100万回分のワクチン廃棄!東京23区への独自調査で判明「調査は考えていない」国の姿勢に疑問の声

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ことし9月、東京都内の保健所で新型コロナのワクチン担当者が向かった先は、廃棄する新型コロナのワクチンが入っている冷蔵庫でした。【写真を見る】100万回分のワクチン廃棄!東京23区への独自調査で判明「調査は考えていない」国の姿勢に疑問の声なぜ廃棄するのか?ワクチンの有効期限は2022年9月12日。中身は未使用ですが、もう接種はできません。都内自治体のワクチン担当者「当初ワクチンが足りなくて接種できない状態がありましたので、できる限り接種していただきたいなと思って進めてきましたが、もったいないです」

取材した日に処分されたのは約1万回分。「感染性廃棄物」として専用の箱に入れられます。この自治体では、これまでに期限切れで約5万回分の未使用ワクチンを廃棄しました。未使用ワクチンの廃棄は他の自治体でも起きているのでしょうか。都内の自治体に取材をすると、東京23区全ての自治体で廃棄されていたことがわかりました。その数は合計100万回分。全国でも、かなりの規模の廃棄が行われているとみられます。■コロナワクチンの廃棄 高温で焼却→無害化→埋め立て処分こうした大量の「感染性廃棄物」はどのように処分されているのでしょうか?静岡県・富士宮市にあるミダック富士宮事業所では静岡県内の医療機関から出た「感染性廃棄物」を処分しています。ミダック富士宮事業所 井出博昭所長「黒い容器の中には血液・ガーゼ・注射器等の医療器具が入っています。容器から飛び出さないよう頑丈なプラスチック容器に入っています」中には新型コロナのワクチン接種で使われたものも入っているといいますが、感染を防ぐため密閉されていて、中身を見ることはできません。これらの容器はベルトコンベアで運ばれて、そのまま焼却炉に投入されます。記者「運ばれた感染性廃棄物は温度850度の焼却炉で1時間かけて燃やされています」高温で焼却されることで無害化され、残った灰は埋め立て処分。未使用のワクチンも同じように焼却処分されています。■ワクチンが廃棄される理由 「期限があまりにも短すぎた」なぜ大量のワクチンが期限切れで、廃棄されているのか?理由は2つあります。▼1つ目の理由は、3回目以降のワクチン接種率が低いこと。1回目は81.4%、2回目は80.4%でしたが、3回目は66.4%にとどまっています。(首相官邸HPより)▼2つ目の理由は、自治体に届いたワクチンの有効期限が短かったことです。品川区 新型コロナ予防接種担当 豊嶋俊介課長「期限が7月くらいまでのワクチンが5万人分あれば、使い切れるんじゃないかと思って要求したところ、期限が5月末までもないワクチンが来てしまった。ちょっとこれは困ったなと」モデルナのワクチンは有効期限が9か月です。しかし、品川区に2月下旬に届いたワクチンの期限は残り3か月ほどでした。品川区 新型コロナ予防接種担当 豊嶋俊介課長「無駄にしたくないっていう気持ちは当然持っています。ただ、あまりにも時間がなさ過ぎて、使い切るまでには至らなかった」その結果、品川区では5月に6万5000回分を廃棄しました。厚労省は取材に対し「1回目・2回目の接種時でワクチンが余ったため、残っていた期限が短いものを自治体に供給した」と答えました。廃棄されたワクチンは、金額にすると一体いくら分になるのでしょうか?国の予算を議論する審議会の資料を見ると、2022年9月までにファイザーやモデルナなど8億8200万回分のワクチンが約2兆4000億円で調達される予算になっています。これは流通費も含む金額ですが、単純計算するとワクチン1回分は2725円。東京23区で廃棄されたワクチン100万回分に当てはめると、総額は27億2500万円にのぼります。全国では、どれほどのワクチンが廃棄されているのでしょうか?後藤茂之厚労大臣(当時)「ワクチンの廃棄数の調査は、現時点で行うことは考えていない」(ことし5月)政府は、新型コロナワクチンの廃棄数について調査を行っていません。