ホテルで20代女性をめった刺しにし写真撮影 今後も殺してしまう可能性「高い」 55歳男が30年前から抱える“殺人願望”「後悔というのは無い」

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「人を刺したら面白いんじゃないかという妄想があった」
2023年9月、石川県白山市のホテルで呼び出した20代女性の首や胸などを自作の刃物で複数回刺して殺害したうえ、女性が持っていた現金約1万9000円を盗んだとして殺人や窃盗などの罪に問われている男(55)の裁判員裁判。
「殺したことにすっきりさっぱりとした」「罪悪感とはかりに乗せたらすっきりの方が大きいから後悔というのは無い」と話す被告の男に対し、司法はどのような判断を下すのでしょうか。
この裁判は2023年9月、白山市内のホテルの一室で20代女性の首や胸などを自作の刃渡り約18.8センチの刃物で複数回刺して殺害し、女性が持っていた現金約1万9000円を盗み、その後、金沢市片町で凶器の刃物をズボンの右腰に挟んで携帯したとして、白山市の無職・中村信之被告(55)が殺人や窃盗、銃刀法違反の罪に問われているものです。
11月7日、金沢地裁で開かれた初公判で、被告は上下黒いスーツに青いネクタイ、マスクと黒縁の眼鏡を着用して現れました。
被告は起訴された内容について裁判長に「いずれも間違いありませんか」と問われると「全て間違いありません」と答えました。弁護側も、起訴内容については争わない方針を示しました。
被告本人により明かされた犯行の状況です。
―午後11時35分ごろ、先に1人でホテルに入室し、自作の刃物(刃渡り約18.8センチ)をリュックから取り出しソファのひじ掛けの根本あたりに隠しました。被害者の20代女性(以下Aさん)をソファに座らせてから立ち上がって刃物でいきなりAさんの下腹部を2~3回刺しました。Aさんはびっくりした様子で立ち上がって悲鳴を上げながら出入口に逃げようとしました。追いかけて刺しました。背中から右脇腹もしくは背中を刺しました。Aさんは倒れました、仰向けですね。何度も刺しました、下腹部かな。馬乗りに近い状態だったと思います。その後、みぞおちから心臓のあるあたりまで、深く、2~3回刺しました。その間、口元がけいれんしていたので、まだ生きていると思いました。さらに深く刺したときに動きが無くなって死んだことを確信しました。
その後、被告は風呂場で自らの返り血を流し、凶器の刃物を洗いました。この刃物は刑務所を出所後に就職した職場で作ったものでした。被告は刃物作りが趣味でこれまでに100本以上製作していたといいます。
客室を後にする前に、被告は殺害したAさんの写真を撮影しました。その理由については「はっきりわからないし不謹慎だが異常な殺人者は記念に撮っておきたいと思う。そういう気持ちがあった」と話しました。
翌日午前0時45分ごろ、被告はAさんが持っていた現金1万9000円を盗みホテルの利用料金を精算。その後インターネットカフェで未払いとなっていた利用料金もその金を使って支払いました。
強い高揚感に包まれ、さらに2~3人殺したいと考えた被告は、凶器の刃物を右腰に携帯したまま、直線でおよそ10キロ離れた金沢市片町へ。繁華街に向かった理由について、被告は裁判で「人が集まる所に行けば、殺せるシチュエーションに会うかもと思った」と説明しました。
そして午前7時45分ごろ、繁華街の一角にあるベンチで寝ていたところを、捜査中の警察官に発見され、刃物を所持していた銃刀法違反の疑いでその場で逮捕されました。
「殺人願望」について、弁護側からの被告人質問です。
弁護人「なぜ殺害に至ったと思いますか」被告「若い時から妄想とか幻想を現実化したいという欲望がありました」弁護人「どんな妄想ですか」被告「人を刺したら面白いんじゃないかという妄想です」弁護人「そういう妄想を初めて思ったのはいつですか」被告「二十歳前後だと思います」

さらに検察側からの質問に対し…検察官「今も人を殺したいという気持ちはありますか」被告「その可能性は高いです」検察官「今後も人を殺してしまう可能性は高いですか」被告「それは高いです」検察官「片町でズボンのベルトあたりに凶器を刺していたのはなぜですか」被告「また別の人を殺そうとしていたから、いつでも取り出せるようにしていました」

犯行後は「反省は無い、後悔も無い。被害者に対して、思うところは無い」と話していた被告。裁判では「殺したことによってすっきりさっぱりした。罪悪感とはかりに乗せたらすっきりの方が大きいから、後悔というのは無い」と振り返りました。
また遺族への思いを問われると「遺族の悲しみというのはこれから先も続くわけで、それを考えるとかわいそうだ」と述べました。
被告には、妹の首を絞めて殺人未遂容疑で逮捕された事件や、自作した刃物の所持をしていた銃刀法違反事件など、11件の前科がありました。
47歳だった2016年11月には、パチンコ店のごみ捨て場で店員の19歳女性を出刃包丁で切りつけ大けがをさせたとして、殺人未遂などの罪に問われたものの、金沢地裁は殺意を認定せず、傷害罪を適用。被告は懲役4年6か月の判決を受け、服役しました。
この事件について検察側は「刃物で人を傷つける今回とよく似た事件だが、今回はそれを上回る悪質な事件だ」と指摘。一方、弁護側は「出所後に就職し、弁護士にあいさつに出向くなど、一度は更生を試みた」と主張しました。
11日に開かれた論告求刑公判で、検察側は「殺人への願望」という理不尽な動機から女性を突然殺害したと指摘。殺傷能力の高い刃物で女性に30か所以上の傷が残るほど何度も刺すなど極めて執拗かつ残虐な犯行の上、裁判では「また人を殺してしまう可能性が高い」と話すなど、再犯のおそれがあるとして懲役30年を求刑しました。
これに対し弁護側は、被告は罪を認めていて「死刑になってもいい」と話すなど罪を償う姿勢が見られ、更生の余地があるとして、懲役20年が相当だとしました。
最終陳述で被告が残した言葉は「被害者の遺族がかわいそうだなと思いました」。被告は裁判を通して被害者やその遺族に対して一貫して「かわいそう」と話す一方、謝罪の言葉はありませんでした。
判決は11月20日に言い渡されます。

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