新潟市中央区の買い取り専門店に包丁を持って押し入ったとして強盗未遂などの罪に問われた20歳の男。扮装した姿は黒ずくめの悪役キャラクターだった。名古屋市から新潟市に訪れて犯行に及んだ男。“闇バイト”に手を染めた男に下された判決とは……。
愛知県名古屋市の長友龍斗被告(20)はことし6月、新潟市中央区の買い取り専門店に押し入り、店員に刃物を突き付けて現金を奪おうとしたとして、強盗未遂などの容疑で逮捕された。
名古屋市内の自宅からレンタカーで新潟市へ向かったという長友被告。ドラッグストアで包丁を1本盗んだ後、着替えたのが……。仮面ライダーの敵で、黒ずくめの格好が特徴の“ショッカー”の衣装だった。“ショッカー”に扮装した長友被告は、包丁を手に店の中へ。男性店員に対し「金出せ」などと言って現金を要求したものの、店員は応じなかった。「わかった、帰る」。こう告げた長友被告は“ショッカー”のまま、何もとらずに乗ってきた車で逃走した。数日後、彼は名古屋市内の自宅で身柄を拘束された。
9月4日に開かれた初公判。上下紺色の服を身にまとい、マスクを着けて入廷した長友被告。少しうつむきながら、証言台の前へと進んでいった。検察側が起訴状を読み上げた後、強盗未遂・窃盗の2つの起訴内容について裁判官から「間違いはありませんか?」と問われた長友被告。「間違いありません」。力なく、こう答えた。検察側の冒頭陳述。「被告人は、生活費や借金返済資金の工面に窮したことから、インターネットを利用して、新潟県内での『タタキ』を内容とするいわゆる『闇バイト』に応募し、SNSアプリ『テレグラム』を通じて指示役と連絡を取るようになった。被告人は、指示役からの指示を受け“ショッカー”というキャラクター様の衣装を用意した上、名古屋市内でレンタカーを借り、運転して新潟市内に向かった」
10月11日に開かれた第2回公判。この日は被告人質問が行われた。弁護人「この事件の動機はお金に困っていたから?」長友被告「1番はそう」弁護人「闇バイトはどこで知った?」長友被告「X(エックス)」弁護人「強盗することはいつ認識した?」長友被告「買い取り店に到着する数十分前」弁護人「いくらもらえると聞いていた?」長友被告「5万円。いま考えると割に合わない」弁護人「指示役からどう言われた?」長友被告「殺すぞと。死ぬか、やるか、という脅し」新潟市に到着した後に強盗をすることを知ったという長友被告。検察側は懲役5年を求刑。一方、弁護側は、被告が指示役に脅されて犯行に及んだという経緯があることや、広汎性発達障害であると診断されていること、深く反省しているなどから、寛大な判決を求めた。
10月28日。判決公判を迎えた。上下灰色の作業服に、マスクを着けて入廷した被告。周りに目を配りながら、ゆっくりとした足取りだった。証言台に立った長友被告。裁判官をしっかりと見つめていた。裁判官「主文、被告人を懲役3年に処する。5年間執行を猶予し、保護観察に付する」長友被告に、執行猶予・保護観察付きの判決が下された。保護観察とは、社会の中で生活させながら、保護観察所の指導。監督のもと、更生を図る処分だ。裁判官は判決理由を告げた。裁判官「本件強盗の態様は、相当悪質な部類に属する。被害店舗の店長は、黒色のキャラクターコスチュームを頭部までまとった被告人から包丁を突き付けられたことにより、多大な恐怖を覚えたものと言える」そのうえで、裁判官はこう続けた。裁判官「被告人は、いわば『使い捨ての駒』として、犯行計画の全貌を知らされることのないまま、氏名不詳者ら(指示役)が行う指示に従ったものと言える。被告人が反省の立場を示し、二度と罪を犯さないと誓約していることも考えれば、今回に限り刑の執行を猶予し、社会内で更生する機会を与えるのが相当である」裁判官が話している最中、被告の上半身は少し震えているように見えた。何度も何度も、深呼吸をしていたことが印象的だった。裁判官「月に1度の保護司との面談など、保護観察所の指示に従って生活してください。二度と、罪を犯さないようにしてください」長友被告はじっと前を見つめ、深くうなずいた。誰もが当たり前に使うSNSから「闇バイト」に手を染め、“ショッカー”に扮し、罪を犯してしまった長友被告。二度と“悪役”になることがないよう、しっかりと更生していくことを願う。(取材:TeNYテレビ新潟 長谷川サラ)