【山村 佳子】週1の給料で毎日出勤の理由は…49歳でフリーランスになった美大卒の妻の「謎行動」

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2024年11月1日に「フリーランス保護新法(『特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律』)」が施行される予定だ。これは組織に所属せず個人で働くフリーランスの労働環境を保護する目的がある。
2023年に厚生労働省が発表した「フリーランスの業務及び就業環境に関する実態調査」によると、業務委託を受けたフリーランスの20.5%が取引先から納得できない行為を受けた経験があると回答している。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「フリーランスとして働く人が、発注者と親密な関係になることで、浮気になることは多々あります」と言う。
山村さんに依頼がくる相談の多くは「時代」を反映している。同じような悩みを抱える方々への問題解決のヒントも多くあるはずだ。個人が特定されないように配慮をしながら、家族の問題を浮き上がらせる連載が「探偵が見た家族の連載」だ。
今回山村さんのところに相談に来たのは、49歳の智司さん(仮名)だ。「妻がまさか、この歳で浮気をするとは思いませんでした。フリーランスになって変わってしまったんです」と山村さんに連絡をしてきた。一体何があっただろうか……。
山村佳子(やまむら・よしこ)
私立探偵、夫婦カウンセラー。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリング経験を持つ探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。
今回の依頼者・智司さんは不動産開発関連会社に勤務しているビジネスパーソンです。黒のシンプルなTシャツに、チノパンを合わせ、サングラスとヒゲがダンディな印象です。引き締まった体に、美意識の高さを感じました。
「どこから話していいか。なんでしょうね、結婚20年の古女房が浮気するという衝撃は、なんとも受け止められませんでした。お互いに性欲もなくなって、一緒に旅行や散歩して、一緒に年老いていくと思っていたのに、まさかの浮気ですよ」
そう言いながら、アイロンがかかったハンカチで目頭を押さえていました。
「僕の友人にも、奥さんに浮気された人がいたんです。その話を聞いた時、僕は“この歳で浮気なんていいじゃん。モテる奥さんってことじゃん。外で遊んでもらった方がお前も楽だろう”みたいなことを言ったんです。それ以降、その友人とは距離を置かれました。今なら友人の気持ちがよくわかる。当事者になってみないと、この痛みはわからない。浮気をされるって本当に辛いですね」
浮気は夫婦関係の信頼の裏切りでもあり、想像していた以上の衝撃を受ける人も少なくありません。早速、夫婦関係について伺いました。
「妻は、大学附属の中高一貫校の同級生です。1学年200人程度しかおらず、6年間も一緒だからなんとなく同級生の顔は知っているんです。妻とは仲が良かったわけではないのですが、放課後の美術室でデッサンをしている姿は知っていた。卒業後、僕は一浪して国立大学に進み、彼女は美大に進んだ。卒業式の日に“頑張ってね”と言い合ったことは覚えています」
再会は27歳のとき。当時、智司さんは企業のウェブサイトの制作やシステム構築を行うソリューション企業に勤務していました。智司さんの担当は、当時、主流だった携帯電話サービスのサイト作成だったそうです。
「そこで、ある制作会社に発注したところ、金髪のおかっぱで、民族風のファッションの女性がいた。表情が豊かで、歯が白くて笑顔が可愛い。なんとなく好意を持ちつつ、その日の打ち合わせを終えました」
その日、退勤し、駅まで向かう間、智司さんの携帯電話に「さとじい、だろう! すましちゃって、このこの~」と電話がかかってきた。
「“さとじい”とは中高時代のあだ名です。落ち着いていておじさんっぽいということで、そう呼ばれていたんです。でも、さっぱりわからず、“どなたですか?”と言うと、“昼間会った金髪! ミツヤだよ!”と言う」
妻の旧姓を聞き、智司さんは美術室での妻の姿を思い出します。その日のうちに食事に行き、昔話と仕事の話に花を咲かせます。
「終電まで話してしまい、解散に。彼女が地下鉄の階段を降りていくのが名残惜しくて、“帰るの?”と叫んだんです。あんなに大きな声を出したのは、後にも先にもあれっきり。彼女と一緒にいたかったんです」
