという。
また、MUFGの広報担当者は「元行員の金遣いの荒さや身なりの派手さを指摘したり、発覚前にカネに関する話を聞いたこともなかった」と明かす。
「華美ではなく、いわゆるマジメそうな“よくいる銀行員”にしか見えなかったそうです。大金を盗んだことで多くの方が想像したでしょうが、ホスト狂いだったり、誰かに貢いでいる話もなかったようです。共犯者もおらず、単独犯とみられます」(前出の記者)
盗んだ金品の具体的な使い道については調査が続けられている。
「貸金庫」といえば、サスペンスドラマやスパイ映画などに登場し、札束や宝石などの貴重品が収められていたり、ストーリーのカギとなるヒントが隠されていたりといったイメージを抱く人もいるだろう。一般庶民にはなかなか縁遠いことから、その仕組みはあまりよく知られていない。
まず、貸金庫は原則として契約者本人しか開けられない。
「貸金庫自体、秘匿性があるサービスなんです。家族であっても名義人以外に対して、銀行は貸金庫の存在すら明かすことができません。三菱UFJ銀行のある支店行員によると、今回の事件の確認作業で当該銀行の貸金庫契約者に連絡した際、息子や娘が電話口に出てしまい、説明に困ったと話していました。
親世代の中には子どもに内緒で利用している人もいるから、迂闊に詳細を伝えることができません。とくに親子関係が悪い家庭では『貸金庫をこっそり借りていること』がバレたら最悪、いきなり“争族”が勃発するなど、大問題に発展しかねないのです。
そのため、ある支店行員は『貸金庫の話は安易に切り出せない』とボヤいています」(金融事情に詳しいジャーナリスト)
現在、貸金庫の契約者に連絡し、元行員が盗んだものと、本人の保管物のすり合わせをするなどして被害調査が続いているが、これが難航しているという。というのも、自身が保管した具体的な金品について記憶があやふやになっている高齢の契約者もいるからだ。
「貸金庫の内容は預けた本人しか知りません。預け入れた金品などの明細書は存在しないんです。あくまでも、名義人である顧客が把握しているだけの仕組みです」(前出の金融事情に詳しいジャーナリスト)
三菱UFJ銀行の貸金庫を利用している60歳代のある男性は、事件発覚後、自分も被害に遭っていないか電話相談で問い合わせをしたときのことを明かす。
「『私の貸金庫は盗難被害に遭っていないでしょうか?』と尋ねると、電話口の担当者は『はい。お客様の貸金庫は被害に遭っていませんので、ご安心ください』と言いました。そこで、『なぜ、私の貸金庫の中身が大丈夫なのか、わかったのか?』と畳みかけると、担当者は黙り込んでしまった。
銀行は、貸金庫の中身に何が入っているのか、知らないはずです。にもかかわらず『何も取られていない』なんて即答できるのは、いったいどういうことなのでしょうか。どのような調査をしてそう断言するのか、詳細に説明してもらえないと納得がいきません」
不信感は募るばかりだが、今回窃取に及んだ元行員は、かなりの数の貸金庫を開け、価値の高い品物を選んで盗みを繰り返したのではないだろうか。
メガバンクで働く高橋寛さん(仮名)は「その可能性はありますよね」と述べる。
「大金を一気におろす際、銀行にとやかく言われるのが面倒くさいから、貸金庫に多額の現金を入れるお客様もいます。あとは銀行のペイオフ対策として利用する人もいます。銀行が破綻した場合1000万円とその利息までしか保護されないんです。でも、貸金庫に現金を入れておけば、それは資産なので全額守られるんですよ」(前出の高橋さん)
十数億円もの窃取をしておきながら、元行員がいまだ逮捕に至っていない理由とは。そして、犯行の手口とはどのようなものだったのか――。
後編記事『なぜ、まだ「逮捕」されないのか…三菱UFJ銀行元行員が貸金庫から十数億円を盗んだ「大胆すぎる犯行手口」』でさらに詳報します。
なぜ、まだ「逮捕」されないのか…三菱UFJ銀行元行員が貸金庫から十数億円を盗んだ「大胆すぎる犯行手口」

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