狙われる女湯 銭湯脱衣所で相次ぐクレカ窃盗 意外な「盲点」

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女湯ばかりを狙った窃盗グループが摘発された。脱衣所からクレジットカードを盗む手口で、首都圏を中心に少なくとも1億円超の被害が確認されている。なぜ、女湯がターゲットにされたのか。取材を続けると、意外な「盲点」が見えてきた。
父に年400万円の仕送り 猫の多頭飼育崩壊に苦心 警視庁に窃盗容疑などで逮捕されたのは埼玉県和光市の職業不詳、周瑜容疑者(47)=中国籍=ら男女5人。この窃盗グループは8月、東京都内の温浴施設で女湯の脱衣所ロッカーから他人のクレジットカード5枚を盗むなどした疑いがある。5人のうち周容疑者ともう1人はおおむね容疑を認めているが、他の3人は否認または黙秘しているという。

捜査関係者によると、女性の周容疑者が女湯の脱衣所に入り込み、客の入浴中を狙って、事前に用意していた合鍵でロッカーを開け、客の荷物からカードを盗み取っていたとされる。 合鍵の入手経路ははっきり分かっていないが、容疑者の関係先からは500本以上の鍵が見つかり、複数のロッカーを解錠できるマスターキーもあった。鍵を作るための専門機器も発見されたという。 捜査関係者は「施設内から盗むなどして鍵を入手し、複製を繰り返していた可能性がある」と話す。 警視庁によると、周容疑者らが盗んだクレジットカードは少なくとも約190人分に上る。盗んだカードで食料品やゲーム機、電子機器などの不正購入を繰り返し、一部を転売していたとみられる。 信販会社1社では2020年12月~今年9月に約1340件、計1億円を超える被害が確認されており、他の信販会社での被害などを含めると、被害総額はさらに膨らむ可能性がある。 被害にあったのは首都圏のスーパー銭湯が中心だったが、警視庁の捜査で狙われたのは女湯ばかりだったことが分かっている。5人の容疑者のなかには男性もいたが、なぜ女湯なのか。 「ポイントは防犯カメラの有無だ」。捜査関係者はそうした見方を示す。 全国のスーパー銭湯などでつくる一般社団法人「温浴振興協会」(横浜市)が今年7月に約150施設を対象にした調査で「脱衣所の防犯カメラの設置の有無」について尋ねたところ、回答があった134施設のうち、男湯の脱衣所にカメラを設置している施設は72%に上った一方、女湯はゼロだった。 防犯カメラの映像は、必要に応じて店主や警察など不特定多数が確認する場合があり、女性から理解を得られにくいという背景がある。 男湯の脱衣所での犯行も可能だったが、窃盗グループはこうした温浴施設の特徴を知った上で、女湯の脱衣所を狙った可能性が高い。 捜査関係者は「スーパー銭湯では入浴以外にも、食事や休憩などで荷物を長時間ロッカーに入れたままにすることがある。隙(すき)は多く、余計に狙いやすかったのだろう」と話す。 被害を防ぐにはどうすればいいのか。 都内のある銭湯は、盗難対策として数年前に男湯の脱衣所に加え、施設全体の出入り口にも防犯カメラを設置した。ロッカーの合鍵を作られないように、鍵を持ち出すとセンサーが鳴るシステムも導入したという。 ただ、女湯対策には頭を悩ませている。 50代の男性店主は「女湯の脱衣所は女性従業員が随時見回りをしているが、ずっと見張るわけにもいかない。お客さんに貴重品を持って来ないように呼びかける以上の対策はしようがない」と打ち明ける。 温浴振興協会は多額の現金を持ち込まず、財布やスマートフォンなどは受付近くにある貴重品ロッカーに入れるなどの呼びかけに力を入れる。 防犯に詳しい筑波大の雨宮護准教授(社会工学)によれば、被害防止には、防犯カメラの設置や、暗証番号式のロッカーなどの導入が効果的という。ただ、利用者の反発や費用面での課題があるのが実情だ。「抜本的な対策は難しいが、まずは施設側が利用者に注意喚起した上で、ロッカーの見回り態勢を強化するしかない」と話す。【鈴木拓也、木原真希、岩崎歩】