ただ、ワクチンにかかる費用は全て国費、つまり私たちの税金です。専門家は「検証が必要」だと指摘します。国の予算に詳しい 慶応大学 土居丈朗教授「廃棄したものは全部無駄だったとまでは言えないが、本来廃棄しなくて済んだかもしれない。もっと工夫をすれば予算を節約できたかもしれないという余地があるのかないのかということも、検証可能な形で金額を出すなり、きちんと説明責任を果たして頂くことが必要だと思う」■“必要な人に届けるために” ワクチン廃棄の実態把握が必要TBS社会部都庁キャップ 寺川祐介記者:新型コロナのワクチン調達にかかった予算は2022年9月までで2兆4000億円(8億8200万回分・流通費含む)です。私たちの取材では、東京23区だけでも100万回分のワクチンが未使用のまま廃棄されたことがわかっています。これは単純計算で約27億円分です。廃棄の費用もまた税金です。全国で見ればかなりの数が廃棄されているのは確実です。小川彩佳キャスター:2021年の1回目・2回目の接種時にはワクチンが足りないという事態になった。こうしたことがないように、という意識が影響したのかとも想像しますが?寺川記者:国としては対象となる全ての国民にワクチンが行き渡る数が必要だったので、結果としてワクチンが余ってしまったこと自体は仕方ない側面もあると思います。ただ、国はどれくらいの数が廃棄されたのかなどについて「検証しない」と言っています。ただ、こうした検証を行うことが必要な人に必要な量を届けつつも、ワクチン廃棄を減らす事につながります。まずは実態を把握して、情報を開示することが求められます。
ことし9月、東京都内の保健所で新型コロナのワクチン担当者が向かった先は、廃棄する新型コロナのワクチンが入っている冷蔵庫でした。
【写真を見る】100万回分のワクチン廃棄!東京23区への独自調査で判明「調査は考えていない」国の姿勢に疑問の声なぜ廃棄するのか?ワクチンの有効期限は2022年9月12日。中身は未使用ですが、もう接種はできません。都内自治体のワクチン担当者「当初ワクチンが足りなくて接種できない状態がありましたので、できる限り接種していただきたいなと思って進めてきましたが、もったいないです」

取材した日に処分されたのは約1万回分。「感染性廃棄物」として専用の箱に入れられます。この自治体では、これまでに期限切れで約5万回分の未使用ワクチンを廃棄しました。未使用ワクチンの廃棄は他の自治体でも起きているのでしょうか。都内の自治体に取材をすると、東京23区全ての自治体で廃棄されていたことがわかりました。その数は合計100万回分。全国でも、かなりの規模の廃棄が行われているとみられます。■コロナワクチンの廃棄 高温で焼却→無害化→埋め立て処分こうした大量の「感染性廃棄物」はどのように処分されているのでしょうか?静岡県・富士宮市にあるミダック富士宮事業所では静岡県内の医療機関から出た「感染性廃棄物」を処分しています。ミダック富士宮事業所 井出博昭所長「黒い容器の中には血液・ガーゼ・注射器等の医療器具が入っています。容器から飛び出さないよう頑丈なプラスチック容器に入っています」中には新型コロナのワクチン接種で使われたものも入っているといいますが、感染を防ぐため密閉されていて、中身を見ることはできません。これらの容器はベルトコンベアで運ばれて、そのまま焼却炉に投入されます。記者「運ばれた感染性廃棄物は温度850度の焼却炉で1時間かけて燃やされています」高温で焼却されることで無害化され、残った灰は埋め立て処分。未使用のワクチンも同じように焼却処分されています。■ワクチンが廃棄される理由 「期限があまりにも短すぎた」なぜ大量のワクチンが期限切れで、廃棄されているのか?理由は2つあります。▼1つ目の理由は、3回目以降のワクチン接種率が低いこと。1回目は81.4%、2回目は80.4%でしたが、3回目は66.4%にとどまっています。