赤ちゃんに『ミルクを薄めて飲ませている』 物価高騰の影響は乳児にも…親たちの“悲鳴”「栄養を考える以前に『買えない』で苦しんでいる」現状も

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「ミルクは薄めて、オムツはなるべくそのままにしています」…認定NPO法人キッズドアが行ったアンケート調査(2024年6月)に寄せられた回答に、この言葉はありました。 アンケート調査は夏と冬に2回行う食糧支援を前に2021年から毎年行われ、支援プラットフォームであるキッズドア・ファミリーサポートに登録している保護者が対象です。そこにはもともと経済的に厳しい環境に置かれているひとり親家庭や多子家庭から、高騰し続ける物価に追いつめられていく悲鳴のような声が寄せられ、「子どもが常にお腹を空かせている」「真夏もエアコンをつけずに我慢している」など差し迫った数々の窮状が綴られています。

ファミリーサポート担当の渥美未零さんは日ごろからこうした声に多く触れていますが、今回、赤ちゃんが飲む「ミルクを薄める」という声に改めて危機感を持ったそうです。 言うまでもなく、急速に成長する乳児期に栄養が不足していいはずはありません。しかし、全国平均の粉ミルク価格は2022年10月以前は2100円台でしたが、2024年10月は2642円(総務省統計局小売物価統計調査)と、2年間で500円以上値上がりしていて、困窮している家庭にとっては小さくない負担増です。 今回、ミルク支援を受けたのはほとんどがシングルマザーですが 、同じひとり親世帯でも、平均年収は父子家庭が518万円、母子家庭は272万円(2021年厚生労働省『全国ひとり親世帯等調査』)と大きな差があります。非正規で不安定な雇用や養育費の未払い等で困窮し、そこに物価高騰が加わってミルクを薄めざるを得なくなり、結果としてしわ寄せが赤ちゃんに来てしまっているのが現状です。 そこで、キッズドアでは8月に、ファミリーサポートに登録している乳児がいる世帯にアンケートを行い、55の回答を得て44世帯に粉ミルクを送る支援を行いました。 【アンケートに寄せられたコメント】 「いろいろなものが値上げで生活費がかさみ、ミルク代も高くてなかなか買うことができません。満腹になるように飲ませてあげたい」 「ひと月に粉ミルクだけで1万円近くかかる上に、オムツ代などもかかるので、ミルクを買う余裕がない際はミルクの回数を減らしたりしなければならない」 「家計が苦しいため、親は1日1食で生活していたら母乳が全く出なくなり、粉ミルクのみになりました。生後3か月でひと月1万円を超え、薄めてはいるもののこれからもっと飲む量が増えるので2、3万円はいきそうで不安です」 渥美さんは「アンケートをお送りしたことがきっかけで、お母さんが『薄めてはいけなかったんだ』とハッと気づいたと聞きました。それは栄養や成長のことを考える以前に『買えない』という現実の前で苦しんでいるということ。それが本当にショックでした」と話します。 ミルク支援を受けた山本さん(仮名)に話を伺いました。山本さんは14歳を筆頭に11か月の赤ちゃんまで4人の子どもを1人で育てています。月収は手取り11万円ほどで、5人家族の生活は児童手当と児童扶養手当で何とかギリギリ保っています。 粉ミルクはひと月で2.5缶ほど消費しますが、それも160ml用の分量の粉ミルクを200mlのお湯で溶いて与えています。食べ盛りの子どもたちにはもやしや卵、鶏ひき肉などでおかずを作り、たまにハンバーグを作るときも豆腐でかさ増ししているそうです。 これからは子どもの高校進学で出費が増えることが不安ですが、「やるしかない、仕事を頑張る」と気持ちを奮い立たせています。それでも、支援物資が届くと「落ち込んだ気持ちが少し上がって、子どもより私のほうがワクワクしてしまいます」と励まされるそうで、「いつか自分も支援する側に回りたいです」と声を弾ませました。 物資を介して、支援する側の気持ちは支援を受ける側に伝わっていて、それが次の支援につながる可能性があります。 キッズドアでは、年末年始に向けた食糧支援のためのクラウドファンディングを行っていて、一部はミルク支援に活用されます。また、「Yahoo!買って応援便」などでミルクを購入して寄付する方法などもあります。 キッズドアの渡辺由美子理事長は「キッズドアに限らず、ほかの支援方法でもいいので、子どもがお腹を空かせることがないよう社会みんなで手を差し伸べてほしい」と訴えています。

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