すると、彼女は「帰らない」と階段を駆け上がってきてくれたそうです。ドラマのようなワンシーンを今でも覚えているとは、相当な愛妻家なのでしょう。
「その夜、男女の関係になり、2年の交際を経て結婚。子供が欲しかったのですが、授からなかったので、“夫婦で生きていこう”と決めたのは、40歳のとき。それから、穏やかで楽しい毎日を過ごしていました」
智司さんの話からは、妻の人間性のようなものがわかりません。どんな人なのか伺うと、まず「働くことが嫌いな人です」と言いました。
「妻は組織に属してその歯車の一つになることができないんです。人の心をすぐ読んで、感情的になることもあれば、沈むこともある。アイディアを否定されると、自分自身も否定されたような気持ちになるところがあり、その度に傷ついたり、パニックになったり」
妻の仕事ぶりを見ていると、デザインはわかりやすくオシャレなのですが、そこに至るまでが大変だったそう。
「彼女は才能があるけれど、感情が邪魔をして、生きづらさを抱えていた。僕は心に動きがないというか平坦なところがあるので、そんな妻と一緒にいることが楽しかったんです。すぐに結婚したかったのですが、2年かかったのは、妻を養える程度の給料がもらえる会社に転職するためでした。妻は交際期間中から“もう働きたくない。専業主婦になりたい”と言っていたので」
結婚後、妻は仕事を辞め、以前の会社から発注される仕事をこなしたり、美大時代の友人の展示などを手伝ったりして、月に数万円程度のお小遣いを稼ぎつつ、楽しく毎日を過ごしていたそうです。
「僕は妻を養うために働かなくてはならない。そうすると張り合いが生まれて、収入がどんどん増えていきました」
当然、忙しくなるので、家にいる時間は少なくなる。30代の後半に短期的な不妊治療をしてからは、夜の営みも自然消滅。それを苦しいと思うこともなく、10年間を過ごしてきたそうです。
「半年前、妻が“子供に関わる仕事をしたいと思う”と言うので、“いいね”と言いました。妻の話では、発達に困難を抱える子のための、アート教育で授業を持つとのこと。妻は気持ちにアップダウンがあるので、フリーランスとして働くことにしたそうです。僕もあるリゾート開発の仕事が忙しいので大賛成したのです」
妻はその仕事にのめり込んだ結果、正社員さながらの仕事を任されるようになってしまったと言います。
「週1程度の出勤の予定が毎日になり、支払われる報酬は授業1コマ分のみ。妻は“やりがいがあるから、いいの”と言っていますが、仕事としておかしいだろうと。それを指摘すると“あなたは私の邪魔をするの?”と怒ってくる。先日、書斎にこもっているのでなんだと思ったら、その教室のパンフレットを作っているんです。もちろん無償です。“私がやりたいから、作っているの”と言っていましたが、それは違うだろうと」
ある日、夫婦の共用のiPadで動画を見ようとしたら、占いの画面が立ち上がっていたそうです。
「そこには、妻の生年月日と、僕のものではない生年月日による相性占いの結果がありました。妻は占いが好きで、僕と交際する時も、四柱推命やら西洋占星術やらよくわからない占いで調べまくっていました。もしかして、浮気相手かと思って“この人は誰?”と妻に聞くと、“同僚なの! あなたは私のことを信じていない!”と泣かれてしまったのです」
その生年月日は、智司さんよりかなり年下でした。
「妻がフリーランスで働いているアート教室の代表の名前を検索したら、その生年月日と一致しました。多分、この人となんらかの関係があるのではないかと思います。最近は帰宅も遅く、ろくに口も聞いてくれません。男の方からきちんと別れてもらって、元通りの生活をしてほしいのです」
これまで私たちは、フリーランスと発注主の浮気調査は何度も経験しています。私の直感で、妻は浮気をしている。調査をすることにしました。
◇1回分のギャランティで週5日出勤、しかも無償の仕事を追加でさせている……これは11月の新法施行を前にしても、明らかに下請法違反だ。もし恋心と立場を利用して搾取しているのなら、ハラスメントだし、由々しき事ではないだろうか。
では調査の結果は、詳しくは後編「週1日分の給料で5日働かせる…49歳フリーランスの妻が落ちた闇のカラクリ」にてお伝えする。
週1日分の給料で毎日働かせる…49歳フリーランスの妻が落ちた闇のカラクリ

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