(首相官邸HPより)▼2つ目の理由は、自治体に届いたワクチンの有効期限が短かったことです。品川区 新型コロナ予防接種担当 豊嶋俊介課長「期限が7月くらいまでのワクチンが5万人分あれば、使い切れるんじゃないかと思って要求したところ、期限が5月末までもないワクチンが来てしまった。ちょっとこれは困ったなと」モデルナのワクチンは有効期限が9か月です。しかし、品川区に2月下旬に届いたワクチンの期限は残り3か月ほどでした。品川区 新型コロナ予防接種担当 豊嶋俊介課長「無駄にしたくないっていう気持ちは当然持っています。ただ、あまりにも時間がなさ過ぎて、使い切るまでには至らなかった」その結果、品川区では5月に6万5000回分を廃棄しました。厚労省は取材に対し「1回目・2回目の接種時でワクチンが余ったため、残っていた期限が短いものを自治体に供給した」と答えました。廃棄されたワクチンは、金額にすると一体いくら分になるのでしょうか?国の予算を議論する審議会の資料を見ると、2022年9月までにファイザーやモデルナなど8億8200万回分のワクチンが約2兆4000億円で調達される予算になっています。これは流通費も含む金額ですが、単純計算するとワクチン1回分は2725円。東京23区で廃棄されたワクチン100万回分に当てはめると、総額は27億2500万円にのぼります。全国では、どれほどのワクチンが廃棄されているのでしょうか?後藤茂之厚労大臣(当時)「ワクチンの廃棄数の調査は、現時点で行うことは考えていない」(ことし5月)政府は、新型コロナワクチンの廃棄数について調査を行っていません。ただ、ワクチンにかかる費用は全て国費、つまり私たちの税金です。専門家は「検証が必要」だと指摘します。国の予算に詳しい 慶応大学 土居丈朗教授「廃棄したものは全部無駄だったとまでは言えないが、本来廃棄しなくて済んだかもしれない。もっと工夫をすれば予算を節約できたかもしれないという余地があるのかないのかということも、検証可能な形で金額を出すなり、きちんと説明責任を果たして頂くことが必要だと思う」■“必要な人に届けるために” ワクチン廃棄の実態把握が必要TBS社会部都庁キャップ 寺川祐介記者:新型コロナのワクチン調達にかかった予算は2022年9月までで2兆4000億円(8億8200万回分・流通費含む)です。私たちの取材では、東京23区だけでも100万回分のワクチンが未使用のまま廃棄されたことがわかっています。これは単純計算で約27億円分です。廃棄の費用もまた税金です。全国で見ればかなりの数が廃棄されているのは確実です。小川彩佳キャスター:2021年の1回目・2回目の接種時にはワクチンが足りないという事態になった。こうしたことがないように、という意識が影響したのかとも想像しますが?寺川記者:国としては対象となる全ての国民にワクチンが行き渡る数が必要だったので、結果としてワクチンが余ってしまったこと自体は仕方ない側面もあると思います。ただ、国はどれくらいの数が廃棄されたのかなどについて「検証しない」と言っています。ただ、こうした検証を行うことが必要な人に必要な量を届けつつも、ワクチン廃棄を減らす事につながります。まずは実態を把握して、情報を開示することが求められます。
なぜ廃棄するのか?ワクチンの有効期限は2022年9月12日。中身は未使用ですが、もう接種はできません。
都内自治体のワクチン担当者「当初ワクチンが足りなくて接種できない状態がありましたので、できる限り接種していただきたいなと思って進めてきましたが、もったいないです」
取材した日に処分されたのは約1万回分。「感染性廃棄物」として専用の箱に入れられます。この自治体では、これまでに期限切れで約5万回分の未使用ワクチンを廃棄しました。
未使用ワクチンの廃棄は他の自治体でも起きているのでしょうか。都内の自治体に取材をすると、東京23区全ての自治体で廃棄されていたことがわかりました。その数は合計100万回分。全国でも、かなりの規模の廃棄が行われているとみられます。
こうした大量の「感染性廃棄物」はどのように処分されているのでしょうか?
