2024年上半期の出生数が33万人弱だったことを受けて、2024年の出生数は70万人を切ると予測されている。国立社会保障・人口問題研究所の最新の人口推計では70万人を切るのは2043年のはずだった。想定より20年も早いスピードで少子化が進んでいるのだ(「令和5年推計 日本の将来推計人口」の中位推計)より)。
出生数は2016年に100万人を下回り始め、筆者が政府の少子化対策や少子化問題を扱った『無子高齢化–出生数ゼロの恐怖』(岩波書店)を書いた2018年の出生数は約92万人だった。それからたった6年の間に、20万人以上も出生数は減り、4分の3以下になってしまったのだ。
ここに衝撃の報告がある。実はOECD諸国の中で子どもを持たない女性の割合が最も高いのは日本なのだ。2024年に49歳になる日本女性の28.3%、約3割は子どもを産んでいない。2020年の国勢調査を見ると45歳(2024年に49歳)の女性は約89.7万人いるので、そのうちの約25万人の女性は生涯子どもを持たない=無子なのである。
少子化が進んでいるのは日本だけではない。先進諸国では多くの国で程度の差はあれ、少子化が進んでいる。OECDが毎年出す報告書の「Society at a Glance」の2024年版のテーマは「出生」であった。着目されたのが、各国での子どもを持たない女性の比率の上昇である。
この報告書から2024年時点で49歳(1975年生まれ)になる各国の女性の生涯無子率を見てみよう(結果は図表1にある)。先に述べたようにOECD諸国の中で子どもをもたない49歳の女性の割合が最も高いのは日本である。2位はスペイン23.9%、3位はイタリア22.5%と続く。一方、少子化がそれほど進んでいない国を見ると、フランスで14.75%、デンマーク13.1%、スウェーデン12.9%となっている。
少子化が問題だと言われ続けながら、なぜ日本は世界一子どもを持たない女性が多い国になってしまったのだろうか。また、それは女性個人の責任なのだろうか。子どもを産みたいと思うすべての女性が希望を実現した結果こうなった、といえるだろうか?言い換えれば、産まなかったのは産みたくなかった女性だけなのか、ということだ。他国に比べて日本において無子の女性がここまで高い比率を示しているということは、社会的な条件や構造が女性に「産まない」「産めない」選択をさせたとは考えられないだろうか。
2024年に49歳になる女性は、1975年生まれだ。この年には約190万人の子どもが生まれていたので、2024年の3倍近くの出生数である。190万人も生まれたうちの約半数である女性たちの4人に1人以上が子どもを産まなかった、つまり、母になる可能性のある女性の数がそれなりに多かったのに、無子比率が高かったということは、少子化の進展を少しでもゆるめるチャンスを逃したことになる。実は1974~78年生まれの人たちが、2023年に45~49歳になった時点で、結局何人子どもを産んだのかを見るコーホート合計特殊出生率は1.46となっている。女性の無子比率が低ければ、もっと多くの子どもが生まれただろう。
日本では婚外子が少なく、出産には結婚が前提である。つまり未婚の人は出産する可能性が低いと考えられる。それではこの世代の未婚率はどうなっているだろうか。図表2には1971~75年生まれ世代の、各年代での未婚率をまとめている。30代前半では未婚率が32%、30代後半でも23.1%となっている。40代前半では19.3%の人が未婚で、その後結婚したとしても年齢的に子どもを持つことは難しく、おそらくこの人たちの多くが子どもを持つことはなかっただろう。
女性の妊娠する力(妊孕力)は40歳近くになると落ちだすので、結婚してもその時期が遅ければそれだけ子どもを持つことは難しくなる。結婚年代別の夫婦の子ども数も確認できるが、実際、結婚年齢が上がるほど、その後の子ども数も少なくなっている。
女性の無子率が高い原因には、こうした未婚者の増加がある。その背景には何があるのか。「結婚したくない人が増えている」という単純な理由では語れない残酷な現実を、後編【なぜ日本の「49歳の女性たち」は世界で一番子どもを産んでいないのか…その裏の「残酷な現実」】で解説する。
なぜ日本の「49歳の女性たち」は世界で一番子どもを産んでいないのか…その裏の「残酷な現実」