警視庁に窃盗容疑などで逮捕されたのは埼玉県和光市の職業不詳、周瑜容疑者(47)=中国籍=ら男女5人。この窃盗グループは8月、東京都内の温浴施設で女湯の脱衣所ロッカーから他人のクレジットカード5枚を盗むなどした疑いがある。5人のうち周容疑者ともう1人はおおむね容疑を認めているが、他の3人は否認または黙秘しているという。
捜査関係者によると、女性の周容疑者が女湯の脱衣所に入り込み、客の入浴中を狙って、事前に用意していた合鍵でロッカーを開け、客の荷物からカードを盗み取っていたとされる。
合鍵の入手経路ははっきり分かっていないが、容疑者の関係先からは500本以上の鍵が見つかり、複数のロッカーを解錠できるマスターキーもあった。鍵を作るための専門機器も発見されたという。
捜査関係者は「施設内から盗むなどして鍵を入手し、複製を繰り返していた可能性がある」と話す。
警視庁によると、周容疑者らが盗んだクレジットカードは少なくとも約190人分に上る。盗んだカードで食料品やゲーム機、電子機器などの不正購入を繰り返し、一部を転売していたとみられる。
信販会社1社では2020年12月~今年9月に約1340件、計1億円を超える被害が確認されており、他の信販会社での被害などを含めると、被害総額はさらに膨らむ可能性がある。
被害にあったのは首都圏のスーパー銭湯が中心だったが、警視庁の捜査で狙われたのは女湯ばかりだったことが分かっている。5人の容疑者のなかには男性もいたが、なぜ女湯なのか。
「ポイントは防犯カメラの有無だ」。捜査関係者はそうした見方を示す。
全国のスーパー銭湯などでつくる一般社団法人「温浴振興協会」(横浜市)が今年7月に約150施設を対象にした調査で「脱衣所の防犯カメラの設置の有無」について尋ねたところ、回答があった134施設のうち、男湯の脱衣所にカメラを設置している施設は72%に上った一方、女湯はゼロだった。
防犯カメラの映像は、必要に応じて店主や警察など不特定多数が確認する場合があり、女性から理解を得られにくいという背景がある。
男湯の脱衣所での犯行も可能だったが、窃盗グループはこうした温浴施設の特徴を知った上で、女湯の脱衣所を狙った可能性が高い。
捜査関係者は「スーパー銭湯では入浴以外にも、食事や休憩などで荷物を長時間ロッカーに入れたままにすることがある。隙(すき)は多く、余計に狙いやすかったのだろう」と話す。
被害を防ぐにはどうすればいいのか。
都内のある銭湯は、盗難対策として数年前に男湯の脱衣所に加え、施設全体の出入り口にも防犯カメラを設置した。ロッカーの合鍵を作られないように、鍵を持ち出すとセンサーが鳴るシステムも導入したという。
ただ、女湯対策には頭を悩ませている。
50代の男性店主は「女湯の脱衣所は女性従業員が随時見回りをしているが、ずっと見張るわけにもいかない。お客さんに貴重品を持って来ないように呼びかける以上の対策はしようがない」と打ち明ける。
温浴振興協会は多額の現金を持ち込まず、財布やスマートフォンなどは受付近くにある貴重品ロッカーに入れるなどの呼びかけに力を入れる。
防犯に詳しい筑波大の雨宮護准教授(社会工学)によれば、被害防止には、防犯カメラの設置や、暗証番号式のロッカーなどの導入が効果的という。ただ、利用者の反発や費用面での課題があるのが実情だ。「抜本的な対策は難しいが、まずは施設側が利用者に注意喚起した上で、ロッカーの見回り態勢を強化するしかない」と話す。【鈴木拓也、木原真希、岩崎歩】

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