『緊急避妊薬』処方した7割が「ネットで知った」危惧する医師 試験販売1年の現状は

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意図しない妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」。性行為から72時間以内に服用することで妊娠を一定程度防ぐとされるものです。この緊急避妊薬を『医師の処方箋なしで販売できるか』調査するための試験販売が2023年に始まり、11月28日で1年となりました。1個あたりの値段は7000円~9000円程度です。
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全国では試験販売開始から2か月あまりで2181個が販売、熊本県内では熊本市内の3か所の薬局で52個が販売されました。(2023年11月28日~2024年1月31日)(令和5年度 厚生労働省「緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業 報告書」より)
緊急避妊薬は緊急時にすぐ手に入るメリットがありますが、緊急避妊薬を含む「避妊」に関する教育の重要性も指摘されています。今後、販売は多くの薬局に拡大していくのか。産婦人科医に聞きました。
熊本市のクリニックで、2018年の開院以降1000件以上で緊急避妊薬を処方してきた宮原陽医師に聞きました。
みやはらレディースクリニック 宮原陽院長「緊急避妊薬は飲むまでの時間が大切。近くの薬局で手に入るというのは、患者さんにとって非常にメリットがあると思います」
緊急避妊薬は、服用が早ければ早いほど避妊の確率が高まります。
【妊娠阻止率 ※レボノルゲストレル緊急避妊薬の場合】日本産科婦人科学会『緊急避妊法の適正使用に関する指針』より24時間以内:約95%25~48時間以内:約85%49~72時間以内:約58%
医療機関の受診時間外でも薬局が営業していれば、早めの服用につながります。また、性暴力などさまざまな事情で医師の診察を受けたくない人にとっても選択肢が広がります。
宮原院長「ハードルを下げるという意味では、薬局の方がかかりやすい方もおられるのではないかと」
薬局での販売には物理的にも心理的にもメリットがある一方、正しい知識を持たないまま緊急避妊薬に頼ってしまうケースや、性暴力やDVに伴って使われてしまうケースも懸念されます。
宮原院長「避妊法にはどのようなものがあるのか、例えば日本だとコンドーム、ピルとか、知らずに緊急避妊薬ばかりになると、結局何も変わらないと思うんですよね。セットで性教育をやっていかないと」
宮原医師のクリニックで緊急避妊薬を処方された人を年代別で見てみると、2割近くが20歳未満です。そして、どうやって緊急避妊薬を知ったかと聞くと、インターネットが68%で、学校での性教育と答えたのは7%しかありませんでした。
(2023年8月5日~2024年11月28日まで WEB問診のデータより)
そこで宮原医師は、学校での性教育にも取り組んでいます。
宮原院長「中学生のみなさんに、正しい性の知識を身につけていただきたいと思っています」
熊本市教育委員会は、正しい性の知識を身につけて命の大切さを学んでもらおうと、市内全ての中学校で産婦人科医による出張講演会をしています。
男女の身体の違いや性の多様性、そして望まない妊娠についても生徒たちは真剣な表情で聞き入っていました。
宮原院長「正しい知識を知るか知らないかで、みなさんの人生が大きく変わる可能性だってあります」「中学生だから妊娠しないだろうということは全くありえない。年齢は関係ない」
宮原医師は、早めに正しい性教育を受けることが自分や大切な人を守ることにつながると考えています。
生徒たちの感想は。
中学3年「恥ずかしさが完全にないと言ったら嘘になるんですけど、自分のためになったと思うし、これから自分の体も、他の人の体も大切にしていけたらと思いました」
中学3年「自分だけの問題じゃないので、相手のこともしっかり考えてこれから向き合っていきたいと思いました」
宮原院長「やっぱり持っておかないといけないのが『正しい知識』。そのためにも性教育を出来るだけ多くの人に知って、理解してもらった上で、緊急避妊薬が手に入るような世の中になればいいなと思います」

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