映像を観て胸が苦しくなった人も多いだろう。
11月27日、東京都文京区の猪口邦子参議院議員(72)の自宅マンションで火災が発生し、6階建てマンション最上階部分が激しく燃え広がった。警視庁は12月1日に死亡したのは猪口さんの夫で東大名誉教授の孝さん(享年80)と長女(享年33)と発表した。
「現場は道が狭く、はしご車が入れなかった。30分ほど何もすることができず火が目の前で広がっていくのを見るしかなかったんです。消防隊員も近所の人も忸怩たる思いだったでしょう。そしてポンプ車など37台が出動して必死に消火をおこなったものの、放水しても火災があった部屋が屋上のベランダ部分に囲まれているので、水がうまく部屋の中まで届かなかった。当時空気も乾燥しており、風も強く、結局鎮火に8時間近くかかっていましたね」(テレビ局報道記者)
一家は4人暮らしで、猪口議員と次女は当時外出していた。マンションの防犯カメラには、出火の約2時間前に孝さんと長女が別々に帰宅する姿が映っており、第三者が侵入した形跡は確認されていないという。
そんな中、物議を醸したのは翌28日に日本テレビ系列の『ミヤネ屋』(読売テレビ制作)が放送した映像だ。
「視聴者提供」として流された映像には、燃え盛る炎の中、手にペットボトルを持つ女性らしき人影が映っていた。誰かも分からず何をしていたのかも分からないというなか、そのまま放送されたのだ。
この舞台裏を日テレ関係者が明かす。
「ミヤネ屋を放送後、親族と名乗る人からクレームが入りました。“あの映像を使うのをやめてほしい”と言われたので報道局幹部で緊急協議に入った。しかしあの映像は重要な証拠であるとも考えた。あのペットボトルの液体が水なのか、はたまた可燃物なのか。もしガソリンのような可燃物ならば放火の可能性もある。
親族のご意向もふまえ、その当日だけに限り使用し、翌日以降は使用禁止という通達が日テレの社会部長よりNNN各局に出された。現場から油のようなものは見つからなかったため、それも含めて視聴者提供の映像と共に『news every.』などで放送しました」(日本テレビ系関係者)
ショッキングな映像は使用不可になったが、
「実は悲しいストーリーが隠されていたかもしれない」
と話すのはワイドショー関係者だ。
「女性らしき人影が長女だとすれば、燃え盛る家の中には父である国際政治学者の孝さんが残されていた可能性がある。孝さんは足が不自由で車椅子生活だったといわれています。もし長女がベランダにいたなら下の階などにダメ元で飛び降りることも可能だったかもしれない。しかし最期には2人は台所で倒れていた。長女が足の悪いお父さんを助けに行った可能性があるんです。普通あの炎の中、家に戻るという選択はしないはず。あの映像を観てそんな気がしました」
確かに映像はショッキングではあるが、人がどう動いたのかという情報性はある。それをありのまま放送するかはテレビ局の判断なのだろう。