闇バイト強盗へ“反撃”どこまでやっていい? 「強盗・窃盗等の犯人へ返り討ち」に“正当防衛”が認められる理由

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首都圏を中心に8月頃から闇バイトによる強盗事件が相次いでいることを受け、「万が一、うちも狙われたら…」と、不安を募らせている人も少なくないだろう。
そんな中、需要が高まっているのが、窓を割れにくくするフィルムやセンサーライトなどの防犯グッズ。また、闇バイト強盗では住人が大ケガをさせられたり、行き過ぎた暴行によって殺害されたりするケースも発生していることから、催涙スプレー、スタンガンといった護身グッズの売れ行きも好調だという。
ただ、護身グッズで“反撃”した結果、強盗犯にケガを負わせる、あるいは死亡させる可能性もある。この場合、「正当防衛」として、住人側は罪に問われずに済むのだろうか。
法律上、正当防衛は「刑法36条1項」「盗犯等防止法1条」の2通り規定されている。両者の違いについて、刑事事件に詳しい向畑了弁護士は「基本的には刑法が適用され、窃盗犯や強盗犯から自分の身を守るために防衛行為を行った場合など特定のケースでは、刑法の特則(特別法)である盗犯等防止法が適用される可能性が高い」と説明する。
「刑法36条1項は正当防衛について、〈急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない〉としています。どのような行為がこれに当てはまるのかは個別具体的に判断されますが、いずれのケースでも『やむを得ずにした行為』として防衛手段の『相当性』が求められます。
一方、盗犯等防止法1条1項は正当防衛について、〈自己又は他人の生命、身体又は貞操に対する現在の危険を排除する為犯人を殺傷したるときは刑法第36条第1項の防衛行為ありたるものとす〉と定めており、『やむを得ずした行為』としている刑法に比べて、相当性の要件は緩和されると解釈されています。
ではなぜ、法律上、正当防衛が2通り規定されているのか。それは、窃盗や強盗に対する被害者の防衛行為につき、正当防衛を少しでも認めやすくするためだと考えられます」
ただし、いくら盗犯等防止法1条で相当性の要求が緩和されているからといって、何をしても「正当防衛」と認められるかといえば、決してそうではない。
たとえば、同条1項3号には想定されるケースとして、〈故なく人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若は船舶に侵入したる者又は要求を受けて此等の場所より退去せざる者を排斥せんとするとき〉とある。しかし、強盗犯が自宅の敷地内に不法侵入してきた瞬間、“排斥せんとする”ために刃物で襲いかかってメッタ刺しにするというのは、「いくらなんでも相当性を欠く、つまり正当防衛は成立しないという判断になる可能性が高い」と向畑弁護士は指摘する。
「たしかに、3号の文言だけを見れば、自宅の敷地内に侵入してきた時点で正当防衛の適用範囲だと読み取ることもできるかもしれません。だからといって何でもやっていいというわけではなく、緩和された中にも一定の相当性が必要であることは、判例からも明らかです。
とはいえ、武器を持った強盗犯が目の前に迫っていて、身を守るためにその場にあった棒などをつかんで犯人を目がけて振り下ろした結果、たまたま当たりどころが悪くて死んでしまった…という場合は、正当防衛が成立する可能性が高いでしょう」(同前)
警察庁の防犯サイト「住まいる防犯110番」によれば、侵入者は、5分以内に侵入できなければ約7割が、10分以上かかればほとんどが諦めるとされている。
また、もっとも多い侵入手口は、一戸建住宅、共同住宅のいずれも「無締り(無施錠)」。次いで「ガラス破り」「合かぎ」による被害が多く発生している。
侵入口の最多は、一戸建住宅が窓、共同住宅は表出入口(玄関)だ。
これらを踏まえると、施錠の徹底や、窓、玄関の防犯対策を強化するだけでも、闇バイト強盗の被害に遭うリスクを抑えられる可能性が高い。
強盗犯が侵入してきた場合の「正当防衛」に関する知識を覚えておきつつ、まずは自宅が侵入されやすい状態になっていないか、確かめることも重要だろう。

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