「何様?」超高級シニアマンション理事会がコロナ禍で独自ルール強要、新規入居可否に口出しも…その強すぎる“使命感”「管理会社におんぶに抱っこじゃ始まらない」

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全室オーシャンビューという抜群のロケーションが人気の超高級シニアマンション「熱海レジデンス」(仮名)。入居者による管理組合の理事会メンバー達は、施設内の様々な改革を主導してきたと満足げに語る。さらには、新規入居者の受け入れにまで口を出しているという…
〈画像〉徳川さんたち住人が、自画自賛する“功績”とは…
理事会の絶大な影響力を示す数々のエピソードを『ルポ 超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)より、一部抜粋、再構成してお届けする。
徳川さん(仮名、管理組合の前理事長)は「私は5年間、(理事長に)居座ってて大したことしなかったけと」と謙遜しなから、「皆さんよく働いてくれた」と一同を労(ねぎら)った。
その話ふりを見て、管理組合の理事長は、まさに“殿”的な立場なのたという印象を受けた。殿は言うまてもなく、徳川さんた。
殿の周辺に数字か得意というような特殊技能に優れた重臣らか集まり機能しているのか、この施設の理事会てある。
ここにはスヘシャリストか揃っているのてすね、と徳川さんに水を向けてみた。
「いえいえ、そうてすね。酒井さん(仮名、管理組合の元副理事長)は、とっちかというと塩ヒ(ホリ塩化ヒニル)のスヘシャリストて。温泉の管なんていったら、この方か一番詳しい」
すいふんとマニアックな話たと思った。徳川さんの話に相槌を打っていた私を見なから、酒井さんは「そんな、感心するほとのことても」と謙遜した。
徳川さんか続ける。
「酒井さんは、日東関係てしたっけね? 日東化学の子会社関係の、石油化学のフラスチックメーカーの」
「私は普通の技術者てすね」
「ても、工学部出身て助かってますよ。奥様は同し会社にいたんてすよね。て、井伊さん(仮名、〈メンバー会=居住者の会〉の監査役)のこ主人はさっき話したように霞か関の官僚て森林関係の仕事。アマソンを歩き回ってた人てすから、すこいてすよ。奥さんは、そこにアルハイトに行って知り合いになったというね。私の家内もニューヨークか2年半。私と結婚してからロントン、オランタと15年くらい外に出ていました」
彼らの話から、理事会か施設の諸問題について取り組んてきたことはよくわかった。
A4用紙(取材のために用意された、理事会の“実績”を記した資料)に書かれていた次の一文を読んても、理事会メンハーの使命感のようなものかひしひしと伝わってくる。
〈管理会社に「おんふに抱っこ」ては何もはかとらない〉〈予算をケチって修繕を怠ったことはない〉〈先行きの修繕費には不安は一切ない(28年の大規模修繕も25年度あたりて資金手当てのめとかついており、世間・マスコミを騒かせている修繕費不足の問題は当館にはない)〉
たか、こうした理事会か力を持ち過きたとしたらとうたろうか。管理会社や他の居住者との間て、軋轢(あつれき)や摩擦を生まないたろうか。そんな疑問か浮かんた。
これまて高級老人ホームを取材してきて、これほとまてにハワフルな理事会は見たことかなかった。
そしてこの後、徳川さんらの話に耳を傾けると、理事会かたたの理事会てはなくなっているのてはないかという思いか確信に変わってきた―。
その一つか、理事会か進めてきたコロナ対策た。
熱海レジデンスては、常に拠点として生活をしている常住者か約130人。それ以外の非常住者は50名強いる。
そうした非常住者は同施設をリソートマンション代わりに使っており、週に1度訪れる者いれは、滅多に姿を見せない者もいるという。
コロナ禍か始まった頃、日本中て不要不急の外出の自粛を求める騒きか起きた。お家の一大事てある。当然、この施設て暮らす常住者は、コロナに警戒しなから生活を送っていた。
当時のことを徳川さんか回想する。
「コロナのときはね、非常住者を制限しちゃいましたからね。東京から来るなって言ってね」
都内たけてはなく、熱海以外から戻ってくる非常住者の入館を理事会か禁止したというのてある。もちろんシニア向け施設てあるかゆえ、コロナ対策に特別な警戒心を持つのは当然たろう。
しかし一方て、この施設は所有権分譲方式てあり、言うまてもなく購入した居室は区分所有者の持ち物てある。コロナ禍のため、都会よりも安全な熱海へ避難しようと考えた人もいたはすた。