静岡県・富士宮市にあるミダック富士宮事業所では静岡県内の医療機関から出た「感染性廃棄物」を処分しています。
ミダック富士宮事業所 井出博昭所長「黒い容器の中には血液・ガーゼ・注射器等の医療器具が入っています。容器から飛び出さないよう頑丈なプラスチック容器に入っています」
中には新型コロナのワクチン接種で使われたものも入っているといいますが、感染を防ぐため密閉されていて、中身を見ることはできません。これらの容器はベルトコンベアで運ばれて、そのまま焼却炉に投入されます。
記者「運ばれた感染性廃棄物は温度850度の焼却炉で1時間かけて燃やされています」
高温で焼却されることで無害化され、残った灰は埋め立て処分。未使用のワクチンも同じように焼却処分されています。
なぜ大量のワクチンが期限切れで、廃棄されているのか?理由は2つあります。
▼1つ目の理由は、3回目以降のワクチン接種率が低いこと。1回目は81.4%、2回目は80.4%でしたが、3回目は66.4%にとどまっています。(首相官邸HPより)
▼2つ目の理由は、自治体に届いたワクチンの有効期限が短かったことです。
品川区 新型コロナ予防接種担当 豊嶋俊介課長「期限が7月くらいまでのワクチンが5万人分あれば、使い切れるんじゃないかと思って要求したところ、期限が5月末までもないワクチンが来てしまった。ちょっとこれは困ったなと」
モデルナのワクチンは有効期限が9か月です。しかし、品川区に2月下旬に届いたワクチンの期限は残り3か月ほどでした。
品川区 新型コロナ予防接種担当 豊嶋俊介課長「無駄にしたくないっていう気持ちは当然持っています。ただ、あまりにも時間がなさ過ぎて、使い切るまでには至らなかった」
その結果、品川区では5月に6万5000回分を廃棄しました。厚労省は取材に対し「1回目・2回目の接種時でワクチンが余ったため、残っていた期限が短いものを自治体に供給した」と答えました。
廃棄されたワクチンは、金額にすると一体いくら分になるのでしょうか?
国の予算を議論する審議会の資料を見ると、2022年9月までにファイザーやモデルナなど8億8200万回分のワクチンが約2兆4000億円で調達される予算になっています。これは流通費も含む金額ですが、単純計算するとワクチン1回分は2725円。東京23区で廃棄されたワクチン100万回分に当てはめると、総額は27億2500万円にのぼります。
全国では、どれほどのワクチンが廃棄されているのでしょうか?
後藤茂之厚労大臣(当時)「ワクチンの廃棄数の調査は、現時点で行うことは考えていない」(ことし5月)
政府は、新型コロナワクチンの廃棄数について調査を行っていません。ただ、ワクチンにかかる費用は全て国費、つまり私たちの税金です。
専門家は「検証が必要」だと指摘します。
国の予算に詳しい 慶応大学 土居丈朗教授「廃棄したものは全部無駄だったとまでは言えないが、本来廃棄しなくて済んだかもしれない。もっと工夫をすれば予算を節約できたかもしれないという余地があるのかないのかということも、検証可能な形で金額を出すなり、きちんと説明責任を果たして頂くことが必要だと思う」
TBS社会部都庁キャップ 寺川祐介記者:新型コロナのワクチン調達にかかった予算は2022年9月までで2兆4000億円(8億8200万回分・流通費含む)です。私たちの取材では、東京23区だけでも100万回分のワクチンが未使用のまま廃棄されたことがわかっています。これは単純計算で約27億円分です。廃棄の費用もまた税金です。全国で見ればかなりの数が廃棄されているのは確実です。
小川彩佳キャスター:2021年の1回目・2回目の接種時にはワクチンが足りないという事態になった。こうしたことがないように、という意識が影響したのかとも想像しますが?

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