ついに「日本の失われた30年」が終わりそうだ

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評価がさほど高くない総合経済対策。だが筆者は日本経済の好循環がようやく始まったと期待する(写真:ブルームバーグ)
先週末10月28日のアメリカ株式市場では、NY(ニューヨーク)ダウ工業株30種平均が前日比828.52ドル(2.6%)と急伸。結局6連騰となり、終値も3万2861.80ドルと2カ月ぶりの高値となった。
一方、ナスダック総合指数も同309.77ポイント(2.9%)高の1万1102.45ポイント、S&P500種指数も93.76ポイント(2.5%)高の3901.06ポイントと上昇して取引を終えた。
NYダウを押し上げたのはアップルだ。同社の2022年7~9月決算で売上高と1株当たり純利益が市場予想を上回ったことで、株価は前日比8%高となった。また、ほかのハイテク株にも買いが波及し、マイクロソフト(同4%高)、インテル(同11%高)、さらにはキャタピラーやマクドナルドもあらためて買われた。
NYダウは9月末の引け値ベースの安値2万8725.51ドルから14.4%の上昇となった。これでターニングポイントである「12%上昇水準」を一気に突破。11月1~2日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)や同月8日の中間選挙を前に、「奇跡の反転」を見せた。
筆者もこの連載でときどき述べているように、12%は「NYダウの法則」の、上昇の入り口として極めて重要な水準である(12%上がると20%上がる可能性が高く、20%上がると強気相場入りとなる)。
ちなみに、ほかの指数は安値からどの程度戻ったかといえば、ナスダック総合指数が7.57%高、S&P500種指数が9.06%高、独DAX指数が10.59%高と、12%には未達である。こうしてみると、世界のトップ指数であるNYダウ平均がその先導役になるのではないかと感じる。
その理由は、市場コンセンサスの変化だ。FRB(連邦準備制度理事会)が金融引き締めを開始して以降の市場は、そのペースが最大の変動要因となった。
したがって、よい景気指標が出れば「利上げ加速観測」で売られ、悪ければ「利上げ緩和観測」で買われる、というように、景気指標は完全な逆指数となっていた。
10月に入ると、それはさらに顕著になった。例えば7日のNYダウの前日比630ドル(2.11%)安は、9月の雇用統計で失業率が3.5%と、予想外に8月の3.7%から低下したためだ。また、14日の同403ドル安は、10月ミシガン大学消費者態度指数速報値が59.8と、9月の58.6を上回ったためだった。
逆に、4日の同825ドル(2.80%)高は、8月雇用動態調査(JOLTS)で非農業部門の求人件数の前月比「減少幅」が2020年4月以来の大きさとなったのが理由だ。さらに24日の同417ドル高は、低調な10月のPMI(購買担当者景気指数)速報値が出たためだった。
このように、株価上昇を願う買い方にとっては、確実に例外なく低下する住宅関係の指標が最も頼りになるという、笑えない現実があった。
しかし、今回(10月28日)の同828ドル高の局面では、9月の個人消費支出(PCE)が前月比0.6%増と市場予想の同0.4%増を上回り、10月ミシガン大学消費者態度指数確報値も59.9と速報値の59.8をさらに上回った。にもかかわらず、市場は好調な企業業績を優先した。景気指数がよければ「利上げ加速」で売られ、悪ければ「利上げ緩和」で買われるという、市場のコンセンサスが変化した証拠だ。
NYダウが上がりたがっていた兆候は、実は13日の動きに現れていたといえる。
同日のNYダウは前日比827.87ドル(2.83%)高の3万0038.72ドルと、3万ドル台を回復した。だが、この日は9月のCPI(消費者物価指数)が前月比+0.4%、前年同月比+8.2%、コア指数が前年同月比+6.6%と8月の同+6.3%上回る強い数字で、当然のようにNYダウは前日比550ドルの下げで始まった。
だが、その後、「最近の買い材料」である悪い景気指標などかけらも出ない中で、信じられないほどの買いが入り、当日の安値からなんと1400ドルもの戻しとなった。
さて、日経平均株価はどうか。政府は10月28日の臨時閣議で、事業規模71兆6000億円の総合経済対策を決めた。
早々に裏付けとなる29兆1000億円の補正予算案を国会へ提出する。その中身は報道されているとおりだが、(1)物価高騰・賃上げに12.2兆円、(2)円安を生かした「稼ぐ力」の4.8兆円が目につく。
岸田文雄首相は記者会見で、「日米による次世代半導体の共同開発に1.3兆円をつぎ込む」と表明した。まさに稼ぐ力を高めることが日本再生の中心命題であり、それには円安がチャンスであると表明し、円安を政権が初めて明確に認めた。
円安はインフレを呼び、インフレは株高を呼ぶことは、歴史が証明している。ついに「日本の失われた30年」が終わり、好循環が始まったと筆者は確信する。
日経平均先物の前週末時点での引け値は、大証で2万7530円、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で2万7535円となっている。10月31日の日経平均現物市場が同程度だとすると、「総合乖離」(25日・75日・200日移動平均の乖離率を合計して算出)の陰転は、前営業日の28日だけだ。まさに、本日31日から「総合乖離プラス圏の買い方有利」の展開が再び始まりそうだ。
今週(10月31日~11月4日)は、10月末と11月初めの材料が混在する重要な週だ。10月31日は日本においては中間決算を締める企業も多い重要日であり、ファンドや企業の事情なども複雑に絡み合う。
また11月の月初でもあり、多くの経済スケジュールが出る。中でも2日のFOMCの結果発表、FRBのジェローム・パウエル議長会見と、4日の同国10月雇用統計という2つのイベントは要注目だ。
一方、日本企業の決算も挙げればキリがないが、11月1日のトヨタ自動車を筆頭に、主要企業の決算ラッシュを迎える。決算内容は、円安効果もあって、下馬評ほど悪くないことが確定的だ。年末年始相場の入り口ともいうべき、今週の相場。日米ともに極めて面白くなってきたと感じる。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
(平野 憲一 : ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト)

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