夜道に2人の子ども、胸騒ぎに車で3往復…「やっぱりおかしい」と声かける

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富山県高岡市や千葉県で子どもが行方不明になり遺体で見つかった悲劇が続いた中、富山県内では、とっさの対応で子どもの危機を未然に防ぐ事例が相次いだ。
(吉武幸一郎)
10月6日午後8時頃、富山県黒部市宇奈月町の保育士、松木あすかさん(22)は、買い物帰りに同市荻生の県道を車で走行していた。
その頃、黒部署では約半数の署員が市内に散り、2人の子どもの行方を必死に捜索していた。約1時間前、黒部市内の9歳の男児と8歳の女児が帰宅しないと、それぞれの家族から届け出があったためだ。
松木さんは真っ暗な歩道に小さな人影を見つける。「遅い時間なのに、2人だけなのかな」。一度は通り過ぎたものの、胸騒ぎがして引き返した。「もしかしたら近くの家の子どもかも」「見えなかっただけで近くに親がいるのかな」――。なかなか声をかけられず、気付けば辺りを3往復していた。
「やっぱりおかしい」。松木さんは意を決して車を止め、窓越しに、「どうしたの?」と声をかけた。すると児童は「散歩しとる」とこわばった様子で返事をした。だがその頃の気温は約13度。男児は上着を羽織っているのに、女児は半袖姿。異変を感じてすぐに車を降り、詳しく話を聞いた。職業柄、子どもたちとの会話はお手の物だ。
すると、児童たちの自宅は数キロ以上先だと判明。ひとまず暖房の利いた車に乗せ、近くのコンビニ店駐車場に向かった。温かいお茶を買い、車にたまたま積んでいた2枚の毛布を2人にかけて安心させた。女児が半袖だった理由は、寒さをしのぐため1枚しかない上着を交互に着ていたかららしい。「やっぱり心配だから」と110番し、到着した警察官に引き継いだ。
黒部署は、プライバシーに関わるとして、2人が夜間に歩いていた理由を明らかにしていない。ただ、家出ではなかったといい、同署の浅野健一署長は「松木さんが見つけてくれなければ大変なことになっていた」と説明。同署から10月14日に感謝状を贈られた松木さんは、「初めての経験でドキドキしたが、子どもを守ることができて、本当によかった。保育士として子どもの命を守れるようにこれからも頑張りたい」と話していた。
■上市の柿森さん 道路で3歳児発見
10月11日午後3時半頃、富山市婦中町地区の勤務先駐車場で、駐車場の清掃をしていた会社員、柿森恒彦さん(43)は肝を冷やした。目と鼻の先で、小さな男の子が通行量の多い、横断歩道もない道路を渡ろうとしていたからだ。とっさに「危ないよ」と声をかけ、「こっちにおいで」と手招きし、保護することができた。
男児はその直前、すぐ近くの自宅から、家族が目を離した隙に1人で出てきた3歳児だった。玄関ドアは施錠されており、鍵は男児の手の届かない高さにあったものの、台を使って1人で開けてしまったのだという。
柿森さんの勤務先の近くには、児童福祉施設がある。そのため柿森さんは男児が施設の子どもではないかと思い、送り届けた。その後、周辺を捜していた家族が、施設にいる男児を見つけた。
10月28日、富山西署で感謝状を贈られた柿森さんは、「特別なことをしたわけではないので恐縮。男児に何もなくて本当によかった」と謙遜していた。同署の谷川朋宏・生活安全課長は「見て見ぬふりをせずに声をかけてくれ、本当にありがたい」とねぎらっていた。

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