2週間後に逮捕…神奈川県警「指名手配犯を取り逃がし」失態のワケ

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「逃げるのに疲れました」
11月2日午前、逃走していた容疑者はみずから神奈川県警本部に出頭した。県警の関係者は、さぞホッとしたことだろう。容疑者を取り逃がしてから約2週間。ようやく男の身柄を確保し、逮捕にこぎつけたのだ。捕まったのは、内野大輔容疑者(44)。暴力団関係者で、50代の男性2人を横浜市内で車のトランク内に監禁。暴行事件に関与した疑いが持たれ、今年8月に指名手配されていた。
前代未聞の事態が起きたのは10月20日だ。『FRIDAYデジタル』の記事(10月24日配信。一部修正しています)をもとに、事件の詳細を振り返りたい――。
午後3時過ぎ、神奈川県警は指名手配中の内野容疑者が逃げ込んだと思われる相模原市南区の廃業したホテルを包囲した。周囲の道路を通行止めにするなど、スグに厳戒態勢がしかれる。だが内野容疑者はすでに逃走し、ホテルはもぬけの殻だった。
「内野容疑者の行方を追っていた捜査員が、JR町田駅近くのコインパーキングで彼の車を発見したのは同日昼ごろです。60mほど離れた別の駐車場から、数人で見張りを開始。
しばらくすると内野容疑者が戻ってきました。しかし声をかけようと捜査員が車を降りると、気づいた内野容疑者が逃走します。約100m走って逃げ込んだのが、21年8月で閉業し廃墟となっていたホテルの敷地でした」(全国紙社会部記者)
県警は150人規模に増員。警棒やさすまたを持った警察官がホテルを取り囲む。警察犬も投入され、包囲すること約4時間。警察は内野容疑者を確保後スグに逮捕状を緊急執行しようと、現場には緊迫した雰囲気がただよっていた。
だが、午後7時を過ぎると事態が急変する。道路の規制がなくなり、警察官が急に現場から撤収し始めたのだ。
「ホテルの敷地内に、内野容疑者がいないことがわかったんです。建物のすべての部屋や周辺を捜索したが、発見できなかった。警察が包囲する前に、現場から逃亡していたと思われます。敷地は広大で、ボウリング場やチャペルもある。捜査員は内野容疑者が敷地内に入ったことは確認しても、ホテルの建物の中に逃げ込んだかはわかっていなかったようです」(同前)
ホテル近くには学校もあり、子どもたちが集団登校している。警察の失態を知った周辺住民は、不安を募らせていただろう。元神奈川県警の刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が事件の背景を解説する。
「付近では92年7月にも立てこもり事件が起き、警察官1人が殉職しています。警察としては慎重にならざるをえなかったのでしょう。私も現場のホテルを見ましたが出口がいくつもあり、どこからでも逃げられるような構造でした。
だからといって、警察の責任が免除されるわけではありません。最大のミスは、最初に駐車場で声をかけるタイミングを逸したことです。犯人に事前に気づかれないように接近し、素早く逮捕に踏み切るべきでした」
指名手配犯の逃亡から約2週間。周辺住民が、ようやく安心して眠れる日が訪れた。

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