深夜・早朝に奇声をあげ、怪文書を投函…マンションの迷惑住民を追い出すことはできる?【弁護士が解説】

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マンションやアパートで大音量の騒音を出したり、ゴミ等を放置し悪臭を放つなど、迷惑行為を繰り返す近隣住民がいた場合、日々の暮らしへの大きなストレスとなります。そこで実際にこのような迷惑行為の被害に遭った場合、どんな法的措置をとることができるのでしょうか。ココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、迷惑住民への対応について原田和幸弁護士に解説していただきました。
大型分譲マンションに住んでいる相談者のカナタさん(仮名)は、最近入居したSさんについて頭を悩ませています。
Sさんは50代無職、派手な服装を好み、いかにも変わっている雰囲気です。精神科に通っており、処方薬の効果が切れると迷惑行為をする傾向があります。ご両親は他界しており、残された親戚が手に負えないため、マンションを共同で買い与えたとのことでした。
とくにマンションの住民が迷惑・脅威に感じている行為は以下です。
このような行為によって警察がくるなど、管理組合・自治会を上げて大騒ぎになっています。管理組合・自治会の歴史は古く、体制もしっかりしているのですが、今回ばかりは対応策をどうしたらよいか、考えあぐねています。
カナタさんをはじめとした住民は、可能であれば退去命令や管理命令を出す、強制的に後見人をつけるなどの対応をしたいと思っています。
そこで上記のような法的措置も念頭に、Sさんの迷惑行為に対して具体的にどのような対策がとれるのか、ココナラ法律相談「法律Q&A」に相談しました。
迷惑な住人の対応については、その建物を所有しているのか、賃貸しているのかによって、その対応が異なってきます。
アパートであれば、通常はそのアパートの所有者がいて、その所有者(大家さん)が第三者に部屋を貸すのです。迷惑な住人がいれば、もちろん、同じ借りている住人が迷惑な住人を直接注意することもあるでしょうし、迷惑を感じている住人がアパートの大家さんに相談して、大家さんから迷惑な住人に対して注意することもあるでしょう。
法的措置となれば、迷惑を受けている住人がその迷惑な住人に対して損害賠償請求はありうるかもしれませんが、退去請求(建物明渡請求)までは難しいと思います。建物明渡請求をしたいとなると、大家さんが信頼関係破壊を理由に賃貸借契約の解除を主張して、その迷惑な住民に請求していくことになるのです。
一方、マンション(区分所有建物)の場合は、もちろん賃貸に出されていることもありますので、その場合は、アパートの場合と同じと考えればよいでしょう。一部屋を持っている所有者が大家さんとなって、建物明渡請求はありうるのです。
他方、そのマンションを貸さずに所有者が住んでいる場合はどうでしょうか。この場合は、所有者が住んでいるのですから、所有者が自身への退去請求はありえないのです。
よって、本事例では、おそらくSさんが所有者ですから、建物明渡請求は難しいという話になると思います。
前記のとおり、マンションの所有者が居住している場合は、大家さんからの建物明渡請求という方法はとれません。では、どうするか。
ひとつには、区分所有法に規定されている競売請求です(同法59条)。区分所有者の共同生活上の障害が著しく区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難な場合、当該区分所有建物を競売にすることを請求できるとするものです。
競売になれば、第三者の所有になりますので、現在の迷惑な住人は退去せざるを得なくなります。ただ、この競売請求については、要件がかなり厳格であり、通常の迷惑レベルであれば、難しいと考えておいたほうがよいと思います。
あとは、本件では、ベランダで物を燃やすとかタバコを下に投げ落とすともありますので、放火罪や建造物損壊罪の可能性もありますし、他人の家の玄関を開けるともありますので、住居侵入罪の可能性もあります。
本件では警察が動いたような話もありますが、刑事事件化すれば、検察官も動くことになるでしょうから、その場合、精神鑑定のうえ、措置入院といって、強制的に入院措置が取られる場合もあります。場合によっては、懲役刑実刑になれば刑務所に行くこともありうるかもしれません。
そうなるとしばらくマンションに戻ってこられないことになるとは思いますが、いずれは戻ってくるかもしれませんので、根本的な解決には至らないかもしれません。
ただ、刑事事件となるほどの迷惑な行為が継続するのであれば、前記の競売請求が認められる方向の事情にはなりますので、一定の効果はあるのかもしれません。
さらには、行政に相談ということもありえますが、どこまで行政が動いてくれるかという問題はあると思います。

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