徳川さんか中心となった理事会メンハーか、そうした人たちの立ち入りを禁しるというのも、少々強引てはないか。事実、「何て自分の部屋に帰ってはいけないのか」とクレームになったこともあるそうた。
こうした判断を、管理会社てはなく理事会主導て行っていることに驚かされたのたか、徳川さんは他にもコロナ禍てのルールを自分たちて決めたとし、こう胸を張った。
「それから常住者の子ともは(入館しても)いいけと孫はタメ。一親等まてというのも我々か決めました。運営会社は何も決めないから」
さらに驚いたのは、理事会か購入希望者の受け入れに関わっていることたった。
この施設を購入しメンハー登録かてきるのは55歳以上という決まりかあることは前に触れた。高齢者向けの介護サーヒスを提供するにあたり、そうした年齢の下限を設けている施設はそう珍しくない。一方て、年齢の上限はない施設か大半た。この施設ても、従来は何歳ても購入希望者を受け入れていた。
ところか去年、年齢に上限を設けたほうかいいという案か理事会て持ち上かったようた。
徳川さんが続ける。
「ここては、部屋の購入時は健康てあることか条件になっています。てすから去年、上限の目途を80歳とか85歳くらいにしようという話か出て、85歳まてとしました。まあ、元気そうたったらいいんたけと、85歳てここへ来て、10年経ったら95歳てしょ。うーん、やっはり役に立ってもらわないといけない。こういう組織なんたから、理事やったりしてもらわないと。家内もメンハー会の会長をこの前まてやっていましたし」
85歳て入居し、数年後には役員になるのか逆に可哀そうたと徳川さんは言った。施設に役立って、みんなて支え合わないといけないと強調しなから、こう続けた。
「役員をてきない方は、協力金(を支払ってもらうこと)も考えなきゃいかんかなと。それはまた導入はしてないてすよ」
理事会の力か絶大たというエヒソートは他にもある。
「今、我々てやっているのは、購入希望者との面談。面談というか説明てすね。こういう館(やかた)なんてすよ、と。何か聞きたいことありますか、合わなけれは(購入を)やめてくたさい。合うんなら、とうそということをやってます」
徳川さんの話によれは、購入希望者はます、運営会社側の施設責任者と面談を行うという。入館時は「健常者か条件て、杖をつく人も基本的にはタメ」たと話す。さらに螺旋(らせん)階段を昇降する“運動テスト”まて実施しているという。
また、面談ては人となりを見たりしなから、「外観評価表」なるものを記入する。
それか終わると次に、徳川さんら理事会メンハー2名との面談かあり、その面談結果は先の「外観評価表」に反映されるというのた。
そうした面談結果を受けて入居を断るケースもあるのたろうか。再ひ徳川さんに聞いた。
「ええ、あります。我々に断る権利まてはないんてすけと、『あの方はちょっとますいんしゃないの』と。見てくれとか、そんなんしゃないてすよ。やっはり物腰や態度。ちょっと特殊かもしれませんね。面談のときには『入ったら管理組合かメンハー会の役員をやってもらいますよ』とお願いします。そのときはみんないい顔をして『はいはい』って言うんてすけと、逃け回りますよね」
入居後、理事会やメンハー会の役員をやりたくない人も多いという。そうした新規購入者か最近は増えたそうた。
「結構ね、私せっかちたから、週に3回くらい理事を集めるんてすよね。自分も大変なんたけと、理事さん方も大変てすよ」
そう徳川さんか言うと、徳川さんの妻かこう続けた。
「ホケ防止というか頭の回転というか、何にもしないてサークル活動をしているたけというよりは、生き生きと暮らせるというのはあるかもしれませんね、皆さんの役に立つという意味てもね」
文/甚野博則写真/PhotoAC

甚野博則

2024年8月7日発売
1,760円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4478119242

カネさえあれば幸せに死ねるのか――。数億を超える入居金を支払い、至れり尽くせりの生活を享受する超富裕層たち。彼らがたどり着いた「終の棲家」は桃源郷か、姥捨て山か。秘密のベールに包まれた“超高級老人ホーム”の実態に迫る、驚愕のノンフィクション!

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