2023年にBIGLOBE株式会社が実施した「子育てに関するZ世代の意識調査」(全国の18歳から25歳までの未婚男女500人を対象)によると、半数以上の55.2%の若者が「現在または将来子どもが欲しくない」と回答したという。今回はZ世代の4名が考える「子どもを産んで育てること」についてのリアルな声を紹介していく。
【画像】「国の子育て政策は見当違い」と嘆く25歳のミナさん
「子どもが欲しくない若者は5割」――この数字に危機感を覚える中高年世代も多いだろう。
BIGLOBEのZ世代を対象とした調査では「子どもが欲しくない」と回答した理由の内訳として、「お金の問題」が17.7%、「お金以外の問題」が42.1%となった。
さらにお金以外の問題として挙げられた理由には「育てる自信がないから」、「子どもが好きではない、子どもが苦手だから」、「自由がなくなるから」が上位になったという。
結婚・出産・育児には多額のお金が必要となるが、どうやらZ世代の若者たちは経済的な理由以外でも不安を抱えているようだ。
最初に話を聞いたのは都内在住のレイカさん(仮名・26歳)。レイカさんは大学卒業後すぐに結婚し、その直後に妊娠が発覚、妊娠当時は23歳だったという。
複雑な事情により出産後数か月で夫と離婚し、現在3歳の男の子を育てるシングルマザーだ。
そんなレイカさんがリアルな子育ての実情を語ってくれた。
「産んでから数か月は本当にしんどかったです。例えば、夫が早朝勤務の日は、深夜2時に起きて夫の朝食を作り、そのあとに子どもの授乳やおむつ替えなどをすべて終えて、夫を4時ごろに見送ります。
その後は、2、3時間寝ては、子どもの面倒を見ての繰り返し。そして夫が帰ってきてから夕食を準備して、子どもを寝かしつけて…といった一日で、そういった生活が数か月続きました。
そんななかで離婚することになり、体力・気力ともに限界を感じました」
レイカさんの元夫は基本的に育児を手伝うことはしなかったという。
男性の育児参加についてレイカさんの意見を聞いてみた。
「いま証券会社でフルタイムの正社員として働いていますが、正直働く方が育児より100倍ラクですよ。決められた仕事をやって、しっかり1時間休憩を取って、お給料をもらう。
でも、育児はイレギュラーなことも多いし、休むこともできない。育児は“ひとりでできて当たり前”っていうほど楽じゃないんです。
そのことをパートナーにはわかってもらいたいし、もっと自発的に育児に参加して欲しいなと思いますね」
最後にレイカさんに「若者の5割が子どもを欲しくない」という事実について、どう感じているのか聞いた。
「あらゆる物価が高騰していて、円安も進んで、給料も上がらない世の中で、自分の生活だけで精一杯になって、子どもを育てる余裕がなくなることって当然だと思います。
特に都心は物価も高いし、家賃も高い。
それに教育や習い事の種類も豊富で、子どもにいい教育を受けさせたいと思うとかなりお金がかかります。
都心で子どもを育てることのハードルってかなり上がっていると思います」
続いて話を聞いたのは、ミナさん(仮名・25歳)だ。
ミナさんは3か月前に結婚したばかりだというが、子どもを持つことについてはパートナーと話し合い、現状考えていないという。
「子どもが欲しくない理由としては、経済的な余裕がないということが大きいですね。いまの稼ぎでは夫婦二人で生きていくことでやっとなので…。
私は親のお金で私立の大学に通わせてもらって、パートナーも大卒で、留学経験もあり、不自由ない暮らしをさせてもらいましたが、自分たちがそういった子育てをできる自信がないんです。
加えて、最近は子どもに対する性犯罪も多いですし、競争社会も激しくなっているなかで、子どもを幸せにしてあげられる自信がないというのも理由の一つですね」(ミナさん)
またミナさんは、現在の国の政治の在り方にも疑問を感じるという。
「私みたいに経済的な理由から子どもを産むことを躊躇する人たちはたくさんいると思いますが、現在の国の子育て政策はちょっと見当違いだなって感じることが多いんです。
もっと国が全力で子育て支援のためにお金を使ってくれるような姿勢を見せてくれないと、子どもを育てたいっていう若者は増えないんじゃないかな。
あとは、男女ともに育休を取りやすい職場環境を整えることなど、制度的な部分の改善もしなきゃいけないと思います。
子育てしている友人の話を聞いていると、大変そうで、自分は体力的に無理だって感じてしまうので、男性も育児に積極的な社会になって欲しいです」
そんなミナさんは、若者の意見をもっと政治に反映させて欲しいと、選挙では欠かさず投票に行くそうだ。
若者の投票率が低いことについて「同世代として悲しい」とも語ってくれた。
最後に話を聞いたのは、付き合って3か月目だというミレイさん(仮名・22歳)とシュンさん(仮名・23歳)の二人。
二人はいつか結婚して、子どもを育てることに憧れがあるという。
「もともと子どもが好きで、自分の子どもならもっとかわいいと思うし、いつか欲しいですね。
女性なら30歳までには子どもを産みたいなって、なんとなくの理想みたいなものがある人も少なくないと思うんですけど、私もいまは仕事を頑張りつつ、20代後半になったら産みたいなって考えています」(ミレイさん)
夫のシュンさんは台湾出身で、台湾の親戚や友人の多くが若くしてすでに子どもを産んで育てているそうだ。
「僕は24歳ごろには父親になりたいという明確なビジョンがあるんです。子どもがいる周りの親戚や友達の様子を見ていると幸せで楽しそうだし、自分も早く子ども欲しいなって考えに自然となりました。
自分のこれまでの経験を尽くして、自分の手で子どもを育てたいです。だから育児は僕が積極的にするつもりです」(シュンさん)
若くして子どもを育てたいと考える二人だが、自由な時間がなくなることや、お金が必要になるといった、子育てにおける苦労についてはどう捉えているのだろうか。
「お金を稼ぐのも、子どものためなら苦労に感じないんじゃないかな。逆に子どもがいるからこそ、いまの何倍も頑張れると思うし、子どものために頑張ること自体が幸せなことなんじゃないんですかね」(シュンさん)
一方、ミレイさんは日本における子育ての大変さや嫌な部分についてこう語ってくれた。
「日本だと男性が仕事で育休を取りづらい雰囲気がありますよね。
例えば、運動会など子どもの大切な学校行事でも、仕事を優先させるお父さんってけっこう多くないですか? 子どもの行事は1年のうちでその時にしかない大事なイベントなのに…。
私はバリバリ働きたい派なのですが、本当に理想なのは仕事も子育てもバランスよくできて、夫婦でお互い助け合う子育てができること。
でも、今の日本だとそれが難しいのかなって感じてしまいますね」(ミレイさん)
――全員に共通していたのは、日本が子育てしづらい環境だという意見だ。経済的な部分も含め、根底にある性役割や職場環境などを改善しなければ、明るい未来は見えてこないのかもしれない。
取材・文/瑠璃光丸凪/A4studio